あなたが大手調剤チェーン薬局の薬局長だとします。
日々、目の前の患者さんに真摯に向き合い、スタッフともいい雰囲気を出すことを常に意識して業務に励んでいます。
薬局は広域病院の門前に位置し、近隣には競合の薬局が3店舗肩を並べ、病院の出口からは2番目に近い薬局になります。
処方箋枚数は月間2500枚。売上は月間2千万円。(前年は処方箋枚数3000/月 売上2400万/月)
ある日、売上が前年比を下回ってきていることから、エリアマネージャーに呼び出され、
「売上前年比割れの対策を考えるように」
と指示がありました。
さて薬局長であるあなたは、どのような切り口で売上を上げるための対策を上司に提案しますか?
教科書通りにいえば、
売上=客数×客単価
に分解できるため、売上をあげるためには
①「客数」をUPさせる
②「客単価」をUPさせる
この2つの切り口で対策を立てることになります。
このように、各要素に分けて段階的に考えていく思考方法はロジックツリーといわれています。全体的にモレなくダブりがないように、コンサル用語でいえばMECE(ミッシー Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略)を意識しなければいけません。
売り上げを上げる施策は?と聞かれた時に、多くの経営コンサルタントは上記のようなロジックツリーを使用する傾向にあります。
しかし、短絡的に「売上=客数×客単価」と考えることで本質を見落とす可能性があります。
もう少し視点を変えて考えてみましょう。
売上=マーケットサイズ×マーケットシェア
視点を変えればこのように考えることもできます。こちらの特徴としては、マーケットサイズ=「市場・顧客」、マーケットシェア=「競合と自社の関係」というように、顧客、競合、自社の切り口で考えることができます。
今回のケース、病院が処方の長期化や外来を抑制したことにより、処方箋発行枚数が月間1万枚から月間7千枚に減少していたらどうでしょう?
前年は、マーケットサイズ10000枚/月の内、受付処方箋枚数が3000枚/月なのでマーケットシェアは30%になります。
では今年はどうでしょうか?
マーケットサイズ7000枚/月の内、受付処方箋枚数が2500枚/月なのでマーケットシェアは35.7%と、前年よりシェアを多くとっていることが分かります。
以上から、売上の前年比割れのそもそもの原因は「門前病院の発行枚数の低下=マーケットサイズそのものが減少しているため」ということができます。一方でマーケットシェアはUPしていることから、本来なら現場の頑張りを評価しないといけないですよね。
おそらく薬局長であるあなたは、「普段の頑張りがまったく評価されていない」と少なからず不満を抱くと思います。
経営学の大学院生のころ、アカウンティングの先生が、
「自身がコントロールできない指標を評価対象にされることが従業員の大きな不満を生み出す」
とおっしゃっていた言葉がとても印象に残っています。
今回のケースでは、前年より門前病院の処方箋枚数(マーケットサイズ)は減少しています。広域病院の場合は特にマーケットサイズをコントロールすることは難しいことからも、マーケットシェア高めていることに対して現場を評価しなければいけません。
もしマーケットシェアが低下していた場合は、近隣の薬局(競合)のサービスなどをしっかり調査した上で自薬局の強みを活かして魅力を高め、シェアを高めていく対策を考える必要があります。
今回のケース、エリアマネージャーには、
「売上=マーケットサイズ×マーケットシェア」の話をし、マーケットシェアはUPしていることをアピールしながらも、まだまだシェアを高める施策を提案してみてはいかがでしょう。
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