少し前の話ですが、患者さんから「抗生物質がインフルエンザに効くってネットに書いてたけど本当?」と質問されたことがありました。
ほとんどの抗生剤の添付文書にある適応菌種をみると「インフルエンザ菌」の記載があります。おそらくインターネットの添付文書を見て「インフルエンザウイルス」に効果があると勘違いをされたのでしょう。
インフルエンザ菌とインフルエンザウイルスは全く異なるものですが、インフルエンザ菌は1800年代にインフルンザウイルスが大流行した時に患者から検出され、当初はインフルエンザの原因菌と誤認されたことから「インフルエンザ菌」と名付けられたそうです。
その後に、インフルエンザを引き起こす原因は「インフルエンザウイルス」ということが判明しましたが、菌の名前として残したそうです。
細菌とウイルスの一番の違いは「自分自身で増殖できるか?」です。
細菌は自分自身で増殖ができるのに対して、ウイルスは生きた細胞の中でしか増殖ができません。
薬剤師なら常識ですが、細菌には抗生物質が、ウイルスには抗ウイルス薬が用いられます。すなわち、インフルエンザウイルスを抗生物質で抑えることはできません。
インフルエンザ菌はグラム陰性桿菌で非莢膜株(ひきょうまくかぶ)と莢膜株(きょうまくかぶ)に分かれます。
非莢膜株は健康な人の咽頭や鼻腔に常在していますが中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎といった病気の原因となります。実は中耳炎や副鼻腔炎の多くはインフルエンザ菌が原因菌となっています。
莢膜株は血液に入ることで敗血症、髄膜炎、結膜炎、急性喉頭蓋炎、喉頭蓋炎を引き起こし重症化します。
またインフルエンザ菌の莢膜株はa~f型まであり重症化するb型を「Hib(ヒブ)」と呼ばれます。
学名Haemophilus influenzaeの頭文字を略した”Hi”をつけて、b型菌をHibと呼ぶ
引用 ウィキペディア
インフルエンザ菌感染症に対しては、アンピシリン(商品名:ビクリシン)やアモキシシリン(商品名:サワシリン・パセトシン・ワイドシリン)などのペニシリン製剤が高用量で処方されます。成人の場合はキノロン系や第三代セフェムなどが使われます。
特にインフルエンザ菌b型は5歳未満の子供に重症化しやすいため、Hibワクチンの予防接種が2013年より定期接種に導入され、小児の重症患者例は激減しているようです。
定期接種として位置づけられていますが、情報リテラシーが低い地域や家庭ではHibワクチンの接種をさせず、重症化するケースもありますので、予防接種の啓蒙活動も薬局で行っていくことも必要となりそうです。
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