薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」編集長の伊川勇樹です。
電子カルテが普及し便利になった反面、処方箋を発行する際に入力ミスが生じる可能性があることを薬剤師は頭に入れておかなかればいけません。
実際に私が薬局で経験したオーダリングシステムの入力間違いの事例について、ご紹介いたします。
ぜひ現場の薬剤師にも知ってほしい内容なので情報共有できればと思います。
ある平日の午後のこと。
広域病院から処方箋のFAXが届きました。
その患者さんは、40代の女性で、2人の小さなお子さんがいらっしゃいます。
風邪を引いたときなど、ご家族でご利用いただいており、明るく、笑顔の素敵なお母さんです。
処方内容をみて、思わず動揺してしまいました。
外科
Rp1
【般】レトロゾール錠2.5mg 1T
朝食後 30日分
Rp2
【般】ロキソプロフェンナトリウム60mg 3T
【般】レバミピド錠100mg 3T
毎食後 5日分
レトロゾールといえば閉経後乳がんに適応のあるアロマターゼ阻害薬ですね。
「え!!乳がんなんて・・。まだお子さん小さいのにお気の毒に・・・。
なんて声をかけてあげたらいいのだろうか・・。」
と薬を用意して待っていました。
すると、患者さんがいつものように笑顔で薬局に入ってきました。
〇〇さん、FAXが届いていましたので薬の準備はできていますからね。
ちなみに、今日の薬のこと主治医から何か聞かれていますか?
いえ、特に聞いていないです。
これ何の薬ですか?
主治医からは病名など聞かれていないですか?
いえ特に何も聞いてないんですが、
どんな薬がでています?
実は腫瘍を抑える薬なんですが、
あっ、そういや甲状腺に良性だけど腫瘍があるとかなんとか言っていたような。
そうなんですね。
他には何も言われなかったですか?
あっ、そういえば
「貧血の薬を出しましょうか」
とも言っていたと思います。
ここまで聞いてピンときた薬剤師もいらっしゃるのではないでしょうか。
処方医に疑義照会をしたところ、フェロミア錠(一般名:クエン酸第一鉄Na)を処方したかったそうで、レトロゾールからクエン酸第一鉄Naに処方変更となりました。
何より、この患者さんが乳がんでなかったことが嬉しくて思わず電話越しにガッツポーズをしてしまいました(笑)
レトロゾール錠の先発品の商品名はフェマーラ錠ですので、「フェ」で変換し、「フェロミア」と間違えて「フェマーラ」を選択、そして一般名に切り替わることから二重のトラップがかかっていたということです。
今回のケースは、一般名やジェネリックの商品名しか把握していなければ「入力ミス」と気づけなかったことから、
先発医薬品名を知っておくことも大事だなと思いました。
そして何より、聞き辛いことでも患者さんからのヒアリングも大切だと感じました。
私が薬局で患者さんに接するときに、もっとも心がけていることは
「必要以上に患者さんを不安にさせないこと」
です。
また必要以上に安心させることも治療に悪影響を与える可能性がありますので、バランスも意識しなければいけません。(これがなかなか難しい!)
しかし、せっかく薬局に来てくださったのだから、
「少しでも気持ちよく帰ってもらいたい」
という思いも大切にしています。
そのため、発行元の処方ミスがあった場合は、
「間違いがあって」
「ミスがあった」
などの表現はさけて、
「薬が変更になるようなのでしばらくお待ちくださいね。」
と一言おかけし、訂正があったことにフォーカスしすぎないように心がけています。
併用禁忌に気づいた場合、
重複投与に気づいた場合、
処方ミスに気づいた場合、
ついつい薬剤師が自分の手柄だとアピールしたくなる気持ちはとてもよくわかります。
しかしその気持ちをグッとおさえて、患者さんに必要以上の不安を与えないことも薬剤師の大事な仕事だと私は考えます。
万が一の入力ミスを防ぐためにも、新規で処方される場合や、違う薬効の薬剤に切り替わった場合などは特に注意して患者さんからのヒアリングを行わなければいけないと改めて実感させられる事例でした。
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