アスピリン喘息の機序(メカニズム)と禁忌薬

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

ほとんどのNSAIDsの添付文書をみると禁忌欄に「アスピリン喘息」とあります。

アスピリン喘息について、具体的にどのような症状が起こるのか、機序、原因となる薬剤についてまとめてみました。

アスピリン喘息とは?

アスピリン喘息は、アスピリンだけでなくロキソプロフェンナトリウムやジクロフェナクナトリウムなどの非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidalantiinflammatory drugs, NSAIDs)が原因となっておこります。

喘息だけでなく、鼻汁鼻閉といった鼻症状を伴います。

自覚症状としてはNSAIDs使用後1時間以内に鼻閉や鼻汁といった鼻症状に続き、咳、喘鳴や呼吸困難が起こるのが特徴です。

アスピリン喘息の機序

アラキドン酸カスケードの簡単な図をもとにアスピリン喘息のメカニズムについて説明します。

アラキドン酸カスケード

アラキドン酸はシクロオキシゲナーゼとリポキシゲナーゼによって分解されます。

NSAIDsを投与することで、

NSAIDSがシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害

COXによるアラキドン酸の分解が抑えられる

リポキシゲナーゼによるアラキドン酸分解に偏る

ロイコトリエンの生成が増える

と考えられます。

アスピリン喘息の具体的な機序は明らかでないそうですが、NSAIDsによってアラキドン酸の代謝のバランスが崩れることが影響しているといえそうです。

特にロイコトリエンの中でもLTC4LTD4LTE4がアスピリン喘息に重要な役割を担っているとされています。

酸性・中性のNSAIDsは添付文書ではアスピリン喘息に禁忌

酸性、中性のNSAIDsは添付文書上では「アスピリン喘息に禁忌」となっています。

酸性のNSAIDs

・サリチル酸系
(アスピリン・バファリン)
・アントラニル酸系
(ポンタール)
・フェニル酢酸系
(ボルタレン)
・インドール酢酸系
(クリノリル・インテバンなど)
・ピラノ酢酸系
(ハイペン)
・イソキサゾール酢酸系
(ジソペイン)
・ナフタレン系
(レリフェン)
・プロピオン酸系
(ロキソニン・ニフランなど)
・オキシカム系
(モービック・ロルカムなど)

中性のNSAIDs

コシキブ系
(セレコックス)

塩基性のNSAIDsはソランタールが禁忌

ペントイル(一般名:エモルファゾン)はアスピリン喘息にも投与可能となっていますが2017年3月をもって販売中止となります。

塩基性のNSAIDsについてはソランタール(一般名:チアラミド)が添付文書上はアスピリン喘息に禁忌となっています。

実際はソランタール・セレコックスは使用されるケースあり

ソランタールは添付文書上では「アスピリン喘息に禁忌」となっていますが、実際には塩基性消炎薬はアスピリン喘息に使用できるとされています。

PL顆粒や多くの塩基性消炎薬の添付文書では、アスピリン喘息に禁忌となっているが、その根拠はほとんどなく、使用可能である。

引用元 独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター

またCOX2を選択的に阻害するセレコックス(一般名:セレコキシブ)や、COX2に選択性の高いモービック(一般名:メロキシカム)、ハイペン(一般名:エトドラク)も添付文書上では「アスピリン喘息に禁忌」ですが、重症不安定でなければ使用されるケースもあります。

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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