抗エストロゲン薬一覧・作用機序の違い(ノルバデックス・フェアストン・フェソロデックス)

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

乳がんのホルモン療法はホルモン受容体陽性ホルモン感受性乳癌)の患者さんが対象となります。

乳がんのホルモン療法として使用される薬剤は抗エストロゲン薬アロマターゼ阻害薬です。

アロマターゼ阻害薬についてはこちらにまとめています。

アロマターゼ阻害薬一覧・作用機序

抗エストロゲン薬の作用機序や違い、薬局で注意するべき副作用についてまとめました。

エストロゲンの産生経路

6〜7割の乳がんの発生・増殖にエストロゲンが関与しているといわれています。

エストロゲンは閉経前は主に卵巣から産生され、閉経後は主に副腎皮質からアンドロゲン(男性ホルモン)を経て産生されます。

閉経前の主なエストロゲン産生経路

視床下部

下垂体前葉

卵巣

エストロゲン

閉経後の主なエストロゲン産生経路

視床下部

下垂体前葉

副腎皮質

アンドロゲン
▼アロマターゼ
エストロゲン

このようにエストロゲンは閉経前と閉経後で主な産生経路が異なってきます。

エストロゲンが乳癌細胞にあるエストロゲン受容体に結合することで、乳癌細胞が活性化し乳癌が進行します。

抗エストロゲン薬一覧・作用機序の違い

抗エストロゲン薬は、内服タイプが2成分(タモキシフェントレミフェン)、筋注タイプが1成分(フルベストラント)上市されています。

全てエストロゲンの働きを抑えることで、乳癌の進行を抑えます。

タモキシフェン(商品名:ノルバデックス)とトレミフェン(商品名:フェアストン)はエストロゲンがエストロゲン受容体(ER)に結合するのを阻害します。

フルベストラント(商品名:フェソロデックス)は他の抗エストロゲン薬と違った作用機序で、エストロゲン受容体の分解を促進させることで(ダウンレギュレーション)、エストロゲンがエストロゲン受容体に結合できないようにします。

商品名
一般名
作用機序
ノルバデックス錠
タモキシフェンクエン酸塩
エストロゲン受容体(ER)に対してエストロゲンと競合して結合 
フェアストン錠
トレミフェンクエン酸塩
エストロゲン受容体(ER)へのエストラジオール(E2)結合阻害
フェソロデックス筋注
フルベストラント
エストロゲン受容体の分解促進 

 

ノルバデックス錠は閉経前・閉経後に、フェアストンとフェソロデックスは閉経後のみの適応となっています。

タモキシフェンとトレミフェンはSERMs(選択的エストロゲンモジュレーター)といって、乳房ではエストロゲンのアンタゴニストとして作用しますが、子宮内膜ではアゴニストとして作用します。

服薬指導・薬局での注意点

ほてり・ホットフラッシュの副作用

エストロゲンは体温調節にも関与していることから、抗エストロゲン薬によってエストロゲンの働きが低下し、ほてりのぼせ発汗などの更年期様の副作用が現れやすいのが特徴です。

ほてりの副作用は服用を続けると軽減すること、我慢ができない時は主治医に相談するようにお伝えしましょう。

通気性のよい服を選び、汗がでた時にすぐ上着を脱げるような重ね着をすること、うちわや扇子などを携帯することを予め説明しておくとよいでしょう。

適応はありませんがSSRIパロキセチン(商品名:パキシル)がホットフラッシュに処方されることがありますが、パロキセチンはタモキシフェンと併用注意となっています。

タモキシフェンはCYP2D6によって代謝活性化されますので、CYP2D6阻害作用があるパロキセチンを併用するとタモキシフェンの活性代謝物の血中濃度が低下し効果が減弱する可能性があるためです。

子宮への影響

タモキシフェンとトレミフェンはSERMs(選択的エストロゲンモジュレーター)といって、乳房ではエストロゲンのアンタゴニストとして作用しますが、子宮内膜ではアゴニストとして作用します。

特にノルバデックス(タモキシフェン)では無月経月経異常等の女性生殖器系が3.18%(120/3762)で報告されています1)

1)ノルバデックス錠 インタビューフォーム

ノルバデックス錠については、子宮体癌・子宮内膜症などを予防するために定期的に検査が推奨されています。

抗エストロゲン薬のホルモン療法は服用期間が長いことから、子宮への影響を不安がられる方もいらっしゃるかと思いますが、子宮関連の副作用の頻度は低いこと、乳癌の再発抑制効果が副作用のリスクを遥かに上回ることを説明し、不正出血などあればすぐに主治医に連絡するようにお伝えするとよいでしょう。

 

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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