「前立腺がん治療」抗アンドロゲン薬一覧・作用機序の違い

前立腺がんの増殖には男性ホルモンアンドロゲン)が関与していることから、ホルモン療法ではアンドロゲンの合成を抑えたり、アンドロゲンの働きを抑える抗アンドロゲン薬が使用されます。

抗アンドロゲンの一覧と、作用機序の違いについてまとめていきたいと思います。

抗アンドロゲン薬一覧

商品名
一般名
適応
カソデックス
ビカルタミド
前立腺がん 
オダイン
フルタミド 
前立腺がん 
プロスタール
プロスタット
クロルマジノン酢酸エステル
前立腺がん
100mg/day

前立腺肥大症
50mg/day
イクスタンジ
エンザルタミド
去勢抵抗性前立腺がん 
ザイティガ
アビラテロン酢酸エステル
去勢抵抗性前立腺がん

去勢抵抗性前立腺がんの定義

去勢抵抗性前立腺癌(読み方:きょせいていこうせいぜんりつせんがん)とは、手術や薬物療法による去勢状態でかつ血清テストステロンが50ng/dL未満にもかからわず、病勢が悪化したり腫瘍マーカーであるPSAの上昇が見られる状態のこと。抗アンドロゲン剤投与の有無は問わないこと1)。となっています。

1)前立腺癌取り扱い規約(第4版)

Castration-Resistant Prostate Cancerの頭文字からCRPC(シーアールピーシー)とも呼ばれます。

抗アンドロゲン薬作用機序

商品名 一般名 作用機序
カソデックス ビカルタミド アンドロゲンの働きを阻害
ARに結合しアンドロゲンのAR結合阻害
オダイン フルタミド  アンドロゲンの働きを阻害
ARに結合しアンドロゲンのAR結合阻害
プロスタール
プロスタット
クロルマジノン酢酸エステル アンドロゲンの働きを阻害
前立腺に作用しアンドロゲンの取り込み阻害

アンドロゲンのAR結合を阻害
血中テストステロン低下
イクスタンジ エンザルタミド  アンドロゲンの働きを阻害
ARのシグナル伝達阻害

ARに結合しアンドロゲンのAR結合阻害
ザイティガ アビラテロン酢酸エステル アンドロゲン生成阻害
CYP17阻害によるアンドロゲン生成阻害

AR=アンドロゲン受容体

カソデックス(ビカルタミド)・オダイン(フルタミド )作用機序・特徴

カソデックス(ビカルタミド)、オダイン(フルタミド )は同じ作用機序でアンドロゲンとアンドロゲン受容体(AR)が結合し複合体を作るのを阻害します。

副腎皮質由来のアンドロゲンは末梢組織や前立腺組織でテストステロンに変換後、前立腺細胞内の5α-還元酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。

DHTが前立腺細胞内のアンドロゲン受容体に結合することで前立腺腫瘍の細胞が増殖。

カソデックス(ビカルタミド)、オダイン(フルタミド )はアンドロゲン受容体に結合することで、アンドロゲンのARへの結合を阻害します。

オダインはカソデックスに比べ肝機能障害の副作用の頻度が高いことや、服用回数が1日3回とカソデックスの1日1回に比べて多いことからも、カソデックスの方が処方頻度は高い傾向にあります。

しかし抗アンドロゲン薬を長期間投与すると効果が減弱するため交替療法としてカソデックス⇄オダインの切り替えが行われることがあります。

プロスタール・プロスタット(クロルマジノン酢酸エステル)作用機序

50mg/dayで前立腺肥大症、高用量の100mg/dayで前立腺癌に適応。

前立腺に対する抗アンドロゲン作用と、血中テストステロン低下作用(高用量100mg/日)によって前立腺癌を抑えます。

直接的抗前立腺作用(アンチアンドロゲン)

  • テストステロンの前立腺取り込み阻害
  • 5α-ジヒドロテストステロンのレセプター結合阻害

血中テストステロン低下作用(100mg/day)

  • 視床下部-下垂体系の抑制
  • 精巣にてテストステロン生合成抑制

イクスタンジ(エンザルタミド)作用機序

イクスタンジ(エンザルタミド)は

  1. 細胞質に過剰に発現したアンドロゲン受容体へアンドロゲンの結合を阻害
  2. アンドロゲン受容体のシグナル伝達を複数段階で阻害

の作用により下記のように抗がん作用を示します。

  • 腫瘍細胞死の増加
  • 腫瘍細胞増殖の抑制
  • 腫瘍体積の縮小・退縮

 

アンドロゲン受容体(AR)のシグナル伝達とイクスタンジの作用点

去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)のがん細胞の細胞質内ではアンドロゲン受容体(AR)が過剰に出現しており、低濃度のアンドロゲンでも反応しARのシグナル伝達が亢進された状態になっています。

ARのシグナル伝達をまとめるとざっとこんな感じです。

アンドロゲンとアンドロゲン受容体が結合

2量体を形成し核内に移行

核内でDNAと結合

転写に必要なコアクチベーターが結合し転写開始

がん細胞の増殖が亢進

イクスタンジ(エンザルタミド)がARに結合することでARシグナル伝達を下記のように阻害します。

  • アンドロゲン受容体の核内移行の阻害
  • アンドロゲン受容体とDNAの結合を阻害
  • アンドロゲン受容体とコアクチベーターの結合を促進しない

去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)ではアンドロゲン受容体(AR)の過剰出現やアンドロゲン結合部位の異常がみられ、低濃度のアンドロゲンに反応するだけでなく、体内のステロイドや既存の抗アンドロゲンにもアゴニストとして反応してしまうことから、ARのシグナル伝達を阻害するという作用が重要な役割を果たしていると考えられます。

ザイティガ(アビラテロン)作用機序・特徴

 

作用機序

ザイティガ(アビラテロン)はアンドロゲンの合成に関与するCYP17を阻害しアンドロゲンの生合成を抑えます。

CYP17は精巣だけでなく副腎皮質前立腺腫瘍内にも発現しており、性腺外でも作用するのが特徴。

CYP17を阻害することで精巣・副腎皮質・前立腺腫瘍内のアンドロゲン合成を阻害し、腫瘍の増殖を抑えます。

ザイティガとプレドニゾロン(PSL)を併用する理由

ザイティガ錠1000mgを1日1回投与時に通常はプレドニゾロン5mgが1日2回併用されます。

ザイティガ単独で服用すると鉱質コルチコイドが上昇し血圧上昇の可能性があるためです。

副腎皮質では糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドのステロイドが生成されています。
ではなぜ、ザイティガを単独投与すると鉱質コルチコイドが上昇するのでしょうか?

メカニズムはこちらです。

ザイティガは副腎皮質での糖質コルチコイドの生成を阻害

糖質コルチコイドの不足を感知し副腎皮質のステロイド生成経路が活性化

糖質コルチコイドの生成が阻害されているため鉱質コルチコイドが過剰に生成

血圧の上昇

ザイティガが投与されている方にはプレドニゾロンは「副作用の防止目的」で処方されていることを薬局で説明する必要があります。

この記事を書いた人

シナジーファルマ株式会社・伊川勇樹(いかわゆうき)

伊川 勇樹(いかわ ゆうき)

シナジーファルマ株式会社 代表取締役社長
薬剤師 経営管理学修士(MBA)

京都薬科大学卒。大手調剤DSチェーンにて店長、エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。2013年4月にシナジーファルマ株式会社を設立。
「IT×薬剤師」で薬剤師業界の活性化のために日々奮闘中!!

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