関節リウマチに処方されるDMARDは大きく下記の3つに分類されます。
それぞれに該当する主な薬剤は下記のとおりです。
分類 | 主な薬剤名 一般名 |
|
---|---|---|
従来型 csDMARD |
免疫抑制薬 |
|
免疫調整薬 |
|
|
分子標的型 tsDMARD |
JAK阻害薬 | |
生物学的製剤 bDMARD |
IL-6阻害薬 |
|
TNF阻害薬 |
|
|
T細胞調整薬 |
|
分子標的型抗リウマチ薬であるJAK阻害薬について、どのような作用機序で効果を発揮するのか、まとめていきたいと思います。
JAK阻害薬について解説する前に、そもそもJAK(ジャック)がどのような働きをするのか説明していきます。
JAKとはヤヌスキナーゼ(Janus Kinase)の略語で、JAKは関節リウマチの原因となるIFNやILなどの炎症性サイトカインのシグナル伝達に関わる細胞内分子です。
下記の図のように炎症性サイトカインが免疫細胞の表面にあるサイトカイン受容体に結合すると、JAKによって細胞核へシグナルの伝達が行われ、さらに炎症性サイトカインが産生されます。
この炎症性サイトカインのシグナル伝達に関わる経路がJAK経路(JAKPathway:ジャックパスウェイ)です。
炎症性サイトカインがサイトカイン受容体に結合した後、シグナルが伝達されるメカニズムの詳細は下記のとおりです。
(こちらは深く知りたい方のみお読みください)
関節リウマチの原因となる炎症性サイトカインでJAKがシグナル伝達に関わるものは下記のとおりです。
関節リウマチの患者さんではこれらの炎症性サイトカインが過剰に分泌された状態になっています。
JAK阻害薬は炎症性サイトカインのシグナル伝達に関わるJAKの働きを阻害することで、関節リウマチの原因となる炎症性サイトカインの異常な産生を抑えます。
より細かいメカニズムについて解説していきます。
免疫細胞の表面に存在するサイトカイン受容体に炎症性サイトカインが結合すると、JAKにATPが結合しシグナル伝達がスタートします。(詳細は上記のJAKの働きを参照)
JAK阻害薬はJAKのATP結合部位に結合することでATPがJAKに結合するのを阻害し、炎症性サイトカインのシグナル伝達をシャットダウンさせるのです。
TNF阻害薬やIL-6阻害薬といった生物学的製剤(bDMARD)は、免疫細胞外で炎症性サイトカインがサイトカインに結合するのをブロックします。(上記図参照)
一方、JAK阻害薬は生物学的製剤と異なり低分子であり、細胞膜を通過し免疫細胞の中に入り込み、免疫細胞内で炎症性サイトカインのシグナル伝達に関わる細胞内分子であるJAKを阻害します。
JAK阻害薬は特定の分子であるJAKを阻害することから分子標的型抗リウマチ薬(tsDMARD)に分類されます。
JAKには下記の4つが存在します。
JAK阻害薬の中でも標的に違いがあります。
商品名 | ゼルヤンツ錠 | オルミエント錠 |
---|---|---|
一般名 | トファシチニブ | バリシチニブ |
作用機序 | JAK阻害 JAK1,2,3阻害 |
JAK阻害 JAK1,2阻害 |
用法・用量 | 1回5mg1日2回 | 1回4mg1日1回 |
サイトカイン受容体には2分子以上のJAKが会合し活性化されますが、JAKの組み合わせによって関与する炎症性サイトカインが異なります。
組み合わせ | 炎症性サイトカイン |
---|---|
JAK1 JAK3 |
IL7,IL15,IL21等 |
JAK1 JAK2 |
IL-6等 |
共通
ゼルヤンツ
参照
ゼルヤンツ錠インタビューフォーム
オルミエント錠インタビューフォーム
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」のFacebookページに「いいね!」をすると、薬剤師が現場で活躍するために役立つ情報を受け取ることができます。ぜひ「いいね!」をよろしくお願いします。
お客様により安全にご利用いただけるように、SSLでの暗号化通信で秘匿性を高めています。
コメント欄ご利用についてのお願い
※コメントはサイト管理者の承認後に公開されます