「飲む日焼け止め」の安全性にアプローチする

こんにちは。
健康食品を担当しているエビデンスエージェントの工藤知也です。

「飲む日焼け止め」と検索すると、50万件以上ヒットします。
インスタグラムを中心とした広告展開で、
「飲む」という手軽さが受け、想像以上に流行しているようです。

まさに紫外線が強いこの季節、
来局する患者さんの中にも使っている方がいるかもしれません。

無論、パッケージに紫外線に対する効果の表示がありませんが、
使用者の声を掲載して、「日焼け止め」として販売しているのは明らかです。
ちなみに、パッケージに標榜していなくても、
関連する情報とともに販売すると規制の対象になります。

そして、薬剤師としては、こんな素朴な疑問が生まれませんか?

「本当に効果あるの?安全性は?」

それでは、健康食品的「飲む日焼け止め」の科学をのぞいてみましょう。

主要成分はFernblock®(フェーンブロック)とNutroxsunTM(ニュートロックスサン)の2強

現在、日本で見かける「飲む日焼け止め」と認識できる食品の主要成分は、
Fernblock®とNutroxsunTMの2種類です。

Fernblock®は、ダイオウウラボシ(ウラボシ目, ウラボシ科, ポリポディウム属, 学名 Phlebodium aureum, 別名Polypodium leucotomos)というホンジュラス原産(熱帯)のシダの一種から抽出した成分です。
論文では、別名からPolypodium leucotomos (PL) extract(PL抽出物)として登場します。
南米では古くから、シダ類が民間薬として使われており、そこから商業化が進んだようです。
つまり、今日まで日本人が口にしたことのない食品になります。

NutroxsunTMは、グレープフルーツ(ムクロジ目, ミカン科, ミカン属, 学名Citrus paradisi)とローズマリー(シソ目, シソ科, マンネンロウ属, 学名Rosmarinus officinalis)から抽出した成分でポリフェノールを含みます。
グレープフルーツは身近な果物ですし、ローズマリーもハーブとしてお馴染みです。

ここでまず、「植物の抽出物」という点が気になります。
広告では、植物由来だから健康的で副作用(的)の心配ナシというニュアンスで書いています。

しかし、漢方を見れば明らかなように、植物だから健康的というのは幻想ですね。
まして、Fernblock®は、日本の食生活に存在しないものですから。

また、植物は原産地、生育環境そして季節などによって成分が変動するので、
年間を通して安定した製品を生み出すためには相応の努力が必要です。

これが、医薬品ではないFernblock®やNutroxsunTMに出来ているのか不安になります。

学術的にインパクトのある仕事でも、
それを容易に商品に結び付けることには疑問を感じます。
良い結果を示しても安全性の壁を越えられない物質がたくさん存在する医薬品の開発を考えれば明らかですね。

Fernblock®の有効性と安全性は?

Fernblock®の紫外線に対する防御効果、そして経口摂取の安全性の報告についてPubMedで調べてみると27報の論文があります。
PubMedとは、米国国立医学図書館の生物科学情報センターが運営するデータベースで、世界中の生物医学関係の論文にアクセスできます。

今から20年以上前の1996年、ハーバード大学のSalvador Gonzalezが Fernblock®の紫外線に対する防御効果について初めて報告しました1)

このSalvador Gonzalez博士が、今日までFernblock®研究をリードしています。

2014年には、白人9名においてFernblock®の紫外線に対する防御効果を検討しています。
方法としては、Fernblock®摂取群(体重1kgあたり7.5mg摂取)と対照群に分けて紫外線照射による紅斑発生24時間後に解析しています。
結果から、対照群と比較してFernblock®摂取群では紅斑の程度も軽く、日焼け反応に特徴的な壊死細胞(sunburn cell)数の優位な減少を見出しました2)

また同年には、白人10名に対する紫外線治療(PUVA; 紫外線の感受性を高めるソラレンを塗布後にUVAを照射)の副作用軽減を目的とした、Fernblock®経口摂取の有効性を発表しています。
その中で、Fernblock®摂取群(体重1kgあたり7.5mg摂取)では、色素沈着が4カ月後まで減少し、日焼け反応に特徴的な壊死細胞数の有意な減少を報告しました3)

これらからFernblock®経口摂取の紫外線に対する一定の防御効果を否定できません。

しかし、被験者が少ないので、副作用の考察が欠落しています。 科学的知見としては構いませんが、これを食品として販売することには疑問が残ります。

これまでもお話しているように、 健康食品とはあくまでも栄養や嗜好としての機能があり、
それに付加する形で健康機能が加わります(体脂肪を減らすのを助ける緑茶のように)。

シダ植物が、この観点に当てはまるとは思えません。
もし、使用する場合は体の変化に十分に気をつける必要がありそうです。

NutroxsunTMの有効性と安全性は?

NutroxsunTMは、グレープフルーツとローズマリーから抽出した成分ですので、Fernblock®と比べて安全性については優位と考えます。

2016年、スペインのNobileらは、白人女性90名でNutroxsunTMの紫外線に対する防御効果を発表しました。
方法としては、NutroxsunTM服用群(100mg or 250mg)と対照群で紫外線照射による紅斑反応とシワの深さを評価しています。

結果は摂取後2週間で、NutroxsunTM服用群では対照群に比べて紅斑反応やシワの深さを抑制していました。
この効果は摂取継続2カ月後でも同様の結果を示し、100mgと250mgでは同程度の効果でした4)

被験者が90名で有意差のあるデータですので、この論文自体は一見に値すると思います。

しかし残念ながら、NutroxsunTM経口摂取による紫外線に対する防御効果を示した論文は、この1報のみなのです。
実際にはこれから研究が進むといったところでしょうか。

薬局での対応を考える

では、患者さんが「飲む日焼け止め」について尋ねてきたら、
薬剤師として、どのようにお話しすれば良いのでしょうか?

最もはっきりしているのは安全性の科学的な配慮に欠けている点です。
効果については否定しませんが、被験者数が少なく決定的ではありません。
もちろん、薬との相互作用は全くわかりません。

従って、薬を飲んでいる方には控えて頂くのが妥当でしょう。
服用する場合は、身体の変化や治療の効果に十分気を付ける必要がありそうです。

まとめ

今回は、「飲む日焼け止め」に注目しました。
覚えておいてくださいねFernblock®とNutroxsunTMの2強。

ネットで検索すれば多くの情報が出てきますが、
科学的に正しい記述を探すのは大変な労力が必要です。
使用することを無理に止めることはできませんが、
科学的知見から、リスクを明らかにして正確にお伝えする必要があります。

最後に、流行を追っていくことも忘れずに。自戒もこめて。

引用文献
1) Gonzalez S, et al. Inhibition of ultraviolet-induced formation of reactive oxygen species, lipid peroxidation, erythema and skin photosensitization by polypodium leucotomos.
Photodermatol Photoimmunol Photomed. 1996; 12(2): 45-56. PMID: 8895789

2) Middelkamp-Hup MA, et al. Oral Polypodium leucotomos extract decreases ultraviolet-induced damage of human skin.
J Am Acad Dermatol. 2004; 51(6): 910-918. PMID: 15583582

3) Middelkamp-Hup MA, et al. Orally administered Polypodium leucotomos extract decreases psoralen-UVA-induced phototoxicity, pigmentation, and damage of human skin.
J Am Acad Dermatol. 2004; 50(1): 41-49. PMID: 14699363

4) Nobile V, et al. Skin photoprotective and antiageing effects of a combination of rosemary (Rosmarinus officinalis) and grapefruit (Citrus paradisi) polyphenols.
Food Nutr Res. 2016; 60: 31871. PMID: 27374032

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この記事を書いた人

工藤知也(くどうともや)

工藤 知也(くどうともや)

エビデンスエージェント代表
http://evidenceagent.com/

薬剤師。博士(医学)。2007年、金沢大学大学院医学系研究科博士課程修了。2009年、ケンタッキー大学医学部博士研究員。帰国後から薬剤師を始め、2013年、科学的知見に基づいた医薬品情報を患者様向けに発信するエビデンスエージェントを開業。

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