エロビキシバット(グーフィス)作用機序・食前服用の理由・服薬指導の確認事項

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2018年1月にEAファーマさんが慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)の適応で胆汁酸トランスポーター阻害剤「グーフィス錠5mg」(一般名:エロビキシバット水和物)の製造販売承認を取得しました。

グーフィス錠(一般名:エロビキシバット水和物)の作用機序、調剤時の注意点についてまとめました。

エロビキシバット(グーフィス)の作用機序はIBAT阻害

エロビキシバット(グーフィス)は大腸管腔内で胆汁酸を増やし下記の2つの作用をもたらすことで便通を改善させます。

  • 大腸管腔内に水分を分泌
  • 消化管運動を促進させる

 

胆汁酸とは?

胆汁酸は胆汁の主成分です。

胆汁は肝臓で合成、胆嚢で貯蔵され飲食などの刺激によって十二指腸に排泄され食物由来の脂肪の消化や吸収に関与します。

胆汁酸は回腸末端以降から再吸収され肝臓にもどります。

では、エロビキシバット(グーフィス)はどのように大腸管腔内の胆汁酸を増加させるのでしょうか?

大腸管腔内で胆汁酸を増加させる作用機序

エロビキシバット(グーフィス)の作用機序は下記の通りです。

回腸末端部の上皮細胞に発現する胆汁酸トランスポーターIBAT:ileal bile acid transporter)を阻害

胆汁酸の再吸収抑制

大腸管腔内に流入する胆汁酸を増加

胆汁酸は大腸管腔内に水分を分泌させ消化管運動を促進させる

便秘改善が期待される

食後でなく食前投与の理由

グーフィス錠は「食前服用(食事の20〜30分前)」となっています。

食後でなく食前投与の理由ですが、胆汁酸は食事によって刺激され分泌されますので、食事の前にエロビキシバット(グーフィス)を投与することで胆汁酸の再吸収を抑制する状態を予めつくっておくためとされています。

Tmax T1/2との関係

エロビキシバット(グーフィス)は回腸末端の胆汁酸トランスポーターへ直接作用するためTmaxやT1/2に関係なく作用すると考えられます。

初回の効果が現れるまでの時間

 初回自発排便までの時間中央値 
プラセボ
n=63
25.5hr
グーフィス10mg
n=69
5.2hr

出所 EAファーマホームページ参照

エロビキシバット(グーフィス)併用禁忌・併用注意薬

エロビキシバット(グーフィス)と併用禁忌薬はありませんが、下記の薬剤が併用注意となっています。

薬品名 理由
胆汁酸製剤
ウルソデオキシコール酸
ケノデオキシコール酸
 左記薬の作用減弱
→胆汁酸製剤の再吸収が阻害されるため
Al含有製剤
スクラルファート水和物
アルジオキサ
グーフィスの作用減弱
→左記薬が胆汁酸を吸着するため
コレスチラミン
コレスチミド
グーフィスの作用減弱
→左記薬が胆汁酸を吸着するため
ジゴキシン
ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩
左記薬の作用増強
→グーフィスのP糖タンパク阻害作用のため
ミダゾラム ミダゾラムの作用減弱
→機序不明

特にウルソデオキシコール酸(商品名:ウルソ)は処方頻度が高い薬剤なので要注意です。

またダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(商品名:プラザキサ)はグーフィスのP糖蛋白阻害のため作用が増強する可能性があるため、プラザキサも特に注意が必要となるでしょう。

薬局でのチェック項目

  • 薬理作用を説明(大腸内に水分分泌を増やし、消化管の運動を促進させる)
  • 用法は1日1回食前(食後なら疑義照会が必要)
  • 最高用量は15mg(15mg以上の場合は疑義照会が必要)
  • 代表的な副作用を説明しておく
    国内臨床試験での主な副作用は631例中腹痛(19.0%)下痢(15.7%)下腹部痛(8.6%)腹部膨満感(6.8%)

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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