過敏性腸症候群(IBS:irritable bowel syndrome)は器質疾患がないにも関わらず、下痢や便秘といった便通異常と共に腹痛や腹部不快感を伴う疾患です。
IBS患者さんはうつや不安障害を高い確率で発症することもあり、薬局でも相談を受ける機会が多いのではないでしょうか。
IBSは大きく下記の4つに分類されます1)。
1)ROME3基準
IBS治療薬について、作用機序や特徴をまとめました。
一般名 | 商品名 | 分類 |
---|---|---|
ポリカルボフィルカルシウム | コロネル ポリフル |
過敏性腸症候群の便通異常(下痢・便秘)および消化器症状 |
トリメブチンマレイン酸塩 | セレキノン | 過敏性腸症候群 |
ラモセトロン塩酸塩 | イリボー | 下痢型過敏性腸症候群 |
リナクロチド | リンゼス | 便秘型過敏性腸症候群 |
ポリカルボフィルカルシウム(商品名:コロネル、ポリフル)は過敏性腸症候群の「便秘」「下痢」といった便通異常を改善します。
ポリカルボフィルカルシウムは胃の中(酸性下)でカルシウムを遊離しポリカルボフィルになり、中性下の小腸や大腸で効果を発揮します。
下痢を改善する作用機序
下痢の時は、ポリカルボフィルが腸管内に増加した水分を吸収しゲル化することで、亢進した消化管内容物の通過速度を遅らせ、排便回数を抑えます。
また消化管内容物の通過時間が長くなることで腸管内の水分が体内に吸収され便を正常に近づけます。
便秘を改善する作用機序
便秘の時は、ポリカルボフィルが腸管内の水分を吸収し膨潤することで、消化管の内容物を軟化させたり膨らませることで排便回数を増やします。
このようにポリカルボフィルカルシウムは過敏性腸症候群の「便秘」と「下痢」のどちらにも効果を示すことから下痢型、便秘型、混合型であっても処方することが可能です。
のどや食道でつかえた場合、つかえた場所で膨張する可能性があるため多めの水で服用することを薬局では指導する必要があります。
トリメブチンマレイン酸塩(商品名:セレキノン)は「消化管運動機能調整薬」といわれ胃腸の動きが悪い時は活発にさせ、胃腸の動きが亢進している時は抑える作用があります。
主に2つの点からアプローチします。
消化管平滑筋に作用
消化管平滑筋が弛緩した細胞にはKチャネルの抑制による脱分極により細胞の興奮を高めます。
一方で細胞の興奮に応じてCaチャネルを抑制し、過剰な収縮を抑えます。
オピオイド受容体に作用
運動亢進状態では副交感神経終末のオピオイドμ受容体とκ受容体に作用し、アセチルコリンの遊離を抑え、消化管の運動を抑えます。
運動低下状態では交感神経終末のオピオイドμ受容体に作用しノルアドレナリン遊離を抑えることで、副交感神経終末からのアセチルコリンの遊離を増加させ消化管運動を亢進させます。
ラモセトロン塩酸塩(商品名:イリボー)は腸管の神経節に存在する5HT3受容体を遮断することで大腸輸送能亢進、大腸水分輸送異常を改善し、「下痢型」の過敏性腸症候群を改善します。
また大腸痛覚の伝達も抑えることで「痛みの改善」も期待できます。
元々イリボーは男性専用の下痢型IBS治療薬でしたが、2015年に男性の半分の用量で女性にも適応が追加されました。
リナクロチド(商品名:リンゼス)は14個のアミノ酸からなるグアニル酸シクラーゼ受容体作動薬です。
グアニル酸シクラーゼ受容体は腸管腔表面に存在し、活性化するとサイクリックGMPが増え腸管輸送や腸管分泌が増大します。
リナクロチドはグアニル酸シクラーゼ受容体を作動させることで「便秘型」の過敏性腸症候群の改善が期待できます。
またリナクロチドは大腸痛覚過敏も改善することから、便秘による腹痛や腹部不快感も改善できると考えられています。
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