過敏性腸症候群(IBS)治療薬一覧「下痢型・便秘型」

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

過敏性腸症候群(IBS:irritable bowel syndrome)は器質疾患がないにも関わらず、下痢便秘といった便通異常と共に腹痛腹部不快感を伴う疾患です。

IBS患者さんはうつや不安障害を高い確率で発症することもあり、薬局でも相談を受ける機会が多いのではないでしょうか。

IBSは大きく下記の4つに分類されます1)

  • 便秘型
  • 下痢型
  • 混合型
  • 分類不能型

1)ROME3基準

IBS治療薬について、作用機序や特徴をまとめました。

過敏性腸症候群(IBS)治療薬一覧

一般名 商品名 分類
ポリカルボフィルカルシウム コロネル
ポリフル
過敏性腸症候群の便通異常(下痢・便秘)および消化器症状
トリメブチンマレイン酸塩 セレキノン 過敏性腸症候群
ラモセトロン塩酸塩 イリボー 下痢型過敏性腸症候群
リナクロチド リンゼス 便秘型過敏性腸症候群

 

ポリカルボフィルカルシウム(コロネル・ポリフル)作用機序・特徴

ポリカルボフィルカルシウム(商品名:コロネル、ポリフル)は過敏性腸症候群の「便秘」「下痢」といった便通異常を改善します。

ポリカルボフィルカルシウムは胃の中(酸性下)でカルシウムを遊離しポリカルボフィルになり、中性下の小腸や大腸で効果を発揮します。

下痢を改善する作用機序
下痢の時は、ポリカルボフィルが腸管内に増加した水分を吸収しゲル化することで、亢進した消化管内容物の通過速度を遅らせ、排便回数を抑えます。
また消化管内容物の通過時間が長くなることで腸管内の水分が体内に吸収され便を正常に近づけます。

便秘を改善する作用機序
便秘の時は、ポリカルボフィルが腸管内の水分を吸収し膨潤することで、消化管の内容物を軟化させたり膨らませることで排便回数を増やします。

このようにポリカルボフィルカルシウムは過敏性腸症候群の「便秘」と「下痢」のどちらにも効果を示すことから下痢型、便秘型、混合型であっても処方することが可能です。

のどや食道でつかえた場合、つかえた場所で膨張する可能性があるため多めの水で服用することを薬局では指導する必要があります。

トリメブチンマレイン酸塩(セレキノン)作用機序・特徴

トリメブチンマレイン酸塩(商品名:セレキノン)は「消化管運動機能調整薬」といわれ胃腸の動きが悪い時は活発にさせ、胃腸の動きが亢進している時は抑える作用があります。

主に2つの点からアプローチします。

  • 消化管平滑筋に作用
  • オピオイド受容体(μ、κ)に作用

消化管平滑筋に作用
消化管平滑筋が弛緩した細胞にはKチャネルの抑制による脱分極により細胞の興奮を高めます。
一方で細胞の興奮に応じてCaチャネルを抑制し、過剰な収縮を抑えます。

オピオイド受容体に作用
運動亢進状態では副交感神経終末のオピオイドμ受容体とκ受容体に作用し、アセチルコリンの遊離を抑え、消化管の運動を抑えます。

運動低下状態では交感神経終末のオピオイドμ受容体に作用しノルアドレナリン遊離を抑えることで、副交感神経終末からのアセチルコリンの遊離を増加させ消化管運動を亢進させます。

ラモセトロン塩酸塩(イリボー)作用機序・特徴

ラモセトロン塩酸塩(商品名:イリボー)は腸管の神経節に存在する5HT3受容体を遮断することで大腸輸送能亢進、大腸水分輸送異常を改善し、下痢型」の過敏性腸症候群を改善します。

また大腸痛覚の伝達も抑えることで「痛みの改善」も期待できます。

元々イリボーは男性専用の下痢型IBS治療薬でしたが、2015年に男性の半分の用量で女性にも適応が追加されました。

リナクロチド(リンゼス)作用機序・特徴

リナクロチド(商品名:リンゼス)は14個のアミノ酸からなるグアニル酸シクラーゼ受容体作動薬です。

グアニル酸シクラーゼ受容体は腸管腔表面に存在し、活性化するとサイクリックGMPが増え腸管輸送や腸管分泌が増大します。

リナクロチドはグアニル酸シクラーゼ受容体を作動させることで「便秘型」の過敏性腸症候群の改善が期待できます。

またリナクロチドは大腸痛覚過敏も改善することから、便秘による腹痛や腹部不快感も改善できると考えられています。

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

記事作成のサイトポリシーについてはコチラ

この投稿者の最近の記事

「伊川勇樹」のすべての投稿記事を見る>>

コメント欄ご利用についてのお願い

  • 薬剤師、薬学生、調剤事務、医師、看護師といった医療に携わる方が使用できるコメント欄となります。
  • 「薬剤師の集合知」となるサイトを目指していますので、補足・不備などございましたらお気軽に記入いただけると幸いです。
  • コメントの公開は運営者の承認制となっており「他のユーザーにとって有益な情報となる」と判断した場合にのみ行われます。
  • 記事に対する質問は内容によってお答えできないケースがございます。
  • 一般消費者からの薬学、医学に関する相談や質問は受けつけておりません。

※コメントはサイト管理者の承認後に公開されます

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」のFacebookページに「いいね!」をすると、薬剤師が現場で活躍するために役立つ情報を受け取ることができます。ぜひ「いいね!」をよろしくお願いします。

お客様により安全にご利用いただけるように、SSLでの暗号化通信で秘匿性を高めています。

ページトップに戻る