カウフマン療法とは?服用方法の指導時の注意点〜処方箋の落とし穴

この記事を書いた人

J

薬剤師
日本大学 薬学部卒

こんにちは、薬剤師ライターのJです。

今回は婦人科領域の処方でみられるカウフマン療法について書きたいと思います。

薬剤師の皆さんはカウフマン療法という言葉を聞いたことあるでしょうか?

少なくとも薬剤師国家試験や薬学部の卒業試験の勉強では私の記憶の限り一回も聞いたことがなかったので、知らない方も多いのではないかと思います。

ざっくばらんに言うと、月経不順である患者に対して正常な月経を促す目的で行うホルモン治療といったところでしょうか。

不妊外来でも「卵巣機能を休ませリバウンド現象による排卵誘発」や「子宮内膜を厚くしてふかふかのベッド状にする」といった目的で処方されることがあります。

カウフマン療法は服用方法が特殊なので、しっかり服用指示が書いてある処方せんならカウフマン療法を知らなくても間違えることはないと思います。

しかし、私が見た処方せんに関してはしっかりとした服用指示が書かれていなかったので、カウフマン療法を知らない薬剤師だと間違えた服薬指導をしてしまう可能性があります。

では、具体的な処方例を見ていきましょう。

カウフマン療法 処方例

Rp1)プレマリン錠0.625mg 1T
1日1回30日分

Rp2)プラノバール配合錠 1T
1日1回33日分  

プレマリン錠は「卵胞ホルモン」、プラノバール配合錠は「卵胞ホルモン+黄体ホルモン 配合剤」です。

さて、この処方ですが、カウフマン療法を知らない場合、どうやって服用させるか分かりますか?

参考までにこちらがプレマリンとプラノバールの添付文書の抜粋です。

【プレマリン錠0.625mg】
効能又は効果
卵巣欠落症状
卵巣機能不全症
更年期障害 腟炎(老人、小児および非特異性)
機能性子宮出血

用法及び用量
結合型エストロゲンとして、通常成人1日0.625~1.25mgを経口投与する。
機能性子宮出血又は腟炎に対しては、1日0.625~3.75mgを経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

引用元 プレマリン錠0.625mg添付文書

【プラノバール配合錠】
効能又は効果/用法及び用量
機能性子宮出血
1日1錠を7~10日間連続投与する.
月経困難症,月経周期異常(稀発月経,頻発月経),過多月経,子宮内膜症,卵巣機能不全
1日1錠を月経周期第5日より約3週間連続投与する。

引用元 プラノバール配合錠添付文書

うん、さっぱりわからないですね… 。

添付文書を見ても服用方法はわからないので、正解をお伝えします。

月経開始5日目(医師の指示によって異なる)からプレマリンを10日間服用し、プレマリン服用終了後翌日からプラノバールを11日間服用します。

これを1サイクルとし、また次の月経開始5日目からプレマリン10日間服用~という流れで合計3サイクル分の処方になります。

いかがでしょうか?
想像できたでしょうか?

この処方以外にも、

プラノバール配合錠(卵胞ホルモン+黄体ホルモン)の代わりにソフィアC錠(卵胞ホルモン+黄体ホルモン)が処方されたり、

プレマリン錠(卵胞ホルモン)が21日+デュファストン(黄体ホルモン)が11日(10日間プレマリン→11日間プレマリン+デュファストン)で処方されたり、

プレマリン錠(卵胞ホルモン)を11日服用後、プラノバール配合錠(卵胞ホルモン+黄体ホルモン)が10日服用だったりすることもあるようです。

しかし、どういった処方内容でも肝心なことは

卵胞ホルモン(月経開始◯日後から約10日)

卵胞ホルモン+黄体ホルモン(約11日)

休薬

が1サイクルとなり、1回の処方で複数サイクル処方されることがある

ということです。

月経周期の前半に卵胞ホルモン製剤を約10日間投与することで増殖期を誘導し、後半に卵胞ホルモン+黄体ホルモン製剤を約11日間投与することで消退出血を引き起こさせます。

このようにカウフマン療法は女性の自然なホルモンの変化を薬によって類似的に作る治療方法なのです。

このことさえ分かっていれば間違えることはありません。

それと、プレマリンとプラノバールが1日1回と服用時点の指示がない場合、日中の吐き気の副作用を防ぐためにも夕食後〜就寝前に服用してもらうとよいと思います。

カウフマン療法を知らない薬剤師によるヒヤリハット事例

実際にあったヒアリハット事例ですが服薬指導で、


薬剤師

このプラノバール配合錠は1日1回33日分服用してください。

なんて言っている薬剤師がいたら、

ん?ひょっとしてカウフマン療法か?

と思って処方内容を確認してください。

調剤過誤を防ぐことができるでしょう。

私も先輩薬剤師に教えてもらわなかったらいまだに知らないままだったかもしれませんね。

婦人科の処方せんを突然受け付けるかもしれない

普段、婦人科の処方箋を受けつけていない薬局であっても、いきなりカウフマン療法の処方せんを受けることがあるかもしれません。

卵胞ホルモン(月経開始◯日後から約10日)

卵胞ホルモン+黄体ホルモン(約11日)

休薬

が1サイクルとなり、1回の処方で複数サイクル処方されることがある。

このことを知っておくことで、カウフマン療法を受けている患者さんに対して、間違った服薬指導を防ぐことができるでしょう。

 

この記事を書いた人

J

薬剤師
日本大学 薬学部卒

中小企業2社で管理職を経験。
現在は1店舗の薬局経営者。
薬剤師らしくない薬剤師を目指して日々精進を重ねていきたいと思っております。

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