小児の処方箋を受け付ける際に心がけること

この記事を書いた人

J

薬剤師
日本大学 薬学部卒

こんにちは。
薬剤師ライターのJです。

今回の記事は子供が生まれる前に、
小児がよく来局する耳鼻科の門前薬局や小児科の門前薬局で働いていた時に感じていたことと、
現在子供の親として薬局に来局した際に思うことのギャップについて書きたいと思います。

私は子供が生まれる以前と以後で大きく考え方が変わったという実感があります。

そして昔の自分にアドバイスできるならしたいと思っています。

もし昔の私と同じような感覚で働いている薬剤師の方がいるなら、この記事が役に立つのではないかと考えて記事を書いてみようと思いました。

皆さんは小児の処方せんをどのくらいの頻度で調剤しているでしょうか?

小児科の門前薬局なら当然毎日でしょうが、整形外科や産婦人科の門前薬局などはなかなか目にしないですかね。

大手の調剤薬局などではシロップや粉薬を機械が自動で調剤しているかもしれませんが、そういった機械がない薬局では調剤に時間がかかると思います。

私が働いていた薬局はそのような機械はありませんでしたので、よく処方される分量の薬は予製を作って対応していましたが、予製通りすべてが処方されるわけでもなく、調剤に時間がかかるものもありました。

シロップ・粉の処方せんはコピーを取り、先に調剤したりしてなるべく患者さんを待たせないよう工夫していましたが、監査にも時間がかかるので、やはり順番が遅れてしまうこともありました。

耳鼻科の処方箋のクレーム

最初は耳鼻科の門前薬局に勤務していた時の話です。

受付時に番号札を渡して、順番を飛ばすときはアナウンスをして次の患者さんの薬を渡していました。

ある日のことです、いつも通りの1時間以上待ちの時、子連れの患者さんからのクレームでした。


患者さん

ちょっと!

いったい、いつまで待たせるんですか!

またクレームか…と思い、私が対応しました。


薬剤師 J

何番の方ですか…?

(番号を確認して)

申し訳ありません、ただいまお作りしていますのでもう少々お待ちください。

 


患者さん

早くしてください、子供の薬なんですよ!

 


薬剤師 J

子供の薬は調剤に時間がかかります。
調剤が終わり次第お呼びしますのでお待ちください。

こんな感じの対応でした。

この当時の私はとにかく早く投薬して患者さんの待ち時間を減らさなくてはと思って行動していました。

「子供の薬なんですよ!」

と言われて、

「子供の薬なんだから時間がかかるの当たり前でしょ、このクレームの時間がなければ一人投薬できたのに…」

と考えていました。

小児科の処方箋のクレーム

次は小児科の門前薬局に勤務していた時の話です。

こちらの薬局では、門前の小児科の処方以外にいくつか小児の処方を受けることがあり、

その日は調剤に時間がかかることで有名な小児科の処方せんを受けたところでした。

その小児科の処方せんは待ち時間のクレームにつながることが多いので、予め処方せん受付の際に30分以上時間がかかることを伝えるよう受付の事務に指示していました。

患者さんはあとで取りに来ることになり、一度外出しました。

しばらく時間がたって患者さんが戻られました。


薬剤師 J

〇〇さんですね、お薬できています。

 


患者さん

私の友達調剤薬局で働いているんですけどー、子供の薬で30分以上かかるとかありえないって言ってましたよ。

「なんだよ…
あなたの態度の方がありえないだろ」

と思う気持ちをグッと抑え、冷静に対応しました。


薬剤師 J

申し訳ありません。

〇〇先生の処方でしたらあらかじめよく出る薬を作ってあるのですぐに用意できるんですが、この先生の処方は量がかなり細かいので全部その都度作らなくてはいけないんですね。

それも全部別々にまかなくてはいけないので、それで時間がかかってしまうんです。

 


患者さん

・・・・。

 


薬剤師 J

(何言ってもダメそうだな…) 

といった感じでした。

さて、皆さん、上記2件の事例を見ていただいていかがでしょうか?

子供の親である患者さんの気持ちが理解できるか、薬局薬剤師として私の気持ちが理解できるか、あるいは両方の気持ちが理解できるか。

いや、待たせすぎでしょって思われた方いるかと思いますが、手を抜いて待たせていたわけではなく手際が悪くて待たせていたわけでもないのでご理解ください。

最後に自分の子供を薬局に連れて行ったときの話です。

当時子供は1歳半位でした。

まだあまり言葉をしゃべれない時期で一度泣き出すととにかく私の抱っこを嫌がり、妻が抱っこしないと泣き止みませんでした。

クリニックで結構待たされたので薬局はすいているといいなと思いながら店内に入ってみると、他に患者さんはいなかったので早く薬を受け取れそうでした。

初回だったのでアンケートを書いていたのですが、子供がすでに飽きてしまい外に出たがっていました。

他に患者さんがいないからすぐお薬もらえるよと伝えてもダメで、子供は泣き出してしまい結局妻に抱っこされました。

クリニックでも抱っこしていたので妻はかなり辛そうでした。

僕が抱っこを代わろうとしても子供は暴れて泣き出してしまいます。
早く調剤終わらないかなと思っていたら、ちょうど呼ばれて薬を受け取れました。

おそらく10分程度しか待たなかったですがかなり精神的に疲れました。
これが30分や1時間待ちだと薬局の中では絶対に待っていられないなと思いました。

親の立場にたって初めてわかったこと

その立場になってみて初めて分かることってありますよね。

自分一人なら遅いなあと思って待っていれば良いですが、子供はいつ泣き出したり暴れたりするか分からないので不満だけでなく不安感を抱きながら子供の親は待っているわけですね。

もちろんおとなしく待っていられる子供もいるわけですが、私が抱っこすると暴れるといった私の子供の様に、ひとくくりに小児と言ってもいろいろな特徴、個性があります。

他の親はおとなしく待っているのになんであの親は文句を言ってくるのかと思うのではなく、文句を言ってくるということは何か理由があるんだなと思うことが大事なんだと今の私は考えます。

  • 子供を抱っこしたりおんぶしたりして肉体的に疲労がたまってきたのか
  • いつ呼ばれるか分からない状況で子供と一緒に待っているのが不安だったのか
  • 他の患者さんが待っている中で風邪をうつされるのが嫌だったのか
  • 子供に早く薬を飲ませたいのに予想以上に時間がかかったのが不満だったのか

理由はいくらでも考えられると思います。

そうやって患者さんのことを考えると、文句を言われてもムカッとして対応が雑になったりすることなく、丁寧に親身になって対応することで患者さんの不満も少しは和らぐのではないかと思います。

昔は小児が薬局に来局した際に思ったことは、

「調剤に時間がかかって大変だな」

でした。

しかし現在は、小児が薬局に来局した際に思うことは、

「子供を連れて来局するなんて大変だな、なるべく早く薬を準備してできるだけ親切に対応しよう」

です。

余談ですが今回ご紹介した2例目の小児科での患者さんは、後日来局した際に「失礼なことを言ってすみませんでした」と謝られました。

調剤薬局で働いている友達に事情を話したらそのくらい時間がかかることもあると言われたそうで、理解してもらえてよかったです。

この記事を書いた人

J

薬剤師
日本大学 薬学部卒

中小企業2社で管理職を経験。
現在は1店舗の薬局経営者。
薬剤師らしくない薬剤師を目指して日々精進を重ねていきたいと思っております。

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