「経口タイプのGLP-1受容体作動薬」セマグルチド錠(リベルサス)調剤・服薬指導のポイント

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

ノボノルディスクファーマは2019年7月、内服薬(錠剤タイプ)GLP-1アナログ製剤であるセマグルチド(商品名:リベルサス)の医薬品製造販売承認申請を厚生労働省に行いました。

適応は2型糖尿病での申請となっています。
→2020年6月29日に製造販売承認されました。

2型糖尿病の内服薬では新しい作用機序となり、注目が大きい薬剤となっています。

リベルザス錠の作用機序調剤、服薬指導のポイントをまとめました。

GLP-1とは?

GLP-1は小腸下部より分泌される消化管ホルモンで、血糖値の上昇に応じて膵臓β細胞からインスリン分泌を促進させたり、α細胞からグルカゴンの分泌を抑制し血糖値を低下させます

しかし、GLP-1はDPP4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)にって速やかに不活性化されてしまいます。

そこでDPP4によって不活性化されないようにアナログ化されたのがGLP-1アナログ製剤です。

アナログとは「類似体」「似せたもの」という意味があります。

GLP-1アナログの主な働きは下記の4つです。

  • 血糖値の上昇に応じて膵β細胞からインスリン分泌を促す
  • 膵α細胞からグルカゴン分泌を抑制
  • 胃内容物排出遅延作用
  • 満腹感の促進と食事摂取の抑制

インスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制することで血糖値を下げるだけでなく、
胃の運動を抑え食欲を低下させることによる体重減少も期待ができるのが特徴です。

既存の注射薬から経口薬への切り替えが期待

GLP-1アナログはタンパク分解酵素により分解されやすく、分子量も大きいことか経口での吸収が難しく、2019年で日本国内では皮下注製剤のみしか存在していません。

GLP-1アナログの注射薬はこちらにまとめています。

GLP-1アナログ一覧・作用機序・服薬指導のポイント

一方で、経口GLPー1アナログであるセマグルチドはサルカプロザートナトリウムという吸収促進剤を含ませ、バイオアベイラビリティを高めることで経口投与での効果が期待されるのです。

投与回数は1日1回

既存の注射薬の場合、身体的負担や、持ち運びにも苦労することから、経口タイプのGLP-1アナログが承認されると、注射タイプからの切り替えが増えてくることが予想されます。

また同じインクレチン関連薬であるDPP4阻害薬からの切り替えが増える可能性もありますね。

調剤時・服薬指導のポイント

  • 3mg、7mg、14mgの規格があり。
  • 1回7mgが維持用量
  • 1日1回3mgから開始し、4週間以上投与した後、1日1回7mgに増量。
    胃腸負担を軽減するため少量からのスタート
  • 1日1回7mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には1日1回14mgに増量可能
  • 1日のうちの最初の食事又は飲水の前に服用
  • 120ml以下の水で服用
  • 同時に多くの水を飲みすぎるとAUC・Cmaxも低下するので注意
  • 服用後30分は絶食する。他の薬剤を服用する場合も30分は間隔あける
  • 14mg投与の場合、1回7mg2錠での服用は吸収に影響がでる可能性があるため避ける
  • 服用を忘れた場合はその日に服用せず翌日服用
  • DPP-4阻害薬とは作用点が同じのため併用の臨床試験はしておらず安全性・有効性は確認されていない
    →DPP4阻害薬との併用は査定の対象となる可能性もあり
  • 胃で吸収されるため胃を摘出した患者では有効性が減弱する可能性あり
  • 吸湿性が強いため一包化不可
  • 激しい腹痛・嘔吐など急性膵炎が疑われる場合はすぐに医師へ連絡を
  • 2ヶ月以内に妊娠を希望する方へは使用しない

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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