インスリン製剤と院外処方での注入器加算(プレフィルド・カートリッジ・バイアル)

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

インスリン製剤の院外処方せんを受けるとき、発行元の医療機関から

「どのインスリン製剤で注入器加算がとれますか?」
注入器用注射針加算の算定は院内処方時だけですか?」

と問い合わせがあった時のために、インスリン製剤の種類と処方元の医療機関における注入器加算注入器用注射針加算の算定の可否を解説していきます。

新規開業時や、院内処方から院外処方に切り替わったクリニックの事務さんが困惑しやすいのがインスリン製剤の加算関連ですので、病院薬剤師だけでなく薬局薬剤師も知っておくと何かと役立つことは間違いないでしょう。

院外処方時に注入器加算を算定できるのはカートリッジ製剤のみ

インスリン製剤の剤形は大きく下記の3つのタイプに分かれます。

  • カートリッジ交換型製剤
  • プレフィルド製剤キット製剤
  • バイアル製剤

院外処方せん発行の医療機関が注入器加算を算定できるのは「カートリッジ交換型製剤」を処方箋にて発行し、注入器を院内で処方した時のみとなります。

インスリン製剤は50種類近く存在しますので一見ややこしく感じますが、上記の3つの剤形のうち、どれに該当するかを把握すればいいだけですので実はとてもシンプルなのです。

カートリッジ製剤

カートリッジ製剤は、ペンフィルカートの名称がついたもので各メーカー専用の注入器を使用します。

メーカー 専用注入器
ノボ ノボペン
ノボペンエコー
リリー ヒューマペンラグジュラ
ヒューマペンラグジュラHD
サノフィ イタンゴ

これらの注入器は特定保険医療材料ではないため調剤薬局での保険請求ができません。

そのため院外処方、院内処方に関わらず、処方元の医療機関が注入器加算を算定して、院内で注入器をお渡しすることとなります。

注入器には注射針はついていませんので、注射針が必要となります。(下記の注射針参照)

プレフィルド製剤(キット製剤)

プレフィルド製剤はキット製剤ともいわれインスリン薬液と注入器が一体化したディスポーザブル(使い捨て)のインスリン製剤です。

メーカー名 プレフィルド製剤の名称
ノボ フレックスペン
フレックスタッチ
イノレット
リリー ミリオペン
サノフィ ソロスター
富士フイルム キット

プレフィルド製剤には注入器がもともとついていることから、院内処方でも院外処方でも医療機関側は注入器加算を算定できません。

プレフィルド製剤は注射針はついていないので、注射針が必要となります。(下記の注射針参照)

バイアル製剤

バイアル製剤はインスリン専用のディスポシリンジで吸引して皮下注or静脈注(一部)で使用します。

院内でバイアル製剤とディスポシリンジを処方する場合は注入器加算が算定できますが、院外処方の場合は保険薬局側がディスポシリンジの材料価格を保険請求します。

ディスポシリンジは特定保険医療材料のため調剤薬局での保険請求が可能となります。

ディスポシリンジ自体に針がついていますので注射針は必要ありません。

インスリン製剤と注射針

カートリッジ製剤とキット製剤ではペン型注入器用の注射針(JIS A型)が必要となります。

名称 規格 メーカー
ペンニードル 32Gテーパー
プラス32G
30G
ノボノルディスク
BDマイクロファインプラス 32G
31G
ベクトン・ディッキンソン
ナノパスニードルII 34G テルモ

上記の注射針は特定保険医療材料のため調剤薬局での保険請求が可能となります。

G(ゲージ)の数字が大きくなるほど、針が細くなります。

院内処方・院外処方時の注入器加算・注射針加算のまとめ

院外処方せんを発行時に病院で注入器加算を算定できるのカートリッジ製剤の処方せん発行時に、院内で専用の注入器を処方したときのみとなります。

注入器用注射針加算は院内処方で注射針を処方した時のみ算定ができます。

院内処方時の病院側の加算

処方内容 注入器加算 注入器用
注射針加算
カートリッジ製剤

専用注入器

注射針
算定可能 算定可能
キット製剤

注射針
× 算定可能
バイアル製剤

ディスポシリンジ
算定可能 ×

 

院外処方時の病院側の加算

処方内容 注入器加算 注入器用
注射針加算
院内処方
インスリンペン型注入器

処方箋
カートリッジ製剤

注射針
算定可能 ×
処方箋
キット製剤

注射針
× ×
処方箋
バイアル製剤

ディスポシリンジ
× × 

注射針、ディスポシリンジは特定保険医療材料にため、保険調剤薬局にて材料価格を保険請求可能となります。

カートリッジやキットを院外処方とし、針を院内でお渡しする場合は、注射針加算が算定可能となります。

インスリン製剤一覧

カートリッジ交換型製剤一覧

超速効型
ノボラピッド注ペンフィル
ヒューマログ注カート
アピドラ注カート

速効型
ヒューマリンR注カート

混合型
ノボラピッド30ミックス注ペンフィル
ヒューマログミックス25注カート
ヒューマログミックス50注カート
ヒューマリン3/7注カート

中間型
ヒューマログN注カート
ヒューマリンN注カート

持効型
ランタス注カート
レベミル注ペンフィル
トレシーバ注ペンフィル
インスリングラルギンBS注カート「リリー」

プレフィルド製剤(キッド製剤)一覧

超速効型
ノボラピッド注フレックスペン
ノボラピッド注イノレット
ノボラピッド注フレックスタッチ
ヒューマログ注ミリオペン
アピドラ注ソロスター

速効型
ノボリンR注フレックスペン
ヒューマリンR注ミリオペン

混合型
ノボラピッド30ミックス注フレックスペン
ノボラピッド50ミックス注フレックスペン
ノボラピッド70ミックス注フレックスペン
ヒューマログミックス25注ミリオペン
ヒューマログミックス50注ミリオペン
ヒューマリン3/7注ミリオペン
ノボリン30R注フレックスペン
イノレット30R注
ライゾデグ配合注フレックスタッチ(配合溶解)

中間型
ヒューマログN注ミリオペン
ノボリンN注フレックスペン
ヒューマリンN注ミリオペン

持効型
ランタス注ソロスター
ランタスXR注ソロスター
レベミル注フレックスペン
レベミル注イノレット
トレシーバ注フレックスタッチ
インスリングラルギンBS注ミリオペン「リリー」
インスリングラルギンBS注キット「FFP」

配合剤
ゾルトファイ配合注フレックスタッチ

バイアル製剤一覧

超速効型
ノボラピッド注
ヒューマログ注
アピドラ注

速効型
ノボリンR注
ヒューマリンR注

混合型
ヒューマリン3/7注

中間型
ヒューマリンN注

持効型
ランタス注

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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