特定疾患、自立支援、生活保護など公費にはたくさんの種類があります。
薬局や病院で複数の公費を持った患者さんが来られ、どの公費を優先するのか迷われた経験がある医療スタッフさんも多いのではないでしょうか。
具体例を交えて、どの公費を優先するべきか説明します。
また、在宅医療でよく疑問に思う介護保険との併用(薬剤師居宅療養管理指導への適用)の可否を一覧表にしてまとめました。
上にあるほど優先順位の高い公費です。
感染症法までの公費は公費優先、それ以降は保険優先ですが
公費優先のものは基本的に自己負担がなく、公費単独となるためあまり気にする必要はありません。
法別番号 | 法・制度名 | 居宅療養管理指導適用可否 |
13 |
戦傷病者特別援護法
|
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14 | ||
18 | 原爆被爆者援護法 | |
29 | 感染症法 | |
30 | 心神喪失者等医療観察法 | |
10 |
感染症法
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11 | ||
21 | 自立支援医療(精神通院医療) | |
15 | 自立支援医療(更生医療) | |
16 | 自立支援医療(育成医療) | |
24 | 療養介護医療 | |
22 | 麻薬・向精神薬取締法 | |
28 | 感染症法 | |
17 | 結核児童の療養給付 | |
79 | 障害児施設医療 | |
19 | 原子爆弾被爆者援護法 | ◯ |
23 | 母子保健法 | |
52 | 児童福祉法 | |
54 | 難病法 | ◯ |
51 | 特定疾患治療研究事業 | ◯ |
38 | 肝炎治療特別推進事業に係る医療の給付 | |
53 | 児童福祉法 | |
66 | 石綿健康被害救済法 | ◯ |
62 | 特定B型肝炎ウイルス感染者特別措置法 | |
25 | 中国在留邦人等支援法 | ◯ |
12 | 生活保護法 | ◯ |
医療費総額100,000円、自立支援医療費70,000円、その他の医療費30,000円の場合
①自立支援医療
自立支援医療費70,000-自己負担0=70,000円を請求
②生活保護
100,000-70,000=30,000円を請求。
生活保護世帯は自立支援の自己負担が0円のため
自立支援対象部分は全額自立支援単独、その他の医療費の部分は生活保護単独です。
介護医療費総額10,000円の場合
①介護保険
10,000*0.9=9,000円を請求
②生活保護
10,000-9,000=1,000円を請求します。
介護保険併用の場合は介護保険が優先されるため9割の9,000円を介護保険、
残り1割の1,000円を生活保護に請求します。
介護医療費10,000円、介護保険(3割負担)難病(2割負担)上限未達の場合
①介護保険
10,000*0.7=7,000円を請求
②難病公費自己負担
10,000*0.2=2,000円を自己負担として請求
③難病公費
10,000-7,000-2,000=1,000円を請求
介護サービスの総額が10,000円の場合、介護保険3割の自己負担、難病法2割の自己負担のため請求は介護保険に7割、難病法公費に1割、残りの2割が自己負担です。
介護保険(3割負担)難病(2割負担)自己負担上限残り300円の場合
①介護保険
10,000*0.7=7,000円を請求
②難病公費自己負担
10,000*0.2=2,000円が自己負担となりますが300円で上限となるため300円が自己負担となります。
③難病公費
10,000-7,000-300=2,700円を請求
負担割合は先ほどと同じのため
介護サービスの総額が10,000円の場合、介護保険3割の自己負担、難病法2割の自己負担のため請求は介護保険に7割、難病法公費に1割、残りの2割が自己負担です。
ただし、今回は難病法公費の自己負担上限が残り300円のため、300円を超えた分1,700円も難病法公費に請求します。
全額公費適用の場合
医療費総額500,000円、高額療養費所得区分ウ、難病公費(2割負担)上限残り5000円の場合です。
①医療保険
500,000*0.7=350,000円を医療保険に請求
②高額療養は医療保険の制度のため難病公費よりも先に計算されます。
80,100+(500,000–267,000)*0.01=82,470が自己負担ですが難病公費の残りが5,000円のため5,000円が自己負担
③難病公費。
82,470-5,000=77,470円が難病公費への請求となります。
通常の医療保険のみでは500,000*0.3の150,000円が自己負担ですが、
区分ウの場合:80,100+(総医療費–267,000)*0.01が高額療養費の自己負担額ですので
500,000円を当てはめると82,470円の自己負担となり、
150,000-82470=67,530円は高額療養費制度による現物給付となります。
上記の場合は、難病公費の上限が5,000円のため自己負担は5,000円。
残りの82,470-5000=77,470円が難病公費への請求です。
一部公費適用外の場合
医療費総額500,000円、高額療養費所得区分ウ、難病公費上限残り5000円
難病公費適用450,000円、公費外50,000円の場合です。
Ⅰ.難病公費適用分
Ⅱ.難病公費外分
Ⅰ.①公費適用医療保険
450,000*0.7=315,000円を請求
Ⅰ.②高額療養は医療保険の制度のため難病公費よりも先に計算されます。
80,100+(450,000–267,000)*0.01=81,930が自己負担ですが難病公費の残りが5,000円のため5,000円が自己負担
Ⅰ.③難病公費
450,000-315,000-(81,930-5,000)=76,930円を請求します。
Ⅱ.①公費外医療保険
50,000*0.7=35,000円を請求
Ⅱ.②公費外自己負担
50,000*0.3=15,000円
難病公費分に関しては上記と同様に計算をして医療保険315000円、高額療養費53070円、難病法76930円、自己負担5000円。
難病公費外の分は50000円*0.7=35000円が医療保険、残りの15000円が自己負担です。
そのため、この場合は5000円+15000円=20000円が自己負担となります。
高額療養費は公費適用分と公費外の分を別々に計算する必要があります。
ただし公費内外の合計自己負担額が高額療養費制度の対象額となる場合は合算して計算することになるので注意しましょう。
※各自治体の福祉医療制度(子ども医療、ひとり親など)は自己負担分が軽減されます。
公費には多くの種類があります。
普段は処方箋の記載通りレセコンに入力すれば正しい金額を請求できるため、意識をする必要はないかもしれません。
それでも患者さんから尋ねられた時に金額の根拠を説明できるように整理しておきましょう。
参考資料
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