BNP

この記事を書いた人

杉本進悟(すぎもとしんご)

Chloe Pharmacy 株式会社
高知県出身
研修認定薬剤師
AEAJアロマテラピー検定1級

こちらは薬局薬剤師、病院薬剤師に向けた教育目的の記事となっています。

定義

Brain Natriuretic Peptide(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の略。主に心室で合成され、心室壁の進展や圧上昇によって分泌されるホルモンです。
心不全の診断や重症度の目安として測定されます。
preproBNPproBNPBNPという代謝経路で生成され、受容体に結合後ナトリウム利尿や血管拡張などの作用を持ちます。採血には専用のスピッツを用意して冷凍保存する必要があります。

基準値の目安

日本心不全学会によるステートメントでは下記のように記載されています

●正常値は一般に普及している18.4pg/mlを用いました。この値より低い場合には、潜在的な心不全の可能性は極めて低いと判断されます。
●血中BNP値が18.4-40pg/mlの場合は、心不全の危険因子を有している症例でも、直ちに治療が必要となる心不全の可能性は低いと判断されます。ただし、BNPだけでは心不全の程度を過小評価してしまう場合(収縮性心膜炎、僧帽弁狭窄症、発作的に生じる不整脈、一部の虚血性心疾患、高度肥満などを伴う心不全)もあるので、症状や症候を十分に加味して判断して下さい。
●40-100pg/mlの場合には、軽度の心不全の可能性があります。危険要因が多い症例や心不全を発症する基礎疾患を持っている症例では、胸部X線、心電図、心エコー図検査の実施をお勧めします。ただ、この範囲では、重症心不全である可能性は低く、BNP上昇の原因がある程度特定できれば、そのまま経過観察することも可能でしょう。
●100-200pg/mlの場合は、治療対象となる心不全である可能性があります。心エコー図検査を含む検査を早期に実施し、原因検索をお願いします。もし、心不全を疑う所見が得られ、対応が難しいようであれば専門医にご紹介下さい。
●200pg/ml以上の場合は、治療対象となる心不全である可能性が高いと思われます。原因検索に引き続き、症状を伴う場合は心不全治療を開始して下さい。更なる診療が必要な場合には専門医での対応を考慮して下さい。

BNPとNT-proBNPの比較

BNPは生体内で受容体結合や代謝、腎排泄されるのに対してNT-proBNPほぼ腎臓排泄のため半減期はBNP20分、NT-proBNP90〜120分と差があります。

またNT-proBNPは安定性が高いため血清採血での測定が可能ですが、BNPは血漿採血が必要となります。

感度、特異度に差はないとされていますが、NT-proBNPはほとんどが腎排泄されるため腎機能低下例や透析患者などでは大幅に上昇することがあり注意が必要です。

  BNP NT-proBNP
分子量 3470 8460
半減期 20分 90〜120分
代謝経路 ネプリライシンやDPP4などにより分解 腎臓から排泄 ほとんどが腎臓から排泄
生理活性 利尿作用、血管拡張作用など なし
採血スピッツ 血漿 血漿・血清

上昇の原因

心不全、心筋梗塞、不整脈、高血圧症のほか腎機能低下などでも上昇するといわれています。

上昇の原因となる薬剤

DPP-4やネプリライシンにより分解されるためDPP4阻害薬ネプリライシン阻害薬を服用中の患者ではBNPが上昇することがあります。

感度・特異度

100pg/mL以上で感度90%、特異度76%、精度83%、診断正確度83.4%、50pg/mL未満で陰性適中率96%だったと報告があります。
これは呼吸困難で救急受診、BNP測定を受けた1586人に対する前向き研究です。対象者の構成は平均年齢64歳、男性883人、女性703人。人種は白人773人、黒人715人、その他98人。診断基準にはフラミンガム基準とNHANES基準が使用されています。2)

参考文献
1)日本心不全学会急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
2)N Engl J Med 2002;347(3):161-7. 

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