調剤薬局でも保険証の提示を求める法的根拠を解説

この記事を書いた人

杉本進悟(すぎもとしんご)

Chloe Pharmacy 株式会社
高知県出身
研修認定薬剤師
AEAJアロマテラピー検定1級

2022年4月
健康保険法改正に伴い一部修正しました。

 

「保険証を提示したくない」
「処方箋に書いているからそれをみればいいだろ」

 病院で待たされていらいらした患者さんから心無い言葉を浴びせられて悲しい思いをしたことがある方も多いかと思います。

 保険証提示に法的な根拠はあるのでしょうか? 

 今回は法的な根拠をお示しするとともに保険証の確認を怠ったために発生したトラブルについてもお伝えします。

薬局が保険証提示を求める法的根拠

そもそもなぜ保険証の提示を求めるのでしょうか?

  • 会社から言われているから。
  • 病院の記載番号が間違えているかもしれないから。

いろいろ理由はあるかと思いますが、法的な根拠は健康保険法の薬担規則第三条に記載があります。

保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(通称:薬担規則)

第三条 保険薬局は、被保険者及び被保険者であつた者並びにこれらの者の被扶養者である患者(以下単に「患者」という。)から療養の給付を受けることを求められた場合には、その者の提出する処方箋が健康保険法(大正十一年法律第七十号。以下「法」という。)第六十三条第三項各号に掲げる病院又は診療所において健康保険の診療に従事している医師又は歯科医師(以下「保険医等」という。)が交付した処方箋であること及びその処方箋、法第三条第十三項に規定する電子資格確認又は患者の提出する被保険者証によつて療養の給付を受ける資格があることを確認しなければならない

保険調剤は保険薬局と保険者(国保、けんぽ組合)などとの契約に基づく行為になりますので保険を使用して調剤を行うためには被保険者証の確認を行う必要があります。

患者さんに保険証提示を求める法的根拠

提示を求める根拠も示しておきます。

健康保険法施行規則

第五十三条 法第六十三条第三項の厚生労働省令で定める方法は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるもの(注略)を提出する方法とする。
一 保険医療機関等から療養を受けようとする場合又は指定訪問看護事業者から指定訪問看護(法第八十八条第一項に規定する指定訪問看護をいう。以下同じ。)を受けようとする場合 被保険者証
二 保険薬局等から療養を受けようとする場合 被保険者証又は処方せん

以前は”被保険者証を提出しなければならない”とありましたが、法改正に伴い”被保険者証又は処方せん”と文言が改められました。
ただし、処方せん上の保険証番号に誤りがあったとしても医療機関に対して健康保険負担分を請求できるわけではないので、なるべくは保険証を確認するべきだと考えます。

保険証の確認を怠ったために発生したトラブル事例

つぎに保険証の確認を怠ったために発生したトラブル事例をご紹介します。

名前、生年月日、番号、被保険者・被扶養者の入力を医療機関が間違えている

一番オーソドックスなものは処方箋発行元での記載間違いでしょう。
特に番号や扶養かどうかは保険証を見ないと確認できません。

保険証の期限が切れている

次に多いのが「保険証の期限切れ」だと思います。
期限内だけど本当は他の保険証を持っている場合や転職などで資格喪失している場合もこれにあたります。  

病院受診時は期限内だけど薬局に持ってきた時には期限が切れているというケースも稀にありますので、必ず期限もセットで確認しましょう。

公費などでよく問題になるのですが、あくまでも調剤をするときに期限内でないと使用できません。  

また資格喪失後の受診は返戻の対象となってしまいますが、確認した保険証が期限内の場合は堂々と返戻を拒否することができます。

必ず確認するようにしましょう。

特定の都道府県・市区町村で受けなければ適用とならない公費  

ひとり親家庭への助成や自立支援など特定の医療機関や地域でしか適用とならない公費があります。
必ず番号、期限とともにそもそも適用可能かどうかに関しても確認するようにしましょう

最後に

 

  • 保険証があればお金を借りられる。
  • 保険証には会社の名前が書かれている。
  • さっきも出したのにめんどくさい。

などいろいろな理由から保険証の提示に抵抗感を持つ方は多くいらっしゃいます。

きちんと理由を聞き取りして納得していただけるようにしましょう。  

オンライン資格確認も活用して無用なトラブルを生まないように心がけましょう。

この記事を書いた人

杉本進悟(すぎもとしんご)

Chloe Pharmacy 株式会社
高知県出身
研修認定薬剤師
AEAJアロマテラピー検定1級

調剤薬局での外来業務と往診同行にて医師と一緒に処方検討をすることを主に行っています。
日々の業務の中で気になったことや他の薬剤師さんにも役立ちそうだと思ったことをわかりやすく伝えるよう心がけています。

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