こんにちは。
メディカルライターのリナです。
ここ数年、夜尿症のお子さんの処方を見かけるケースが多くなりました。
しっかりとしたデータはないようですが、「スマートフォンやゲームによる影響」が指摘され始めているようです。
その数は意外と多く、5〜6歳で約15%、小学校低学年で約8%、小学校高学年で5%とされおり、小学校高学年であれば、クラスに2〜4人はいる計算になります。
夜尿症とは「5歳以降で1ヵ月に1回以上の夜尿が3ヵ月以上続く場合」とガイドラインで定められています。
もちろん、他の疾患も疑われるため、尿崩症などの内分泌疾患や精神疾患、尿道狭窄などの下部尿路疾患、AD/HDとの鑑別は大切です。
そのため、最初は風邪などでクリニックを受診したついでに「そう言えば、おねしょがなかなか治らないんです・・・」と先生に相談した結果、地域の大きめの病院に紹介、鑑別診断をした上で治療がスタートする、といったパターンが多いようです。
夜尿症は大きく3つに分類されます。
病型診断のためには、以下のような尿量の測定を行い、夜間尿量に応じて判別します。
寝る前にトイレに行き、膀胱を空(から)にする。
紙おむつ(または紙パンツや尿パット)の重さを測定してからおむつをして寝る。
朝起きた時に濡れた紙おむつの重さを測定。朝一番にトイレに行き、尿量を計量カップで測定する。
※夜間尿量=夜尿量(寝ている間の尿量。おむつの増えた分の重さです)+起床時尿量
夜間尿量は正常であれば小学1〜3年生は200cc以下、小学4年生以上は250cc以下になるため、この量より多い場合は多尿型と考えられます。
先に述べた、スマートフォンやゲームによる夜尿症は、この多尿型に当てはまります。結論から述べれば、強い光を発する機械を寝る前ギリギリまで操作することにより、脳が昼と夜を認識できなくなり、夜間の抗利尿ホルモンの分泌が悪くなるのが原因です。
私の働く薬局に来る患者さんで、前述した多尿型のケースが強く影響している6歳のお子さんがいました。
待合室でもゲーム機を手放さず、投薬中もおばあちゃんが薬をもらっている間は黙々とゲームをしています。
聞けば、両親は共働きで、日中はおばあちゃんが面倒を見ているようなのですが、家でも寝る直前までゲームをし、どうしてもやらなくてはいけない宿題があったりして、ゲーム機を取り上げたりすれば癇癪を起こして、手がつけられなくなってしまう、ゲーム機がないと常にイライラしている、とのことでした。
一般的に多尿型の場合、薬物治療は大きく2つに分類されます。
抗利尿ホルモン製剤(デスモプレシン)
→デスモプレシン製剤はスプレー(デスモプレシンスプレー)と舌下タイプの口腔崩壊錠(ミニリンメルトOD錠)があります。
対象となる今回のお子さんが、過去にアデノイド増殖症(鼻の一番奥の突き当たりにあるリンパ組織の塊が大きくなることで、鼻や耳などの様々な症状引き起こす)を手術した後も、副鼻腔炎や蓄膿症を繰り返すような体質だったため、鼻粘膜状態により薬剤の吸収のばらつきを防ぐ目的もあり、舌下タイプの口腔崩壊錠(ミニリンメルトOD錠)を選択。
ミニリンメルトOD錠は口腔崩壊錠ですが口腔粘膜からも吸収されますので舌の下で溶かして服用します。
三環系抗うつ剤(アミトリプチリン・イミプラミン・クロミプラミン)
→抗利尿ホルモン製剤で効果が見られなければ追加されるようですが、中止後の再発が多かったり、副作用も大きいため、今回は使用せず。
となります。
加えて、漢方薬の小建中湯が処方されました。
(小建中湯は、虚弱体質、副鼻腔炎をもつ体質の改善、夜泣きなどにも使用されるように鎮静効果もあります)
結果、症状は改善され、ほぼ毎日あったおねしょも月に2、3回程度に減り、イライラする性格も以前と比べ、穏やかになったそうです。
またミニリンメルトも減量をすることができました。まだ、完璧ではないですが、おねしょ卒業も間近です。
ちなみに、膀胱型の治療薬としては、抗コリン作用に基づいて、副交感神経の活動を抑えることにより、膀胱収縮抑制作用・最大膀胱容量の増大を期待してオキシブチニン(商品名:ポラキス)やプロピベリン(商品名:バップフォー)、コハク酸ソリフェナシン(商品名:ベシケア)などが使用されるようです。(抗コリン薬は夜尿症の適応は無)
この場合も効果が不十分であれば、三環系抗うつ剤の追加を考慮します。
それに加え、アラーム療法といった、下着に水分に反応して音がなる機械を入れる方法がとられることがあります。
治療の3原則と言われるのは「焦らず・怒らず・起こさない」。
医師の判断のもと、アラーム療法をとる以外、特に起こさないことが大切で、夜間の中途覚醒は睡眠リズムを狂わせ、抗利尿ホルモンの分泌に悪影響を及ぼすだけでなく、不眠症に繋がる原因を作ってしまいます。
投薬時の生活指導のポイントとしては
今回は子供の夜尿症について書きましたが、大人の夜尿症も増えているようです。
そういった場合は、悩み続けず、医療機関を受診するべきです。
今回もお子さんの夜尿症に悩むご両親、お子さん本人の話をしっかり聞き、病態や生活を聞き取ったうえで、服薬指導+αで指導する助けになればいいな、と思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献:「小児外来診療での薬の考え方、使い方」 中外医学社 編者:市川 光太郎
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」のFacebookページに「いいね!」をすると、薬剤師が現場で活躍するために役立つ情報を受け取ることができます。ぜひ「いいね!」をよろしくお願いします。
お客様により安全にご利用いただけるように、SSLでの暗号化通信で秘匿性を高めています。
コメント欄ご利用についてのお願い
※コメントはサイト管理者の承認後に公開されます