こんにちは。
メディカルライターのリナです。
ドラッグストアで働いていると、駆け込み寺のようにお客さんが色々なご相談に来られます。
風邪はもちろん、蜂に刺された、怪我をした、湿疹が出た等々。
病院が休診であったり、忙しくて受診する時間の取れない会社員の方にとって、ドラッグストアで働く薬剤師は最も身近な医療従事者です。
今回は改めてそういった「薬剤師の社会的な位置づけ」を意識した事例を紹介させて頂きます。
とある大型連休の真ん中。
開店準備中にお客さんから薬剤師出勤の確認をする電話がかかってきて、開店と同時に足を引きずった男性が、入り口からまっすぐ調剤室へと入ってきました。
来店の理由は痛風発作。
ロキソニンを求めて、朝から近くのドラッグストアに薬剤師が出勤しているか手当たり次第電話をかけていた、とのこと。
痛風発作が疑われる場合のドラッグストアや薬局での基本対応は病院への受診勧告です。
どうしても受診ができない場合や、病院があいていない場合は市販の鎮痛剤で自己責任で臨時対応するケースもありますが、痛風発作を悪化させる鎮痛薬がありますので頭に入れておく必要があります。
単純に効かない、ではなく、使用すると痛風発作を悪化させるもの、
それはアスピリン(アセチルサリチル酸)です。
理由はアスピリンが常用量投与で血清尿酸値を上昇させ、大量投与では低下させるためです。
痛風発作中にフェブキソスタット(商品名:フェブリク錠)、ベンズブロマロン(商品名:ユリノーム錠)などを使用しないように、血清尿酸値を発作中に急激に下げてしまうと、関節液中の尿酸の濃度も下がるため、関節内面に付着している尿酸塩が剥がれ落ち、激しい炎症が起きます。
上記の理由から、血清尿酸値を低下させてしまうアスピリンの入った市販薬は、痛風発作では避けなければいけません。
アスピリンの入った主な市販薬は下記のとおりです。
痛風発作を悪化させないNSAIDsはロキソプロフェンやイブプロフェンです。
商品名 (メーカー) |
主成分 |
---|---|
ロキソニンSシリーズ (第一三共ヘルスケア) |
ロキソプロフェン |
バファリンEX (ライオン) |
ロキソプロフェン |
バファリンプレミアム (ライオン) |
イブプロフェン |
イブA錠 (エスエス製薬) |
イブプロフェン |
ロキソプロフェンが主成分のものは、薬剤師がいなければ販売はできません(2017年時点)。
両者を比べれば、ロキソプロフェンの方が抗炎症作用・効果が出るまでの時間が優れています。
(Tmax ロキソプロフェン0.79hr(約50分) イブプロフェン2.1hr)
保険適応の処方薬では、痛風発作に適応のあるNSAIDsを短期間に通常量より多めに投与するパルス療法で対処されるケースがあります。
痛風発作に効能・効果があるNSAIDsです。
今回の事例のように、通院もしておらず病院が休みで痛風発作が起きてしまった時の対処法について記述します。
高尿酸血症は放置すると腎障害(痛風腎)、尿路結石の発症、高脂血症、耐糖能異常(糖尿病予備軍)、肥満を合併していれば、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)や、脳血管障害(脳出血など)の発症率も高くしていると考えられています。
発作が治まってしまうと通院そのものを中断してしまう患者さんがいらっしゃいますが、二度と同じような痛みを繰り返さないためにも継続した通院が必要です。
尿酸値が高い場合、プリン体の制限をするのは常識となっています。
プリン体とはそもそも、DNA・RNAの構成成分であり、細胞が分解されるときに生じてきます。
プリン体が代謝されると最終的に尿酸になります。
そのためレバーや魚卵などの細胞数の多い食べ物、エビやアジの干物など、乾燥により細胞が凝集されている食べ物にプリン体は多く含まれています。
また、健康にいいから、と摂っている核酸(DNA・RNA)含有サプリメントは尿酸値コントロール中の方は避けた方がいいでしょう。
では積極的に摂りたい食品はというと、尿をアルカリ化させる海藻や、豆腐や根菜・芋類などの野菜類、ビタミンCを多く含む果物。(ただし果物は糖分も多いので逆効果になることがあるので注意!)
尿をアルカリ化にすることで尿酸が尿中に溶けやすくなり、体外に排出しやすくなるのです。
水分も1日2L近くを目安に十分に摂取することが大切です。
食事について述べましたが実際は食事から取り込まれるプリン体は全体の20%くらいと言われています。
太っている方ですと、体重を落とすだけも尿酸値は下がって来ますので、カロリーを制限して標準体重を目指すようにしましょう。
激しい運動は血清尿酸値を上昇させる原因になるため、毎日続けられるような軽い運動(ウォーキングなどの有酸素運動)がオススメです。
話は戻りますが、痛風発作で来局した患者さんの去り際の一言。
「ビールがダメならチューハイならいいですかね?」
アルコールには尿酸の増加と排泄を抑制する作用もあります。また脱水を起こしやすくなり、尿酸値を上げます。
禁酒、とまではいかないので(発作中は禁酒です)、日本酒なら1日1合、ビールは500ml、ウィスキーは60ml程度に控え、週に2日以上は休肝日を作りましょう。
長くなりましたが、服薬指導の際にちょっとしたアドバイス、しっかり理論に基づいた説明で患者さんの治療意識を変える手助けになれたら、と思い少し細かく書きました。
お役に立てれば光栄です。
参考文献
レシピ ケーススタディ 高尿酸血症・痛風(南山堂)
薬剤師に必要な患者ケアの知識(じほう)
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版
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