ベタニス(ミラベグロン)の作用機序・抗コリン薬との違い・服用指導のポイント

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

過活動膀胱に処方されるアドレナリンβ3受容体作動薬ベタニス(一般名:ミラベグロン)です。

過活動膀胱の治療薬は抗コリン薬が第一選択薬となっていますが、抗コリン薬は「口渇」や「便秘」などの副作用が問題となるケースもあります。

薬局でも「口が渇く・・・」といった相談を受ける機会もあるのではないでしょうか。

従来の抗コリン薬とは異なる作用機序で効果を発揮するベタニスについて、作用機序や抗コリン薬との違い、服薬指導のポイントをまとめました。

作用機序(メカニズム)

過活動膀胱は蓄尿期の膀胱収縮が原因

通常、蓄尿期では交感神経終末より放出されたノルアドレナリン膀胱β3受容体に結合することで膀胱が弛緩しています。

そして排尿期になるとノルアドレナリンの放出が抑えられるとともに、副交感神経終末からアセチルコリンが放出されムスカリンM3受容体に結合することで膀胱が収縮します。

過活動膀胱では蓄尿期にアセチルコリンが放出され、膀胱のムスカリンM3受容体に結合することで膀胱の収縮がおきてしまい、十分な尿をためることができなくなってしまいます。

  蓄尿時の膀胱の状態
正常な場合 弛緩
過活動膀胱の場合 収縮

ベタニスはアドレナリンβ3受容体を刺激

ベタニス(ミラベグロン)はアドレナリンβ3受容体を刺激することで膀胱平滑筋を弛緩させます。

具体的なメカニズムは下記の通りです。

  1. アドレナリンβ3受容体刺激
  2. cAMP産生
  3. 細胞内Ca2+減少
  4. 膀胱平滑筋弛緩

このように過活動膀胱時に膀胱平滑筋を弛緩させることで蓄尿時の膀胱容量を増大させ、頻尿や尿意切迫感、尿失禁を改善します。

抗コリン薬(ベシケアなど)との違い

過活動膀胱の第一選択薬はベシケアなどの抗コリン薬です。

抗コリン薬もベタニス同様に膀胱を弛緩させることで過活動膀胱の症状を改善します。

しかし、膀胱を弛緩させるアプローチに違いがあります。

薬剤 作用機序
β3刺激薬
ベタニス
ベオーバ
β3受容体刺激

膀胱平滑筋を弛緩
抗コリン薬
ベシケアなど
ムスカリンM3受容体拮抗

膀胱平滑筋の収縮抑制

弛緩

ムスカリン受容体は唾液腺や腸管、毛様体筋にも存在するため、抗コリン薬では「口渇」や「便秘」「目の調節障害」などの副作用が問題となるケースがあります。

特に「口の渇き」はすべての過活動膀胱治療の抗コリン薬では高い確率で現れます。

「過活動膀胱治療」抗コリン薬一覧・作用機序・服薬指導のポイント

一方でベタニスは「口渇」や「便秘」などの副作用は少ないですが、生殖器系に悪影響を与える可能性があるため生殖可能な年齢にはできる限り投与を避けなければいけません。

【警 告】
生殖可能な年齢の患者への本剤の投与はできる限り避けること。
[動物実験(ラット)で、精嚢、前立腺及 び子宮の重量低値あるいは萎縮等の生殖器系への影響が認められ、高用量では発情休止期の延長、黄体数の減少に伴う着床数及び生存胎児数の減少が認められている。]

引用元 ベタニス 添付文書

CYP2D6を阻害・併用禁忌薬に注意

ベタニスはCYP3A4で代謝されますが、CYP2D6を阻害します。

そのためフレカイニド酢酸塩 (商品名:タンボコール)、 プロパフェノン塩酸塩 (商品名:プロノン)は併用禁忌となっています。

服薬指導のポイント

ベタニスが処方された患者さんに対して服薬指導でのポイントをピックアップします。

【特徴】

  • 膀胱を弛緩させ膀胱容量を増やす
  • 排尿期の膀胱収縮に影響を与えにくい
  • 抗コリン薬で問題となる「口渇」「便秘」などの副作用が少ない
  • CYP2D6、P-糖蛋白を阻害するため併用禁忌・併用注意薬がある
  • 中等度の肝機能障害、重度の腎機能障害患者は1回25mgから投与開始

【服用の注意】

  • 徐放性製剤のため噛んだり割ったりしない
  • 用法は1日1回食後 
    空腹時でAUC ・Cmax上昇するため必ず決められた用法で服用
  • 飲み忘れた場合は飛ばして次回より正しい用法で服用
    (主治医から指示があればそちらを優先)

以上、アドレナリンβ3刺激薬(ベタニス)についてまとめました。

「わたしは服薬指導でこんな説明している」
「こんな知識役立つんじゃない??」

などありましたらこちらよりご教授いただけると幸いです。

地域で活躍される薬局薬剤師にとって少しでもお役に立てる記事にしたいと思っています。

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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