アロマターゼ阻害薬一覧・作用機序・服薬指導のポイント

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

乳がんのホルモン療法はホルモン受容体陽性(ホルモン感受性乳癌)の患者さんが対象となります。

乳がんのホルモン療法として使用される薬剤は抗エストロゲン薬アロマターゼ阻害薬です。

閉経後乳癌に適応があるアロマターゼ阻害薬の作用機序や違い、薬局で注意するべき副作用についてまとめました。

エストロゲンの産生経路

乳がんの発生・増殖にはエストロゲンが関与しているケースがあります。

エストロゲンは閉経前は主に卵巣から産生され、閉経後は主に副腎皮質からアンドロゲン(男性ホルモン)を経て産生されます。

閉経前の主なエストロゲン産生経路

視床下部

下垂体前葉

卵巣

エストロゲン

閉経後の主なエストロゲン産生経路

視床下部

下垂体前葉

副腎皮質

アンドロゲン
▼アロマターゼ
エストロゲン

副腎から分泌されたアンドロゲン(アンドロステンジオン,テストステロン)はアロマターゼという酵素によってエストロゲン(エストロン,エストラジオール)に変換されます。

アロマターゼは脂肪組織や筋肉に分布しています。

乳がん患者さんでは腫瘍組織内や腫瘍組織周囲の脂肪細胞にアロマターゼが多く発現しており、エストロゲンの産生が乳がん細胞の増殖に関与していると考えられています。

アロマターゼ阻害薬一覧・作用機序の違い

アロマターゼ阻害薬は、副腎からのエストロゲン産生を抑制します。

副腎

アンドロゲン(男性ホルモン)
▼アロマターゼ
エストロゲン(女性ホルモン)

アンドロゲン(アンドロステンジオン,テストステロン)はアロマターゼによってエストロゲン(エストロン,エストラジオール)に変換されます。

アロマターゼ阻害薬はアロマターゼに結合し働きを阻害することでエストロゲンの産生を抑え、乳がんの増殖を抑えます。

ステロイド型・非ステロイド型アロマターゼ阻害薬一覧

アロマターゼ阻害薬は化学構造によってステロイド型と非ステロイド型に分類されます。

  商品名 一般名
ステロイド型 アロマシン エキセメスタン
非ステロイド型  アリミデックス アナストロゾール
フェマーラ  レトロゾール 

エキセメスタン(商品名:アロマシン)はアンドロゲン類似のステロイド骨格を有し、アロマターゼのアンドロゲン結合部位に結合し非可逆的にアロマターゼを阻害します。

一方でアナストロゾール(商品名:アリミデックス)、レトロゾール(商品名:フェマーラ)はアロマターゼのヘムリングという部分に結合し、可逆的にアロマターゼを阻害。

副作用・服薬指導でのチェックポイント

 

ほてり(ホットフラッシュ)

アロマターゼ阻害薬の代表的な副作用がほてりです。
顔や体がほてり、汗をかくのが特徴です。

ほてりの副作用の発現率を各インタビューフォームより抜粋します。

  • アロマシン
    16.2%(17件/105件中)
  • アリミデックス
    0.9%(31件/3536件中)
  • フェマーラ
    6.6%(19件/290件中)

ほてりは高頻度で発現するため服薬指導時には説明が必要な副作用です。

服用を続けるとほてりは軽減する傾向にあることを説明し、通気性のよい服を着て、うちわなどを携帯することを勧めるとよいかと思います。

関節痛

アロマターゼ阻害薬の代表的な副作用が関節痛です。

指の関節に痛みやこわばりを感じたり、膝・肩・ひじなどの節々の痛みを感じることがあります。

関節痛の副作用の発現率を各インタビューフォームより抜粋します。

  • アロマシン
    1.9%(2件/105件中)
  • アリミデックス
    1.1%(38件/3536件中)
  • フェマーラ
    2.8%(8件/290件中)

関節痛がひどい場合はNSAIDsやアセトアミノフェンが追加されるケースがありますので、
我慢できない場合は主治医に相談するように予め伝えておくとよいでしょう。

血中コレステロール増加

フェマーラとアリミデックスについては、血中コレステロールの増加が報告されています。

  • フェマーラ
    血中コレステロール増加 8.7%(23件/265 件中)
  • アリミデックス
    高コレステロール血症0.14%(5件/3536件中)
    高トリグリセリド血症0.03%(1件/3536件中)

食事の量は変わらないのに、LDLが上昇している場合はアロマターゼ阻害薬による副作用の可能性も考えられるでしょう。

車の運転に注意

アロマターゼ阻害薬は傾眠や無力症などが報告されていることから、「自動車の運転には注意すること」となっています。

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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