メトトレキサートとフォリアミン(葉酸)の併用理由・間隔・薬局での注意点

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

処方1
【一般名】メトトレキサートカプセル2mg  4カプセル
朝・夕食後 4日分
水曜日服用
【一般名】葉酸錠5mg 1錠
朝食後 4日分 
金曜日服用

関節リウマチ治療薬であるメトトレキサート(商品名:リウマトレックス、メトレート)には、葉酸(商品名:フォリアミン)が併用されるケースがあります。

薬局で患者さんからも、

「葉酸は何の目的の薬ですか?」
「メトトレキサートと葉酸は同時に服用したらいけない?」
「葉酸服用のタイミングは?」

と聞かれた経験のある薬剤師もいらっしゃるのではないでしょうか。

メトトレキサートが葉酸と併用される理由、併用間隔、薬局での注意点について解説していきます。

ちなみにメトトレキサートは、「MTX」と略されます。
メトトレキサート、リウマトレックスは文字数が長いので、僕は薬歴などではMTXと記載しています。

葉酸代謝拮抗薬「メトトレキサート」に葉酸が併用される理由

メトトレキサートは葉酸代謝拮抗薬ですね。

まずメトトレキサートの作用機序を考えてみたいと思います。

メトトレキサートは関節で炎症を起こし活動・増殖が活発な滑膜細胞やリンパ球の中の「葉酸の働きを抑える」ことで滑膜細胞やリンパ球の活動・増殖を抑え、炎症を抑えていく作用があります。

葉酸の働きを抑える具体的な作用機序ですが、葉酸はいくつかの酵素によって変換され活性型となりDNAの合成に関与します。

メトトレキサートは葉酸の代謝過程でジヒドロ葉酸(DHF)からテトラヒドロ葉酸(THF)に変換するジヒドロ葉酸レダクターゼを阻害することで、葉酸が活性型になるのを抑え、葉酸の働きを抑えます。

では、葉酸の働きを阻害するメトトレキサートになぜ相反する葉酸が併用されるのでしょうか。

それはメトトレキサートによる副作用を軽減・防止するためです。

具体的には、

  • 肝酵素高値(AST,ALT,ALP)
  • 消化器症状(下痢、悪心、口内炎)
  • MCV高値を伴う貧血

といった副作用を軽減・防止目的で葉酸が併用されます。

メトトレキサートは関節の炎症がある細胞内だけでなく、正常な細胞内での葉酸の働きを阻害してしまうことから、上記のような副作用が生じてしまうのです。

一般的には1週間にメトトレキサート8mgを超える場合や、8mg以下/週でも高齢者、腎臓の悪い方、複数のNSAIDsを併用中の方、体が小さい方など副作用が出やすい場合に葉酸が併用されるケースがあります。

通常の葉酸量は5mg/週で、副作用が改善されないケースなどに10mg/週が検討されるケースがあります。

メトトレキサートと葉酸の併用間隔は24時間〜48時間以内

メトトレキサートと葉酸の投与間隔が短いとメトトレキサートの効果が減弱してしまいます。

日本リウマチ学会では通常はメトトレキサートの最終服用後24時間〜48時間以内に葉酸(フォリアミン)を投与すれば治療効果に大きな差はないと考えられています。

しかし連日フォリアミンを投与する処方もまれに見ることはあります。

MTXとフォリアミン併用時の薬局での注意点

メトトレキサートと葉酸の投与は間欠投与と特殊であることから、薬局でも患者さんから質問を受けることも多いかと思います。

メトトレキサートに葉酸が併用されているケースでの薬局の服薬指導のポイントを説明します。

  • 通常の間隔はメトトレキサート最終服用後24時間〜48時間以内にフォリアミンが投与
    →メトトレキサートとフォリアミンの間隔をあける理由を伝え同時に服用しないように指導
  • フォリアミンを服用中は葉酸を多く含む食材は制限の必要なし
  • 葉酸を含むサプリメントは自己判断での使用は避けるよう注意する
  • メトトレキサート、フォリアミンを飲み忘れた際の対応を事前に医師と決めておくといい
  • メトトレキサートによる重大な副作用(高熱、咳・息苦しさ、青あざの有無)を薬局でもチェック

 

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

記事作成のサイトポリシーについてはコチラ

この投稿者の最近の記事

「伊川勇樹」のすべての投稿記事を見る>>

コメント欄ご利用についてのお願い

  • 薬剤師、薬学生、調剤事務、医師、看護師といった医療に携わる方が使用できるコメント欄となります。
  • 「薬剤師の集合知」となるサイトを目指していますので、補足・不備などございましたらお気軽に記入いただけると幸いです。
  • コメントの公開は運営者の承認制となっており「他のユーザーにとって有益な情報となる」と判断した場合にのみ行われます。
  • 記事に対する質問は内容によってお答えできないケースがございます。
  • 一般消費者からの薬学、医学に関する相談や質問は受けつけておりません。

CAPTCHA


※コメントはサイト管理者の承認後に公開されます

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」のFacebookページに「いいね!」をすると、薬剤師が現場で活躍するために役立つ情報を受け取ることができます。ぜひ「いいね!」をよろしくお願いします。

お客様により安全にご利用いただけるように、SSLでの暗号化通信で秘匿性を高めています。

ページトップに戻る