「抗リウマチ薬」生物学的製剤・bDMARDs一覧・作用機序

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

リウマトレックス(一般名:メトトレキサート)などの従来型抗リウマチ薬(csDMARDs)で関節の腫れや痛みなどの症状が改善しない場合に、生物学的製剤が使用されることがあります。

抗リウマチ薬の生物学的製剤はbDMARDs(Biological DMARDs)とも呼ばれます。

bDMARDsは作用機序で分けると大きく下記の3つに分類されます。

①TNFα阻害薬
②抗IL-6受容体抗体
CTLA4-Ig製剤(T細胞活性化調節剤)

関節リウマチの治療は大きく進歩し、薬も進化していることから「寛解」を維持させることのできる時代になっています。

私が薬学生時代には習わなかった作用機序の薬剤もどんどん上市されました。

関節リウマチは女性に多い疾患であることから薬局でも相談を受けることが多いのではないでしょうか。

生物学的製剤の一覧、作用機序、服薬指導の注意点についてまとめました。

生物学的製剤を併用される患者さんへの服薬指導に少しでも役立つ情報になると幸いです。

①TNFα阻害薬一覧・作用機序

生物学的製剤で最も多くの種類が上市されているのがTNFα阻害薬です。

TNFα阻害薬の一覧、投与方法や間隔、作用機序についてまとめました。

TNFα阻害薬・商品名・投与間隔

一般名 商品名 使用方法
投与場所
投与間隔
アダリムマブ ヒュミラ  皮下注
病院or自宅
2週間間隔
セルトリズマブ ペゴル シムジア 皮下注
病院or自宅
初回・2週後・4週後に投与

以後2〜4週間間隔 
ゴリムマブ シンポニー 皮下注
病院
4週間間隔
インフリキシマブ レミケード 点滴
病院
初回・2週後・6週後に投与
以後8週間間隔(最短は4週間)
インフリキシマブバイオシミラー  インフリキシマブBS「NK」
エタネルセプト エンブレル  皮下注
病院or自宅
週1〜2回 

 

TNFα阻害薬の作用機序

免疫機能が正常な人ではTNFα(読み方ティーエヌエフアルファ)は細菌やウイルスなどの異物から生体を防御します。

しかしTNFαが異常に増加すると関節の痛み、腫れ、変形、破壊を引き起こします。

そのためTNFαは関節リウマチの原因の一つとされています。

TNFαは関節リウマチの滑膜液に過剰発現し、TNFα受容体に結合することでシグナルを発信し関節の炎症や破壊を引き起こします。

TNFα阻害薬はTNFαと結合しTNFα受容体への結合を防ぐことでTNFαの働きを抑えます。

TNFα阻害薬の中でも細かくみると作用機序に違いがありますので、薬剤別の作用機序を簡単にまとめました。

ヒュミラ(アダリムマブ)作用機序

可溶型・膜結合型TNFαに結合し、TNFα受容体への結合を阻害。
→シグナル伝達を阻害し炎症反応を改善する。

膜結合型TNFαに結合することでTNFα分泌細胞に逆シグナルを与え、TNFα分泌抑制だけでなくTNFα分泌細胞のアポトーシスを誘導する。

シムジア(セルトリズマブ ペゴル)作用機序

可溶型・膜結合型TNFαに結合し、TNFα受容体への結合を阻害。
→シグナル伝達を阻害し炎症反応を改善する。

シンポニー(ゴリムマブ)作用機序

可溶型・膜結合型TNFαに結合し、TNFα受容体への結合を阻害。
→シグナル伝達を阻害し炎症反応を改善する。

TNFα受容体に結合しているTNFαの解離を促進させる。

レミケード(インフリキシマブ)作用機序

可溶型・膜結合型TNFαに結合し、TNFα受容体への結合を阻害。
→シグナル伝達を阻害し炎症反応を改善する。

TNFα受容体に結合しているTNFαの解離を促進させる。

エンブレル(エタネルセプト)作用機序

エタネルセプトがおとりレセプターとなりTNFαを捕捉しTNFα受容体への結合を阻害。(TNFβ中和作用もあり)
→シグナル伝達を阻害し炎症反応を改善する。

二次無効が少ないのが特徴。

②抗IL-6受容体抗体一覧・作用機序

抗IL-6受容体抗体は下記のとおりです。

抗IL-6受容体モノクローナル抗体一覧

一般名 商品名 使用方法
投与場所
間隔
トシリズマブ アクテムラ 点滴or皮下注
病院(点滴)
病院or自宅(皮下注)

4週間(点滴)
2週間(皮下注)
サリルマブ ケブザラ 皮下注
病院
2週間

 

ヒトIL-6受容体抗体(アクテムラ)作用機序

関節リウマチではIL-6(読み方:インターロイキン6)が関節液中や血液中に多く存在しています。

IL-6がIL-6受容体に結合すると関節の痛み・腫れ・破壊を引き起こします。

アクテムラ(トシリズマブ)はIL-6受容体に結合することで、IL-6がIL-6受容体に結合することを競合的に阻害します。

そのためIL-6の働きを抑えることができ、関節の痛みや腫れを和らげ、関節破壊の進行を抑えるのです。

③T細胞活性化調節薬一覧・作用機序

TNFα阻害薬の処方頻度が高いですが、心臓や呼吸器の合併症がある場合などにT細胞活性化シグナル阻害薬が処方されるケースがあります。

T細胞選択的共刺激調節剤一覧・商品名

一般名 商品名 使用方法
投与場所
間隔
アバタセプト オレンシア

点滴or皮下注
病院(点滴)
病院or自宅(皮下注)
点滴:初回・2週・4週後に投与
以後は4週間間隔

皮下注: 週1回

 

T細胞選択的共刺激調節剤(オレンシア)作用機序

関節リウマチでは抗原提示細胞T細胞に誤った情報を流しマクロファージに攻撃命令を出すことでIL-6やTNFαなどのサイトカインを過剰に作り出してしまいます。

オレンシア(アバタセプト)は抗原提示細胞に作用しT細胞へ間違った情報伝達をやめさせることでT細胞の活性化を抑制します。

そのためIL-2、IL-6、TNFα、INF-γといったサイトカインの過剰な産生を抑え関節の炎症・痛み・変形を抑えます。

薬局での服薬指導について・感染症の予防

皮下注を自宅で使用することを選ばれた場合は院外処方せんを薬局でも受け付けることがあります。

また医療機関で投与されている場合でも併用薬があるケースが多いため、薬局で生物学的製剤を併用される患者さんと接する機会があるのではないでしょうか。

生物学的製剤を使用中の患者さんで特に注意しなければいけないことは「感染症」です。

生物学的製剤はTNFαやIL-6などのサイトカインを抑えますので、細菌やウイルスへの防御作用が弱くなってしまうのは仕方がありません。

感染症の予防について薬局で指導する内容をピックアップします。

  • 風邪が流行時はマスクを着用
  • うがい・手洗いを必ず
  • 食事・睡眠を十分に摂る
  • お酒・タバコは控える
  • 部屋を乾燥させない
  • 傷ができたら消毒をして絆創膏を貼る

主治医や看護師さんから「感染症の予防方法」について指導をされているケースもありますので、薬局では必要に応じて指導する必要があります。

関節リウマチ治療は特に主治医と患者さんとの関係が大事になってきますので、必要以上に注意喚起をして不安を与えないように薬剤師がうまくフォローしていかなければいけません。

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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