その薬、処方カスケードになってませんか?~ポリファーマシー問題~

この記事を書いた人

杉本進悟(すぎもとしんご)

Chloe Pharmacy 株式会社
高知県出身
研修認定薬剤師
AEAJアロマテラピー検定1級

今回は続・ポリファーマシ―問題として、処方カスケードについて取り上げようと思います。

処方カスケードとは

処方カスケードとは「薬の副作用や副次的効果を治療するために新たな処方が繰り返されて薬の数がだんだんと増えてしまうこと」をいいます。

カスケードという言葉自体あまりなじみがないかもしれませんが、もともとは小さな滝が連なっている様を指すようで、医療用語としてはアラキドン酸の一連の代謝を指してアラキドン酸カスケードなんて言葉もありますね。

処方カスケードの例  

よく問題となるのは本来の使用用途からは想像しづらい副作用の場合です。  

例としては

H2ブロッカーによるせん妄
ACE阻害薬による空咳
シロスタゾールによる頻脈
NSAIDsによる高血圧

などです。  

こういった副作用を抑えるためにほかの薬、例えばH2ブロッカーせん妄による暴言・暴力などを抑えるためにリスペリドンが処方され、それによる便秘のためにセンノシドが処方され、センノシドによりカリウムが低下してアスパラカリウムなどが追加される。という風に最初の副作用に気づけなかったために次々に薬剤数が増えてしまうということがあります。

処方カスケードにどのように介入するか

 
上記のケースのように、

H2ブロッカー→リスペリドン→センノシド→カリウム剤

となった場合、まず介入するポイント、順番、手順を整理する必要がありますね。  

もちろん基礎疾患として胃炎?のフォローは続ける必要があります。最終目標としては胃薬1種類もしくは何もなしになればいいなーと思うのですが、いきなり全部を削除したり変更することはできませんよね。

そこで私ならどういう順番で提案するかをお伝えしたいとおもいます。

1.H2ブロッカー中止  
フォローする必要があると言っておいていきなり中止ですが、長期間使っているだけで実は始まりはちょっとした胃炎、胃潰瘍などの場合も多いのでまずは中止を試みます。中止して、何もなければよいのですが、不具合があるようなら胃粘膜保護薬やPPIなどを提案します。

2.リスペリドンの漸減もしくは頓服への変更  
高齢者の場合、H2ブロッカーが原因のうちの一つだとしても中断したらすぐに良くなるということはあまりないように感じます。まずは用量を減らし、頓服へ変更したのちに中断という流れがおすすめです。

3.センノシドの中止または変更  
こちらも原因薬剤のリスぺリドンを中止できたとしても、もともと腹圧が弱くなっているなどの理由から便秘しやすいので中止を試行して、難しそうなら変更をするという手順でよいかと思います。  

もしくはまず変更してコントロールできている状態で減量していくのもよいと思います。変更候補としてはピコスルファート、酸化マグネシウム、ルビプロストン(商品名:アミティーザ)あたりがあげられます。  

ルビプロストンは効果発現に少し時間がかかかるのと服用初期に吐き気がでやすいので水分摂取を促せる患者さんでないと難しいかもしれません。いったん安定すると使用感は良好に感じます。

4.カリウム剤の中止  
こちらは1~3と並行して採血をしながら調節する必要があると思いますが、特にセンノシドのようにカリウムを下げてしまう薬剤を変更した際には注意して経過をみる必要があると思います。

最後に

処方せんを見たときにここをこうしたらいいのではないかと感じることはよくあると思います。特に外来では医師や患者さんとの関係によっては提案しづらいことも多いと思います。  

しかし、チャンスがあるようなら積極的に介入を試みましょう!

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杉本進悟(すぎもとしんご)

Chloe Pharmacy 株式会社
高知県出身
研修認定薬剤師
AEAJアロマテラピー検定1級

調剤薬局での外来業務と往診同行にて医師と一緒に処方検討をすることを主に行っています。
日々の業務の中で気になったことや他の薬剤師さんにも役立ちそうだと思ったことをわかりやすく伝えるよう心がけています。

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