ポリファーマシーとは?薬剤師ができることを考えてみた

この記事を書いた人

杉本進悟(すぎもとしんご)

Chloe Pharmacy 株式会社
高知県出身
研修認定薬剤師
AEAJアロマテラピー検定1級

多数の薬剤を服用するポリファーマシーは高齢化が進むにつれて問題が表面化してきました。今回は薬局薬剤師としてポリファーマシー解決のためにできることをまとめました。

ポリファーマシ―とは多剤併用のこと

ポリファーマシーとは一言でいうと「多剤併用」のことです。

大体5~9種類以上を指していうようですが、肌感覚としては6種類を超えたあたりから「う~ん。」という感じがしてきます。  

もちろん多いから一概にダメとか3種類ならいいというわけではなく、多くなるにつれて不要な薬剤が潜む可能性が高まり患者さんの不利益となることがあるので定期的な処方の見直しは必要です。

ポリファーマシーの問題点

ポリファーマシ―の問題点はたくさん挙げられていますが、代表的なところを6つ挙げてみました。

・副作用の発現率が上昇してしまう
・薬の効果がでているのかわかりづらい
・部分的に薬同士が打ち消しあうような作用の場合がある
・用法が複雑になりがち
・患者さんの理解度が落ちてしまう

・医療費が増大してしまう  

副作用については東京大学医学部附属病院老年病科の患者を対象に行った試験で5剤までの患者さんでは副作用発現率が8%程度だったのに対し、6剤以上使用している患者さんでは13%程度に跳ね上がったという論文が有名です 1)。
1) GeriatrGerontol Int. 2012; 12: 761-2. PMID:22998384  

薬の効果に関しては数が多くなると一つ一つの作用がぼやけてしまうのはなんとなくイメージがつくと思います。また薬剤数が増えて用法が複雑になるとコンプライアンスの低下につながり、残薬が増えるなどほかの問題に発展してしまうこともよくあります。

ポリファーマシ―を解決するために

 
これをすればすぐに解決するというようなものはありません。ただこのようなアプローチもあるということを知っていれば処方の見え方も違ってくると思いますので見直しのポイントを3つ挙げてみたいと思います。

・血圧もずっと落ち着いているからDO処方
・調子も問題ないからDO処方
・夜眠れているからDO処方

など一見問題はないように思えますが、実はそこまで厳密なコントロールが必要なかったり、すでに原因疾患が落ち着いている場合もあります。  

毎回毎回行う必要はないですが、しばらく落ち着いて来たら分3を分2にしてみるとか、用量を減らしてみるなどを提案してみてはいかがでしょうか。  

一度にすべてを行う必要はないので半年~数年程度少しずつ時間をかけて処方がシンプルになっていけばよいと思います。

漫然と服用しても特に害はなさそうな薬

胃粘膜保護薬や消化酵素、ビタミン剤などちょっと調子が悪くて始めたまま漫然と投与されていると思われる薬は多くみられると思います。こういった薬の多くはなんとなく続けられていることが多いので一度患者さんに確認してみる必要があると思います。

ただ、ここで注意が必要なのは患者さんの意思で服用している場合も多いのでちゃんと確認する必要があることです。そういった場合は医療者としては中止しても問題ないように思われるので中止したとしてもなんとなく調子が悪いような感じがして再開となるケースが多いのであくまでも患者さんの意思は尊重しましょう。  

ただ、個人的な意見としては使わなくてもよさそうな薬に保険は使わないでほしいと思いますが・・・

他の薬の副作用のために服用している薬

代表的なところではNSAIDs服用中の胃薬など、併用薬との副作用防止のために使用している薬は多いと思います。この場合併用元の薬を変更、減量できれば補助の薬も減らすことができる場合があります。  

また、最近話題になっているH2ブロッカーによってせん妄がおき、そのために鎮静作用のある薬を服用するなど処方カスケードと呼ばれる連鎖的に薬が増えている場合もあるので注意しましょう。  

この記事を書いた人

杉本進悟(すぎもとしんご)

Chloe Pharmacy 株式会社
高知県出身
研修認定薬剤師
AEAJアロマテラピー検定1級

調剤薬局での外来業務と往診同行にて医師と一緒に処方検討をすることを主に行っています。
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