こんにちは。
エビデンスエージェントの工藤知也です。
水は、いつでも誰でも必要不可欠なモノに違いありませんね。
薬局には、そんな水を求めて多くの方がいらっしゃいます。特に、夏の薬局では「経口補水液」の需要が増えてきますね。 オーエスワン(OS-1、大塚製薬工場)が2001年に発売されて以来、経口補水液という言葉はすっかり定着しています。
今回は、経口補水液の理論について簡単におさらいして、患者さんへの説明に使えるキーワードを準備してみましょう。
今から遡ること47年前の1969年、経口補水液をWHO(世界保健機関)が初めて提唱しました。日本では東大安田講堂事件が起こった年ですので、ずいぶんと前から取り組んでいる印象です。
経口補水液は、発展途上国で起こる下痢による脱水に対応するために生まれました。急性下痢は、乳幼児の命を脅かし、脱水が直接的な致命傷になるからです。
そして、この経口補水液が、水分を効率よく摂取できる方法として世界中に広がることになります。
それでは、効率的に水分を吸収するためにはどうすればよいのでしょうか?
ポイントは、「ナトリウム」と「ブドウ糖」です。
水は、ナトリウムの動きに連動しています。そして、ナトリウムはブドウ糖と共に細胞内に移動します。ということは、ナトリウムとブドウ糖が入っていない水溶液では水分が体内に入りにくいのです。
気になるのは、ナトリウムとブドウ糖の経口補水液に最適の濃度ですね。
最適な濃度とは、濃い水溶液では高浸透圧による副作用が現れてしまい、また薄すぎると補水の効果が低くなることに起因します。
様々な検討の結果、現在ではナトリウム濃度50~75mEq/lとブドウ糖濃度75mmol/lを基本としたナトリウム:ブドウ糖濃度比1:1~1:2を推奨しています。
ここで、mEq(ミリグラム当量)について復習しておきましょう。mEqは濃度を溶液中のイオンの電荷数で表しています。1mEqは原子量のmg値を原子価で除した値です。つまり、0.9%塩化ナトリウム注射液であればNa+とCl–はともに154mEq/lとなります。
それでは、代表的な4つの商品(ポカリスエット、アクアソリタ、アクアサポート、オーエスワン)のナトリウムとぶどう糖の濃度を比較してみましょう。
参照:ポカリスエット基本情報|大塚製薬
参照:製品ラインナップ|アクアソリタ
参照:栄養ケア倶楽部|明治アクアサポート
参照:商品情報OS-1|大塚製薬工場
ポイントは、以下の3点にまとめることができます。
1. WHOの推奨するナトリウム濃度およびナトリウム:ぶどう糖濃度比をクリアしているのは、アクアサポートとオーエスワン。
2. アクアソリタは、ナトリウム:ぶどう糖濃度比が1:1.8であるものの、ナトリウム濃度が推奨値未満。
3. ポカリスエットは、ナトリウム濃度が推奨値未満であり、炭水化物濃度がオーエスワンの約2.5倍。
これらをふまえると、「下痢や嘔吐などの症状があるとき」は、経口補水液としての推奨値をクリアしているアクアサポートやオーエスワンをお勧めしたいですね。
また、夏場の「脱水予防」では、WHOが経口補水液を下痢による脱水への対応と位置付けて、軽症の下痢などの脱水予防と区別していることからもわかるように、必ずしもアクアサポートやオーエスワンに拘る必要はないでしょう。そこで、飲みやすさを追求しているアクアソリタが選択肢に加わります。
ポカリスエットは、炭水化物濃度が他の商品と比べて2.5倍以上高いことが解ります。ここでの炭水化物は糖質と考えられますので、激しい運動後の水分補給という位置づけでしょうか。
このように、ナトリウムとぶどう糖に着目すると、各商品の特徴を簡潔に表すことができます。是非とも、患者さんへの説明にキーワードとして利用して頂ければと思います。
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