ヒト副甲状腺ホルモン(PTH)の活性部分である34個のアミノ酸を抜き出したものをテリパラチドといいます。
テリパラチドは骨折リスクの高い骨粗鬆症に処方される注射薬です。
テリパラチドには遺伝子組換えと、化学合成の薬剤が存在します。
遺伝子組み換えはフォルテオ皮下注キット600μg、
化学合成はテリボン皮下注用56.5μg、テリボン皮下注用オートインジェクター28.2μgが販売されています。
ヒト副甲状腺ホルモン(PTH)について、作用機序、有効性についてまとめてみました。
一般名 | 商品名 用法 |
テリパラチド (遺伝子組換え) |
フォルテオ皮下注キット600μg 1日1回24ヶ月まで |
テリパラチド 酢酸塩 |
テリボン皮下注用56.5μg 1週間に1回24ヶ月まで テリボン皮下注オートインジェクター28.2μg 1週間に2回24ヶ月まで |
フォリテオ、テリボンともに24ヶ月の投与は生涯にわたり1回のみとなっています。
つまり24ヶ月投与終了後、休薬期間を設けても再投与はできません。
また途中で治療を中止した場合などは、合計の投与期間を24ヶ月以内におさえなければいけません。
フォルテオとテリボンの効能・効果は下記のとおりです。
骨折の危険性の高い骨粗鬆症
ヒト副甲状腺ホルモン剤は骨粗鬆症の中でも特に骨折の危険性がある人のみにしか処方ができません。
具体的には
低骨密度、既存骨折、加齢、大腿骨頸部骨折の家族歴等の骨折の危険因子を有する患者を対象とすること。
となっています。
ヒト副甲状腺ホルモン(PTH)は、
といった働きがあります。
このようにヒト副甲状腺ホルモン(PTH)は骨を分解することから骨粗鬆症を進行させるように見えますが、一時的(間欠的)に投与した場合に下記のように骨芽細胞を活性化させる働きがあります。
このように間欠投与で効果を発揮する特性を活かして開発されたのが、フォルテオやテリボンです。
そのためテリボン皮下注用は1週間に1回、テリボン皮下注オートインジェクターは1週間に2回投与します。
フォルテオは毎日1回皮下注で使用しますが、半減期が0.7hrと短いため、1日1回連日投与でも、間欠的投与となります。
フォルテオのインタビューフォームによると、1日用量を1時間おきに6回に分けて投与した場合、骨吸収が骨形成を上回り、骨密度が低下することが報告されています。
このようにヒト副甲状腺ホルモン(PTH)を一時的(間欠的)に投与することで「骨形成促進薬」として効果を発揮するのです。
テリパラチドのラットでの癌原性試験で、骨肉腫の発生が投与量と投与期間に依存して発現したこともあり、フォルテオ、テリボン共に2年(24か月)の投与制限が設けられています。
一度休薬した場合でも、合計の投与日数を上限以内に抑えなければいけません。
また骨肉腫発生のリスクが高いとされている方には投与禁忌となっています。
テリボンは院内処方、フォルテオは院外or院内処方でありますが、薬局で患者さんから受ける質問としては、
「ヒト副甲状腺ホルモン剤を病院で勧められたけど本当に効くの?」
「副作用が心配・・・」
「旅行に行くけど持ち運びはどうしたらいい?」
といった内容が多いかと思います。
フォルテオとテリボンについて効果、副作用についてそれぞれのインタビューフォームより抜粋します。
骨折の危険性が高い骨粗鬆症患者を対象とした国内臨床試験では、12ヵ月間、18ヵ月間及び24ヵ月間の治療で腰椎(L2-L4)骨密度平均変化率は10.04%、11.93%及び13.42%であった。
骨折の危険性が高い骨粗鬆症患者を対象とした外国臨床試験では、新規椎体骨折及び非外傷性非椎体骨折の発生に対して、それぞれ65%及び53%抑制効果が認められている。
国内のプラセボを対照とした臨床試験において、本剤10~40μg/日を投与した安全性評価対象252例中50例(19.8%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。主な副作用は、血中尿酸上昇9例(3.6%)頭痛7例(2.8%)悪心7例(2.8%)ALP上昇5例(2.0%)筋痙縮3例(1.2%)高尿酸血症3例(1.2%)食欲不振3例(1.2%)血中尿素上昇3 例(1.2%)であった。
骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者を対象とした臨床試験において、新規椎体骨折の発生を80%(Cox 回帰モデル)抑制した。
後期第Ⅱ相試験において、投与48週後に腰椎骨密度を8%増加させた。
安全性評価対象 290 例中 127 例(43.8%)に副作用が認められた。主な副作用として、悪心54例(18.6%)嘔吐25例(8.6%)頭痛22例(7.6%)倦怠感18 例(6.2%)腹部不快感12例(4.1%)めまい12 例(4.1%)等が認められた。(承認時)
2~8℃で遮光保存のため、通常は冷蔵庫の保管となります。
使用後も凍結を避けて冷蔵庫で保管し、使用開始後の期限は28日以内となっています。
旅行などの際は、フォルティオ専用の保冷バッグと保冷剤がありますので事前にメーカーから取り寄せておくとよいでしょう。
テリボン皮下注オートインジェクターは1回使い切りの製剤となっています。
保管はブリスターパック(個包装ケース)の封を切らず、 冷蔵庫(2~8℃)で保存します。
旅行の際は、専用の保冷バッグと保冷剤がありますので事前に製薬メーカーから取り寄せておくとよいでしょう。
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