ジヒドロピリジン系Ca 拮抗薬一覧・作用機序の違い・使い分け(L型・N型・T型)

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

Ca拮抗薬は降圧薬の中でも降圧作用が強力であり、糖代謝、脂質代謝、電解質代謝に影響を与えないのが特徴です。

Ca拮抗薬はL型Caチャネルの結合部位の違いから下記の3つに分類されます。

  • ジヒドロピリジン系(DHP)
    末梢血管に選択性が高い
  • フェニルアルキルアミン系(PAA)
    心筋選択性が高い
    ベラパミル(商品名:ワソラン)
  • ベンゾチアゼピン系(BTZ)
    DHPとPAAの中間
    ジルチアゼム(商品名:ヘルベッサー)

降圧剤として処方頻度の高いジヒドロピリジン(DHP)系Ca拮抗薬に着目します。

DHP系Ca拮抗薬は10成分以上が上市されていることから、

「どのように使い分けされているの?」
「Ca拮抗薬が追加、変更、併用された時の処方意図は?」

といった疑問に遭遇することがあるのではないでしょうか?

ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の作用機序や違いについてまとめました。

ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬一覧と適応症

ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の全成分と適応症の一覧です。

商品名
一般名
 適応症
アダラートCR
ニフェジピン
高血圧症
腎実質性高血圧症
腎血管性高血圧症

狭心症 
異型狭心症
アダラートL
ニフェジピン
本態性高血圧症
腎性高血圧症
狭心症 
ペルジピン
ニカルジピン
本態性高血圧症
バイミカード
ニソルジピン  
高血圧症
腎実質性高血圧症
腎血管性高血圧症
狭心症
異型狭心症
バイロテンシン
ニトレンジピン
高血圧症
腎実質性高血圧
狭心症 
ニバジール
ニルバジピン 
本態性高血圧症 
スプレンジール
フェロジピン
高血圧症 
ヒポカ
バルニジピン
高血圧症
腎実質性高血圧症
腎血管性高血圧症 
コニール
ベニジピン
高血圧症
腎実質性高血圧症
狭心症
カルスロット
マニジピン
高血圧症
カルブロック
アゼルニジピン
高血圧症
ランデル
エホニジピン
高血圧症
腎実質性高血圧症
狭心症 
アテレック
シルニジピン
高血圧症
サプレスタ
ベック
アラニジピン
高血圧症
アムロジン
ノルバスク
アムロジピン
高血圧症
狭心症

 

ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬作用機序の違い(L型・N型・T型)

ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の基本となる作用はL型Caチャネルの遮断ですが、L型に加えて、T型N型のCaチャネルを遮断するCa拮抗薬が存在します。

Ca拮抗薬の使い分けや、Ca拮抗薬が併用される目的を理解するためには、どのCa拮抗薬がT型やN型に作用するのか把握しておく必要があります

基本はL型Caチャネルの遮断

まずは基本の作用機序であるL型Caチャネルの遮断について。

ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は末梢の血管平滑筋の細胞膜にあるL型Caチャネルを遮断し、細胞内へCa2+の流入を抑え血管収縮を抑えます。

L型CaチャネルのCa2+流入によって末梢血管が収縮するメカニズム

安静状態(静止膜電位)では細胞内はマイナス、細胞外がプラスの電位になっているが、刺激によって細胞内外の電位が逆転(脱分極)がおこり、Caチャネルが開き、細胞内にCa2+が流入、Ca2+が収縮調節タンパクであるトロポニンに結合すると、血管の収縮が起こる。

上記のL型Caチャネルの遮断がジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の共通の作用となります。

N型・T型Caチャネル遮断薬の特徴

CaチャネルにはL型だけでなく、N型T型も存在します。

N型Caチャネルは交感神経終末に存在しノルアドレナリンを分泌、T型Caチャネルは心臓の洞結節、房室結節などに存在します。

L型+N型を阻害するCa拮抗薬
アテレック(一般名:シルニジピン)

L型+T型を阻害するCa拮抗薬
カルブロック(一般名:アゼルニジピン)
ランデル(一般名:エホニジピン)
ニバジール(一般名:ニルバジピン)

L型+N型+T型を阻害するCa拮抗薬
コニール(一般名:ベニジピン)

腎臓保護・尿蛋白減少作用

L型に加えてN型やT型のCaチャネルを阻害することで、糸球体内圧を正常にし腎臓保護の働きがあります。

詳しいメカニズムはこちら。

糸球体の入り口である輸入細動脈にはL型、T型、N型のCaチャネルが、出て行く側の輸出細動脈にはN型、T型のCaチャネルが存在し、細動脈の収縮に関わっています。

T型やN型を遮断するCa拮抗薬は、輸入細動脈だけでなく輸出細動脈も広げるために糸球体内圧を低下させ尿蛋白の減少も期待できるのです。

そのため、T型、N型に作用するCa拮抗薬は降圧作用+腎臓保護を目的に処方されることがあります。

L型のみを遮断する場合は輸入細動脈のみ拡張させますので、糸球体内圧が上昇してしまいます。

反射性頻脈が生じにくい

ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬でL型のみを遮断するタイプでは降圧作用による反射性頻脈が起こることがあります。

T型Caチャネルは心臓に存在するため、T型Caチャネルを遮断することで心拍数の増加を抑え反射性頻脈が起こりにくいのが特徴です。

N型Caチャネルは交感神経終末からノルアドレナリンの分泌に関与することから、N型Caチャネルを遮断しノルアドレナリンの分泌を抑え、心拍数の増加を抑えることから反射性頻脈が起こりにくい特徴があります。

N型遮断による下肢浮腫改善

L型Caチャネル遮断薬は細動脈を拡張させ細静脈は拡張させないため浮腫が起こりやすい特徴があります。

N型Caチャネル遮断薬は細静脈を拡張させる作用があることから、L型Ca拮抗薬で下肢浮腫が問題になる場合、N型にも作用する薬剤へ変更になるケースがあります。

まとめ

  • ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬はL型Caチャネルを遮断し血管の収縮を抑制
  • L型に加え、N型、T型に作用するCa拮抗薬を把握しておく
  • N型・T型に作用するCa拮抗薬は腎臓保護・蛋白尿減少作用あり
  • T型・N型に作用するCa拮抗薬は反射性頻脈が生じにくい
  • N型に作用するCa拮抗薬は細静脈を拡張させるため浮腫が生じにくい

L型・N型・T型遮断と心拍数・糸球体内圧変化

L型遮断
脈拍数:増加
腎臓の糸球体内圧:上昇

N型遮断
心拍数:低下
腎臓の糸球体内圧:低下

T型遮断
心拍数:低下
腎臓の糸球体内圧:低下

主なジヒドロピリジン系Ca拮抗薬と作用部位(L型・N型・T型)

一般名 商品名 作用部位
ニフェジピン アダラート L型 
ニルバジピン ニバジール  L型
T型
ベニジピン コニール L型
T型
N型 
マニジピン カルスロット L型 
アゼルニジピン カルブロック L型
T型 
エホニジピン ランデル L型
T型 
シルニジピン アテレック L型
N型 
アムロジピン アムロジン
ノルバスク
L型 

 

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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