こんにちは。
メディカルライターの平野菜摘子です。
メチルエルゴメトリン、カベルゴリンと聞けば、
麦角アルカロイド??
と薬学生時代の記憶を思い起こす人もいるかも知れません。
婦人科領域か、パーキンソン病の薬であることが想像できますが、産婦人科領域で処方されることのある、メチルエルゴメトリン(商品名:パルタンM)、カベルゴリン(先発名:カバサール)ついて書きます。
婦人科領域の薬に馴染みがない薬局で突然処方を受けた場合、投薬も当たり障りのないものになりがちです。
知っているのと知っていないのでは対応に大きく差がでてきます。
実際にどんなことに注意すればいいのか、確認してみましょう。
メチルエルゴメトリンは子宮収縮剤です。
商品名では下記の薬剤が存在します。
よく薬局で処方される、お腹の張り止めと言われる子宮収縮抑制剤ではないことに注意です!
調剤薬局で子宮収縮剤を出すとしたら、ほぼこの一択であるので、覚えておくと良いでしょう。
産後の子宮収縮が進んでいない場合、産後の出血が多い場合、流産、人工妊娠中絶で使われます。
このことから、出血もあり(子宮出血の予防的にも使われる)、腹部の痛みもあり、女性の体が大きなダメージを受けている時期がほとんどです。
寄り添う姿勢が求められます。
メチルエルゴメトリン(パルタンM)の効能効果は
子宮収縮の促進並びに子宮出血の予防及び治療の目的で次の場合に使用する。
胎盤娩出後、子宮復古不全、流産、人工妊娠中絶
となっており、通常の用法用量は、
メチルエルゴメトリンマレイン酸塩として、通常成人1回0.125~0.25mgを1日2~4回経口投与。
となっています。
子宮以外にはほとんど作用しないとあります。
作用発現まで3〜5分なので、頭痛などの副作用に備え、家などの安静になれる場所で飲むことをお勧めしたほうが良いでしょう。
また、母乳中に移行とありますが、母乳1mlあたり1000分の1程度の少量であります。
メチルエルゴメトリンマレイン酸塩製剤の投与を受けている婦人
(投与量:1日0.5~0.75mg分2~3)13人の13検体すべての母乳に移行を認めた(母乳中濃度:0.35~2.32ng/mL)引用元 パルタンM錠 インタビューフォーム
一般に麦角アルカロイドは、子宮平滑筋のα受容体を刺激し、少量では律動的な収縮、多量では強縮させます。
また、β受容体の刺激は子宮筋を弛緩させます。
子宮のα・β受容体の存在比は性ホルモンに依存するので、麦角アルカロイドに対する感受性は子宮の生理状態で異なり、妊娠末期でメチルエルゴメトリンを投与すると強い収縮が生じます。
したがって、陣痛促進薬としては不適切で、産後の胎盤剥離促進、出血防止に使われます。
5-HT1B/1D受容体作動薬(片頭痛薬)は相互に血管収縮作用を増強させるおそれがあるため同時服用は禁忌となっています。
5-HT1B/1D受容体作動薬を併用の際は「24時間以上の間隔をあけること」と添付文書には記載されています。
メチルエルゴメトリンは主にCYP3A4で代謝されます。
マクロライド系抗生物質はCYP3A4で代謝される薬剤が多いので、併用には注意が必要です。
メチルエルゴメトリンは妊娠中には禁忌の薬剤です。
デリケートな話題になりがちの薬ですが、
「子宮の働きを強めるおくすりなので、妊娠している方は飲めないのですが、妊娠していないでしょうか。」
などと、非妊娠であるかを確認するのは必須です。
カベルゴリンはパーキンソン病にもよく処方される薬ですが、婦人科で乳汁分泌抑制の目的で処方された例について述べます。
院外処方で、カベルゴリンの処方箋が持ち込まれ、1回きりの投与だとしたら、卒乳、断乳など産後の母乳を止める措置のためと考えられます。
母親自身の都合により母乳を止めなくてはいけない場合、乳児の都合により母乳を飲まなくなり(飲めなくなり)止めなくてはいけない場合です。
一回で母乳が止まらなかった場合、後日、別の処方せんで、同じ一回きりの処方が出されることがあります。
毎週同一日の繰り返し処方の場合は、乳汁漏出症、高プロラクチン血性排卵障害・下垂体腺腫が考えられます。
母乳が産生されている状態では、自然に母乳を止めるのは困難なことがあります。
カベルゴリンは、ドパミンD2受容体に作用してプロラクチン分泌を特異的に抑制し、抗プロラクチン作用で、強制的に母乳を止めます。
母乳を必要としないのに母乳が次々に産生されると、排出先がないので乳腺炎になってしまいます。
処方が出た時点で、なるべくすぐに飲むように医師に指示されているはずですので、速やかにお渡しできるといいですね。
カベルゴリンの1回のみの投与時の主な副作用としては、低頻度ですが頭痛が認められます。
(220例中2例 市販後再審査終了時)
主な代謝酵素はCYP3A4なので、CYP3A4を阻害するクラリスロマイシンとの併用は注意です。
また、血圧降下剤との併用で、作用機序は違いますが、血圧降下作用を増強することがありますので併用注意となっています。
婦人科領域の薬の処方箋が急に調剤薬局に来られた場合、デリケートな問題、または使い道がよく分からないといったことで、患者に何も聞かずに用法用量だけ伝えることも見受けられます。
しかし、どういった時に処方されるのか、患者の背景を知ることで、患者や症状に寄り添う姿勢も生まれるのではないかと思い、この2つの薬剤について述べました。
知っているのと知っていないのでは、対応に差も出るはずですので、ぜひ頭の片隅に入れておくことをオススメします。
参考資料
パルタンM 添付文書、インタビューフォーム
カバサール 添付文書、インタビューフォーム
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