薬局の初回質問票に
「妊娠中もしくは授乳中ですか?」
といった項目があるかと思います。
妊娠中にチェックがあった場合に確認しないといけないのが
妊娠何週目なのか?
といった「週数の確認」です。
薬局での週数の確認と、注意事項についてまとめました。
妊娠週数 | 胎児への影響 |
---|---|
受精前〜3週まで | 無影響期 |
4週〜7週末 | 絶対過敏期 |
8週〜16週前後 | 相対過敏期 |
17週以降 | 潜在過敏期 |
妊娠週数の考え方は、最終月経開始日を0日としてカウントします。
40週0日目が分娩予定日となります。
受精前〜3週までは無影響期で、薬剤の影響がなければ問題なく受精・着床し、薬剤の影響があれば着床ができなかったり、自然に流産します。
このことから「all or nothingの法則 または all or noneの法則」と呼ばれます。
この時期に妊娠週数を把握することは難しいため、気がつかずに薬を服用することがありますが、患者さんにはたとえ薬を服用したとしても問題ないことをお伝えし、不安を与えないようにしなければいけません。
妊娠4週〜7週前後は絶対過敏期といわれ、中枢神経、心臓、消化器、四肢などの重要な器官が作られ胎児が最も敏感な時期です。
生理がこなくて「妊娠したかも?」と妊娠の可能性を考え始めるのが4週前後以降となります。
つまり妊娠に気づいた時が最も薬の影響を受けやすい時期ですので、薬局では「妊娠の有無」だけでなく「妊娠の可能性があるかどうか」も確認する必要があります。
8週〜16週前後は相対過敏期といわれ、口蓋や性器が完成する時期です。
相対過敏期は絶対過敏期に比べて胎児への影響は少ないといわれています。
またつわりは4〜6週くらいからではじめ、7〜12週でピークとなり、16週前後で落ち着くといわれています。
もちろん期間や程度に個人差はありますが、この時期に食後に薬が処方されている場合は、「食事はとれているか」の確認と、食後でなくても特別問題ない薬であれば食後でなくても問題ないと、状況に応じて指導する必要があります。
17週以降は潜在過敏期といわれ薬剤による奇形発生はありません。
奇形発生がないといっても17週から分娩の40週(妊娠中期〜後期)にかけて注意が必要な薬剤があります。
代表的なのがNSAIDsです。
NSAIDsは胎児の動脈管を収縮させる可能性があり妊娠後期に禁忌の薬剤が多くあります。
ロキソプロフェン(商品名:ロキソニン)やジクロフェナクナトリウム(商品名:ボルタレン)は妊娠後期には禁忌です。
また外用剤でもケトプロフェン(商品名:モーラステープなど)は妊娠後期には禁忌となっていますので、残薬を使用したり、家族から譲り受けて使用させないように注意する必要があります。
催奇形性もしくは胎児毒性を示し、妊娠中に禁忌の代表的な薬剤です。(抗がん剤は除く)
一般名 | 商品名 | 影響 |
エトレチナート | チガソン | 催奇形性 |
メトトレキサート | リウマトレックス | 催奇形性 |
ワルファリン | ワーファリン | 催奇形性 |
ミソプロストール | サイトテック | 催奇形性 子宮収縮 流産・早産 |
ACE阻害薬全て エナラプリル イミダプリル リシノプリル など |
ACE阻害薬全て レニベース タナトリル ロンゲス など |
妊娠中・後期 胎児腎障害 肺低形成 |
ARB全て バルサルタン オルメサルタン テルミサルタン カンデサルタン ロサルタン イルベサルタン など |
ARB全て ディオバン オルメテック ミカルディス ブロプレス ニューロタン イルベタン など |
妊娠中・後期 胎児腎障害 肺低形成 |
NSAIDs 内服 ロキソプロフェンNa ジクロフェナクNa セレコキシブ 外用 ケトプロフェン エスフルルビプロフェン など |
NSAIDs 内服 ロキソニン ボルタレン セレコックス 外用 モーラス ロコア など |
妊娠後期 動脈管収縮 羊水過少 |
禁忌にはなっていませんが、テトラサイクリン系抗生物質(商品名:アクロマイシンなど)は歯の着色やエナメル質の形成不全が報告されていることから注意が必要な薬剤です。
抗てんかん薬のカルバマゼピン(商品名:テグレトール)、バルプロ酸ナトリウム(商品名:デパケン)、フェノバルビタール(商品名:フェノバール)は妊娠中に禁忌ではありませんが、奇形発生の頻度が通常より高くなるとの疫学的調査報告があります1)。
参考文献
1)フェノバール錠 テグレトール錠 デパケン錠 各添付文書
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」のFacebookページに「いいね!」をすると、薬剤師が現場で活躍するために役立つ情報を受け取ることができます。ぜひ「いいね!」をよろしくお願いします。
お客様により安全にご利用いただけるように、SSLでの暗号化通信で秘匿性を高めています。
コメント欄ご利用についてのお願い
※コメントはサイト管理者の承認後に公開されます