女性に降圧剤が処方された場合、特に確認しないといけないのが妊娠の有無です。
妊娠中の高血圧の基準は収縮期血圧が140mmHg、拡張期血圧が90mmHg以上とされており、通常は降圧剤での薬物治療は収縮期血圧が160mmHg、拡張期血圧が110mmHg以上になった時に開始することとなっています。
エナラプリル(商品名:レニベース)やイミダプリル(商品名:タナトリル)などのACE阻害薬や、ロサルタン(商品名:ニューロタン)、カンデサルタン(商品名:ブロプレス)、バルサルタン(商品名:ディオバン)などのARBは羊水過少症や催奇形性のリスクがある理由から禁忌となっています。
妊婦に使用できない併用禁忌の降圧剤は非常に多いため、禁忌薬を全て覚えるのではなく、使用できる薬剤を覚えておくことをオススメします。
妊娠中に使用できる降圧剤についてそれぞれの作用機序や特徴についてまとめてみました。
妊娠中の降圧剤の第一選択薬は妊娠20週未満ではメチルドパ(商品名アルドメット)、ヒドララジン(商品名アプレゾリン)、ラベタロール(商品名:トランデート)となっており、妊娠20週を過ぎるとニフェジピン徐放剤(商品名:アダラートL・CR)が加わります。(ニフェジピンは妊娠20週未満の制限が2022年に解除されました。)
アルドメット(メチルドパ)は下記の3つの作用機序があるとされています。
①中枢のアドレナリン作動性受容体刺激(α2作動)
脳幹部のアドレナリン作動性ニューロンは、血圧の制御に関与するといわれています。
アルドメット(メチルドパ)はα-メチルノルエピネフリンに代謝されシナプス後α2受容体を刺激し、末梢交感神経活性を低下させ血圧を下げます。
②交感神経末端における偽神経伝達作用
メチルドパはα-メチルノルエピネフリンに代謝されると、アドレナリン作動性神経内のノルエピネフリンの貯蔵部位に取り込まれます。
α-メチルノルエピネフリンはノルエピネフリンより効力が弱いため、ノルエピネフリンが放出される時のような交感神経の刺激が起こらず、結果的に血圧が低下すると考えられています。
③血漿レニン活性の低下作用
メチルドパから代謝されたα-メチルノルエピネフリンは、腎臓からレニンの遊離を抑制して、血漿レニンの作用活性を低下させ、アンデオテンシンⅡの生成が抑制され血圧が低下すると考えられています。
メチルドパとして、通常成人初期1日250~750mgの経口投与からはじめ、適当な降圧効果が得られるまで数日以上の間隔をおいて1日250mgずつ増量します。通常維持量は1日250~2,000mgで1~3回に分割経口投与し、年齢、症状により適宜増減します。
・硫酸鉄と併用すると吸収が低下する
・尿を放置すると黒くなる
再評価時の主な副作用はめまい(3.28%)、起立性低血圧(3.01%)、脱力感(2.34%)、眠気(1.87%)、口渇(1.03%)となっています。
ヒドララジンは抗ヒスタミン作用より、血圧降下作用の強いことが見いだされ、1954年に国内で承認を受けた古くからある降圧剤です。
アプレゾリン錠10mg、25 ㎎、50 ㎎、10%アプレゾリン散「チバ」 があります。
降圧作用機序については十分に判明されていないそうですが、末梢細動脈の血管平滑筋に直接作用し、血管を拡張するとされています。
ヒドララジン塩酸塩として、最初は、通常成人1日30~40mgを3~4回に分割経口投与し、血圧値をみながら漸次増量します。維持量は各個人により異なりますが通常成人1回20~50mg、1日30~200mgとし年齢、症状により適宜増減します。
トランデート錠剤の50mgと100mgと2つの規格があります。
α1受容体とβ受容体を遮断し血圧を低下させます。(α1遮断:β遮断=1:3)
通常、成人にはラベタロール塩酸塩として1日150mgより投与を開始し、効果不十分な場合には1日450mgまで漸増し、1日3回に分割、経口投与します。なお年齢・症状により適宜増減します。
主な副作用はめまい・たちくらみ(1.5%)、頭痛(0.4%)、倦怠感(0.3%)、悪心・嘔吐(0.3%)となっています。
アダラートCR錠は10mg、20mg 、40mgの3種類が、アダラート L錠は10mg、20mgの2種類があります。
Ca拮抗薬。細胞外Ca++の血管平滑筋と心筋細胞内への流入を特異的に遮断し、全身細動脈と冠動脈を拡張することで、血管抵抗を減らし血流量を増加させます。
本態性高血圧症,腎性高血圧症の場合
アダラートL
ニフェジピンとして、通常成人1回10~20mgを1日2回経口投与。症状に応じ適宜増減します。
アダラートCR
通常、成人にはニフェジピンとして20~40mgを1日1回経口投与。
ただし1日10~20mgより投与を開始し、必要に応じ漸次増量します。
アダラートLは1日2回経口投与にて24時間有効血中濃度が持続、CRは1日回経口投与にて24時間有効血中濃度が持続します。
主な副作用は頭痛・頭重感(2.77%)、顔面潮紅・顔のほてり(2.26%)、動悸(1.31%)となっています。
そのた妊娠中に注意が必要な薬剤はこちらにまとめています。
絶対過敏期・相対過敏期とは?妊娠中に注意が必要な薬剤
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