ジェネリック医薬品の採用基準

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もも

薬剤師

皆さんの薬局や病院では、どのようにジェネリック医薬品の採用を決めていますか。

  • 薬価が安い
  • 流通が安定している
  • フレーバーが付いている 

など

様々な理由から採用を決めていると思います。

私がジェネリック医薬品の採用を決めるときに注意していることをお話しします。

製品名

「有効成分の一般名+剤形+含量+会社名」の製品を選ぶようにしています。

ブランド名がつけられたジェネリック医薬品もありますが、類似名称薬の取り間違えのリスクがあり、厚労省もブランド名から一般名へ販売名の変更をすすめています。

また、一般名が製品名に入っていると、医療スタッフが、何の薬を服用しているのかの把握もしやすいというメリットも考えられます。

製剤工夫

刻印

錠剤やカプセルの刻印は記号やアルファベットでなく、薬剤名の刻印の製剤を選んでいます。
一包化時の鑑査の視認性だけでなく、入院や災害等の緊急時でも、服用している薬剤を他の医療スタッフがすぐ把握できるようにするためです。

先発品と類似の外観

先発品と外観が異なりすぎると、
「本当に効果は同じなの?」
と不安に思う患者さんもいます。

患者さんの不安を軽減するために、可能な限り先発品と類似した外観の製剤を選んでいます。

剤形

ジェネリック医薬品には、先発品にはない剤形が多く存在します。

患者さんのアドヒアランスを高めるため、製薬会社が様々な工夫を施しているためです。

例えばOD錠は、嚥下機能が低下している高齢者でも服用しやすい剤形です。
ジェネリック医薬品でOD錠がある場合は積極的に選ぶようにしています。
また、OD錠であれば簡易懸濁法も基本的には可能です。

錠剤の大きさも重要です。
大きすぎると嚥下困難者や高齢者は服用しにくいですし、小さすぎてもPTPから取り出したときに落としてしまうこともあります。

バナナ味やミント味など、患者さんが服用しやすいようにフレーバーを付けている製剤がありますが、患者さんの好みの問題もあるため、フレーバーがついていない製剤を選んでいます。

生物学的同等性・溶出性試験

ジェネリック医薬品は先発品と臨床上の有用性・安全性が同等と認められて発売されます。

その指標には、最高血中薬物濃度(Cmax)と血中薬物濃度-時間曲線下面積(AUC)が用いられており、PMDAが実施した930件の生物学的同等性試験(2004年4月1日~2011年1月15日)によると、ジェネリック医薬品と先発品の差は、Cmax:4.6%、AUC:3.9%であり、平均値の差はほとんどない1)と言われています。 

※基準:大きさの差の絶対値が±20%以内

ただ、念のため添付文書やIF、オレンジブックなどから、基準の範囲にあるかの確認をしています。

溶出性試験は、有効成分の物性(酸性薬物、塩基性・中性薬物、難溶性薬物)と製剤特性(即放性・腸溶性、徐放性)にあわせて、消化管内の移動を考慮し、pHの異なる緩衝液や水など4種類以上の条件で行われます。

生物学的同等性試験と併せて、溶出試験の結果も確認します。

流通

バルク元

どこの国(できれば工場名も)が原薬をつくっているかを確認し、過去のトラブルがなかったかを確認します。

また、ジェネリック医薬品間で比較してみたときに、同じバルク元の製剤があると、販売会社が異なっていても、製品自体は同じ可能性があります。

バルク元が複数カ所あることも重要です。

1カ所にトラブルがあって供給不可となってもカバーできるようにするためです。

流通

医療機関に納品しやすい製品かを確認します。
一部の地域だけでなく、全国に流通しているか、近隣の医療機関での採用実績も確認することで欠品を防ぎます。

市場シェア

先発品に対してジェネリック医薬品が占める割合、ジェネリック医薬品の市場シェアの中で各製薬会社が占める割合を確認します。

先発品のシェアが高い場合、今後他の医療機関がジェネリック医薬品に切り替える可能性があります。

その際に、シェアが高い製薬会社に切り替えると品薄になる可能性があります。

また、あまりシェアがない製薬会社も供給が不安定な可能性もあるので、各製薬会社や卸に流通を確認します。

薬価

患者さんの経済的負担軽減のため、薬価の低い製剤を選びます。

適応症

先発品に適応追加等があった場合、ジェネリック医薬品が上市されても適応が先発品と異なる場合があります。

適応が同じであるか、もし異なっていたら、異なる適応でも問題ないかを確認します。

安定性データ

先発品と異なり、ジェネリック医薬品は承認時に安定性などの試験は必須ではないため、安定性に関するデータが少ない傾向にあります。

そのため、安定性(加速試験、過酷試験、長期保存試験、粉砕、簡易懸濁の可否)や配合変化に関するデータが豊富な製剤を選ぶようにしています。

また、可能な限り無包装状態の安定性から、一包化が可能かの確認をします。

その他

 

  • 患者指導箋の有無、デザイン等の視認性
  • 包装単位(デッドストックを避ける、バラ錠の有無)
  • 注射であればアンプルカットのしやすさ、バイアルのゴム栓のかたさ(コアリングや漏れ)、アルコールやラテックスフリーか

色々記載しましたが、これらのことを総合的にみて、ジェネリック医薬品の採用を決めています。

数あるジェネリック医薬品から1つを選ぶのは大変ですが、患者さんが不安なく服用できる薬、アドヒアランスを高めることができる薬を選んでいけたらと思います。

参考
1)後発医薬品品質情報 平成26年12月 No.2

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薬剤師

明治薬科大学 薬学部卒

都内薬学部を卒業後、総合病院に勤務し、DI業務を経験。医療現場のニーズに応えられるように日々精進し、情報を収集・発信中。
臨床の薬剤師のために、そして患者さんのために!

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