アナグリプチン(スイニー)の作用機序・特徴・服薬指導の要点

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2型糖尿病治療薬に処方されるDPP4阻害薬がアナグリプチン(商品名:スイニー)です。

アナグリプチンについて作用機序、特徴、服薬指導のポイントについてまとめてみました。

作用機序

 

インクレチン(GLP1)の働き

食事を摂取すると消化管からインクレチンホルモンが分泌されます。

インクレチンは血糖値の上昇に応じて、膵臓β細胞からインスリン分泌を促したり、膵臓α細胞からグルカゴンの分泌を抑制し、血糖値の恒常性の維持に重要な役割を担っているとされています。

インクレチンホルモンの中でも特にグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は生理的に重要であり、血糖値の変動に応じてインスリン分泌やグルカゴン分泌を調整して血糖値をコントロールするだけでなく、胃排出能抑制食欲抑制作用も有すると言われています。

インクレチン(GLP1)はDPP4によって分解・不活性化

インクレチンは生体内に分布する分解酵素であるジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)によって急速に分解され不活性化されてしまいます。

アナグリプチン(スイニー)はインクレチンを分解するDPP4を阻害

アナグリプチン(スイニー)はインクレチン(GLP-1など)を分解するジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)を阻害することで、インクレチン濃度を高め、血糖値をコントロールする働きがあります。

Tmax・T1/2(半減期)

スイニーのインタビューフォームによると、健康成人男性に空腹時に単回投与した時のTmax・T1/2は下記の通りです。

消失は2相性を示します。

規格 Tmax(hr) T1/2α T1/2β
100mg 0.92±0.20 2.02±0.208 6.20±3.11 

 

代謝・排泄

主に腎臓から未変化体と代謝物が排泄されます。

併用禁忌薬

アナグリプチン(スイニー)には併用禁忌薬はありません。

服薬指導・薬歴記載のポイント(ハイリスク薬)

・インクレチンホルモンを分解するDPP4を阻害することでインクレチン濃度を高め、血糖値を調整。
・1日2回の朝・夕に投与。
・食事の縛りはない。
・単独処方では低血糖のリスク低いが、糖尿病薬と併用すると低血糖の可能性があがる。
(特にSU剤とインスリン製剤)
・低血糖の症状を伝える。
(動悸・手足の震え・強い空腹感・冷や汗・脱力感など)
・低血糖時の対処方法を伝える。
(ブドウ糖5~15g摂取or 砂糖10〜30g を摂取 αGI併用中はブドウ糖摂取)
・低血糖が起こりやすいケースを伝えておく。
(他の糖尿病薬と併用時、シックデイ、激しい運動後、過度な飲酒、食事を摂らない時)

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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