リナグリプチン(トラゼンタ)作用機序・特徴・服薬指導の要点

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2型糖尿病治療薬に処方されるDPP4阻害薬がリナグリプチン(商品名:トラゼンタ)です。

リナグリプチンはベーリンガーインゲルハイム社で創製された薬剤です。

リナグリプチンの作用機序、特徴、服薬指導のポイントについてまとめてみました。

作用機序

炭水化物や脂肪などを摂取すると、消化管からインクレチンホルモンが分泌されます。

インクレチンホルモンの働き

インクレチンホルモンは血糖値の上昇に応じて、膵臓β細胞を刺激してインスリンの分泌を促したり、膵臓α細胞を刺激してグルカゴンの分泌を抑える働きがあります。

また満腹感を誘発する働きもあります。

しかしインクレチンホルモンであるグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)DPP4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)によって急速に分解されてしまいます

リナグリプチン(トラゼンタ)は24時間DPP4を阻害する

リナグリプチンは1日かけてじっくりと、DPP4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)を選択的に阻害することでインクレチン濃度を高め、血糖値をコントロールすることができるのです。

Tmax・T1/2(半減期)

トラゼンタのインタビューフォームによると、健康成人男性に空腹時にリナグリプチン5mgを単回投与したところ、TmaxとT1/2は下記の通りになります。

Tmax(hr) T1/2(hr)
6 105

半減期はDPP4阻害薬の中では最も長いのが特徴です。

代謝・排泄(主に胆汁)

主に未変化体のまま胆汁中に排泄され80%が糞便にでる。

併用禁忌薬

リナグリプチン(トラゼンタ)と併用禁忌の薬剤はありません。

服薬指導・薬歴記載のポイント(ハイリスク薬)

・胆汁排泄のため腎臓・肝臓の機能低下の患者さんでも処方可能(透析でもOK)。
・1日1回で24時間効果あり。
・食事、服薬時点の縛りはない。
・単独処方では低血糖のリスク低いが、糖尿病薬と併用すると低血糖の可能性があがる。
(特にSU剤とインスリン製剤)
・低血糖の症状を伝える。
(動悸・手足の震え・強い空腹感・冷や汗・脱力感など)
・低血糖時の対処方法を伝える。
(ブドウ糖5~15g摂取or  砂糖10〜30g を摂取 αGI併用中はブドウ糖摂取)
 ・低血糖が起こりやすいケースを伝えておく。
(他の糖尿病薬と併用時、シックデイ、激しい運動後、過度な飲酒、食事を摂らない時)

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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