病院でも在宅でも、寝たきりやそれに近い状態が続いた場合に褥瘡が発生することがあります。
『褥瘡への対応は看護師が中心』
『薬剤師は褥瘡治療にどう関わればいいかわからない』
と思っていませんか?
わたしも実はそう思っていました。
病院の褥瘡チームで学んだことを皆さんと共有できればと思い、褥瘡治療薬について取り上げたいと思います。
日本褥瘡学会では、
褥瘡は『身体に加わった外力は、骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状態が一定時間持続されると、組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる』と定義しています。
つまり、長時間の圧迫が原因で血流が停止した場合に褥瘡が発生します。
一般的に『床ずれ』と言われています。
寝たきりの場合に仙骨部、大転子部、踵部などに褥瘡ができやすいのは、この部分に体重がかかりやすいためです。
また、車いす上で同じ姿勢で長時間体重がかかりつづけると臀部などにも褥瘡ができることがあります。
いずれにしても、自分で体の位置を変えることができない場合に褥瘡になりやすいといえます。
褥瘡になりやすいために注意しなければならない病気としては、うっ血性心不全、骨盤骨折、脊髄損傷、糖尿病、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患があります1)。
褥瘡を治療するために外用薬を選ぶとき、その褥瘡がどのくらい重症で、どの時期にあるかを正しく評価することが必要です。
褥瘡の評価方法として2つご紹介します。
褥瘡の色による分類です。
黒色期→黄色期→赤色期→白色期と治癒にむかっていきます。
【黒色期】
黒くて硬い壊死組織で創部が覆われている状態。
このときは医師による外科的デブリードマン(壊死組織をハサミやメスなどで取り除くこと)が主の治療となります。
【黄色期】
黄色の壊死組織が創面についている状態。
硬いものや柔らかいものもあり、感染に注意しつつ壊死組織を取り除いていく必要があります。
【赤色期】
壊死組織が除去され、赤色の肉芽が現れた状態。
肉芽形成を促進させ、潰瘍部を埋めていく治療が主となります。
【白色期】
上皮化を促進させて創を縮小させ、治癒を目指す時期です。
時期によって使われる薬剤が異なるため、褥瘡がどの時期にあるかを理解することはとても大切になります。
時期別の褥瘡治療薬はこちらにまとめています。
褥瘡治療薬一覧~黒色期・黄色期~
褥瘡の状態を判定するためのツールです。
看護師は定期的にDESIGN-Rの点数を付けることで、褥瘡の治療や管理方法が適切であったかを客観的に評価しています。
DESIGNのアルファベットのそれぞれが、
に対応していて、これに
を加えた7項目で評価します。
各項目の評価方法などの詳細は、日本褥瘡学会ホームページを参考にしてください。
薬剤を選択する際は、色調分類にあてはめて考えます。
例)
黄色壊死を除去したい
→ゲーベンクリーム、ユーパスタ など
白色期で上皮化を促進したい
→アクトシン軟膏、プロスタンディン軟膏 など
このように、壊死があるなら壊死組織除去作用のある薬剤、上皮化をさせたいなら上皮化促進作用のあるものを選びます。
ではどれを使っても得られる効果は同じなのでしょうか?
実は違います。
薬に含まれる有効成分は全体の5%以下といわれています。
外用薬も例外ではなく、ほとんどは主剤ではなく『基剤』です。
褥瘡治療をうまく進めるためには、滲出液の量をコントロールして、適切な湿潤環境を整える必要があります。
そのため、有効成分だけでなく、吸水性や補水性、保湿性(油性)などの基剤特性も考慮する必要があります。
外用薬を適切に選択するためには、褥瘡の状態を正しく評価することが大切です。
また、医師や看護師などは薬効成分に注目して薬剤を選択する傾向にありますが、薬剤師は基剤について理解しておくと医師や看護師とは異なる視点から情報提供を行うことができるようになります。
褥瘡治療薬についての詳細はこちらにまとめています。
引用
参考文献
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