ワーファリンやDOACなどの抗凝固薬は心房細動を持つ患者さんに対してよく処方されています。血栓を出来にくくすることで脳梗塞や肺塞栓を防ぐことが期待される一方で出血リスクもあります。CHADS2スコアを用いるとより必要性の高い患者さんをスクリーニングして安全に抗凝固薬治療を行うことができます。
診断や処方決定の際によく使う指標なので普段薬局で仕事をしていてもあまり耳にすることはないかもしれませんが、処方解析をする際などに、とても参考になる指標なのでぜひ頭の片隅にでもおいておいてください。
CHADS2スコアとは非弁膜症性心房細動を持つ方が1年以内に脳梗塞を起こすリスクを簡易に予想できるようにしたものです。
具体的にみていきましょう。
非弁膜症性心房細動を持つ方で以下の合併症を持つかどうかを確認してスコアの合計を出します。
リスク因子 | 点数 | |
C | 心不全、左室機能不全 | 1点 |
H | 高血圧 | 1点 |
A | 75歳以上 | 1点 |
D | 糖尿病 | 1点 |
S2 | 脳卒中または一過性脳虚血発作の既往 | 2点 |
CHADS2スコアの合計点数と1年間の脳梗塞発症率をグラフ化すると下記のようになります。
点数が高いほど、1年間の脳梗塞発症率も高くなります。
参照 Gage BF, et al. 2001132
心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)ではCHADS2スコア2点以上で直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)もしくはワルファリン(商品名:ワーファリン)の投与が推奨されています。
また、1点でもダビガトラン(商品名:プラザキサ)、アピキサバン(商品名:エリキュース)の投与は推奨となっています。
出血リスクはワルファリンのほうが高いですが、高度腎機能低下例ではワルファリンしか適用がない、薬価が安いなどまだまだワルファリンが活躍する場面は多いです。
1点の場合ではワルファリンの推奨がないのは脳梗塞発症予防のメリットが出血性合併症のデメリットを明らかに上回るというエビデンスが乏しいためです。
また、僧帽弁狭窄症や人工弁などの場合はワルファリン製剤のみが適用です。
非常に簡便で使い勝手の良いCHADS2スコアですが、リスクが低いとされる0点、1点の方の絶対数が多く、さらにDOACの登場前は治療薬がワルファリンしかないため2点以上の方にしか適用がなかったために低リスクの方の脳梗塞発生数が多くなってしまうという問題がありました。
そこでより詳細なリスク評価をする方法としてCHA2DS2-VAScスコアが考案されました。
DOAC登場後の現在でもCHADS2スコアで低リスクだった患者さんに対して、より詳細なスクリーニングに用いられることがありますので、CHA2DS2-VAScスコアがどのようなものかご紹介しておきます。
リスク因子 | 点数 | |
C | 心不全、左室機能不全 | 1点 |
H | 高血圧 | 1点 |
A | 75歳以上 | 2点 |
D | 糖尿病 | 1点 |
S2 | 脳卒中または一過性脳虚血発作の既往 | 2点 |
V | 血管疾患 (心筋梗塞の既往 末梢動脈疾患,大動脈 プラーク) |
1点 |
A | 65歳以上 74歳以下 | 1点 |
Sc | 女性 | 1点 |
CHADS2スコアでの1点に相当する脳梗塞発症率2.8%/年はCHA2DS2-VAScスコアでは3点程度ですので追加項目となっているVAScの部分にすべて当てはまる方に関してはCHADS2スコアで0点であったとしても抗凝固薬の開始を考慮したほうがよいかもしれませんね。
参照 Camm AJ, et al. 2010146
今回はCHADS2スコアについてご紹介しました。
DOACについてはなかなか開始の提案をする機会はないかもしれませんが、ふらっと処方箋を持ってこられた患者さんなど既往症のわからない患者さんに対して想像力を働かせて接する手助けになれば幸いです。
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