AST(GOT)

この記事を書いた人

杉本進悟(すぎもとしんご)

Chloe Pharmacy 株式会社
高知県出身
研修認定薬剤師
AEAJアロマテラピー検定1級

ASTはアスパラギン酸トランスアミナーゼ(ASpartate Transaminase)の略。
肝臓をはじめ肝臓以外の臓器(心臓、骨格筋、血液)などからの逸脱酵素です。

細胞が傷害されると血液中に流出するため検査値が上昇します。
類似の検査値にALTがあります。

ASTが肝臓以外の臓器にも含まれるのに対し、ALTは主に肝臓に含まれます

そのためASTの大小だけでなくALTと比較をすることで肝臓での病変なのか、それ以外での病変なのかを推測することができます。
半減期は10〜15時間程度でALTの40時間程度と比べて短いという特徴があります。

以前はGOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、Glutamic Oxaloacetic Transaminase)と呼ばれていましたが、近年はASTと表記することが多いです。
どちらも全く同じ酵素、数値です。

基準値の目安

13〜30U/L

分類

ASTとALTの分布の違いから上昇の具合で疾患部位や程度をある程度推測することができます。

  AST優位型 ALT優位型
低下型 人工透析患者、高齢者など  
基準値以上100未満 肝硬変
慢性肝炎、非アルコール性脂肪肝(NASH)
100以上500未満 肝癌、アルコール性肝障害 薬剤性
>500
急性肝炎(活動期)、劇症肝炎、心臓発作など
 

数値上昇の原因となる薬剤

肝機能障害を引き起こす薬剤は非常に多く、完全腎排泄型の薬剤や体内に吸収されない薬剤以外のほとんどの薬剤で薬剤性肝障害が発生するリスクがあります。

そこで厚生労働省発表の「重篤副作用疾患別対応マニュアル薬物性肝障害」で報告が上がっている薬剤を紹介します。

使用頻度が高い薬剤は発生頻度が低くても報告件数は多くなってしまうので、ここで紹介している薬剤を服用したから高頻度で肝機能障害が起こるというわけではない。また逆に紹介されていないから肝障害が起こりづらいというわけでもないのでご注意ください。

抗結核薬

イソニアジド(イソニコチン酸ヒドラジド: INH)、リファンピシン(RFP) 

抗真菌薬

フルコナゾール 、塩酸テルビナフィン 、ピラジナミド 

抗菌薬

ピペラシリンナトリウム、セフォチアム、セファクロル、ミノサイクリン塩酸塩、セファゾリンナトリウム、アンピシリン、セフメタゾー ルナトリウム、ホスホマイシン、クラリスロマイシン、アモキシシリン、スルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウム、イミペネム・シラスタチンナトリウム、セフテラムピボキシル、セフポドキシムプロキセチル、フロモキセフナトリウム

解熱・鎮痛薬

ロキソプロフェン、アセトアミノフェン、総合感冒薬、トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン合剤、ジクロフェナク

精神・神経用薬

カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム 、フェニトイン

代謝疾患用薬

プラバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、アロプリノール、ベンズブロマロン 、グリメピリド 

循環器用薬

アプリンジン、ロサルタン、カルベジロール、ニフェジピン、アムロジピン

消化器用薬

モサプリド、ランソプラゾール、ファモチジン、レバミピド、エソメプラゾール

造血と血液関連製剤

アスピリン、クロピドグレル、ワルファリン、シロシタゾール、チクロピジン

ホルモン剤

チアマゾール、 プロピオチオウラシル、メチルプレドニゾロン、カリジノゲナーゼ、 経口避妊薬(エストロゲン製剤とプロゲステロン製剤の合剤)、レボチロキシンナトリウム

抗アレルギー剤

トラニラスト、オロパタジン、エピナスチン、フェキソフェナジン、ロラタジン、プランルカスト

免疫抑制剤,生物学的製剤(バイオ医薬品)

メトトレキサート (リウマトレックス)、アザチオプリン、シクロスポリン、タクロリムス

抗がん剤

テガフール・ウラシル(UFT)オキサリプラチン、イピリムマブ

漢方薬

小柴胡湯、加味逍遥散、半夏厚朴湯

市販薬やサプリメントにも注意

解熱鎮痛薬や漢方薬などの市販薬をはじめウコン、青汁、茶製品、生姜製品、キノコ類などの健康食品でも薬物性肝障害の報告があります。

肝機能が悪化したという患者さんがいたら内服薬、治療薬、アルコールの摂取のほかに健康食品やサプリメントもあわせて聞き取りするようにしましょう。

参考
厚生労働省重篤副作用疾患別対応マニュアル

 

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