厚労省が公開している一般名処方マスタの導入に係る経過措置期間が終了したことで、診療報酬点数の医科における一般名処方加算1の算定要件として、平成29年4月から後発品の存在する全ての医薬品(2種類以上の後発品があるものに限る)を一般名処方することが必要となりました。
そのため平成29年4月以降、薬局では一般名処方の処方せんを見かけることが多くなったかと思います。
調剤薬局にとっては、一般名処方は柔軟な変更調剤が可能であり、在庫管理面で非常に助かりますよね。
また、後発品への変更調剤のしやすさでは、後発医薬品調剤体制加算(以下、後発品体制加算)に係る後発品への置き換え率アップにも寄与してくれるでしょう。
ところで、政府の掲げる後発品の数量シェア目標80%は、平成29年6月の報道発表において「平成32年9月までに達成」と、従来の期限から半年前倒しされました。
これに伴い、後発品体制加算2の算定要件である置き換え率も平成30年度診療報酬改定で、現状の75%から80%以上へ引き上げられることも十分考えられるでしょう。
個人的には、置き換え率80%以上を達成するためには、アンチ後発品派の患者さんへもそれなりに働きかける必要があり、中々の労力を要するだろうなと感じます。
加えて、在庫増の負担も確実にのしかかってくるだろうと思います。
さて、ここで押さえておきたいことは、後発品への変更調剤や在庫管理の負担がある中で、極力無駄を無くすという観点から、そもそも置き換え率計上の対象とならない先発品や後発品は、後発品体制加算のターゲットから明確に除外しておこうという視点です。
これまで後発品体制加算の置き換え率に計上されていた後発品や先発品の一部が、その対象から除外される等、対象となる医薬品が年々変わってきているからです。
置き換え率80%以上の高い目標達成に備え、後発品体制加算の対象とならない先発品と後発品を体系的に整理し、不要な変更調剤と不要な在庫の適正化に取組むことを提案していきたいと思います。
まず、置き換え率の対象となる医薬品については、厚労省のホームページの「各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報」においてリストアップされており下記のように分類されています。
置き換え率は、
置き換え率=調剤した(3)/(調剤した(3)+調剤した(2))
と定義されます。
そして置き換え率の対象にならないものは大きく下記の2つに分類されます。
後発品体制加算の対象外
=置き換え率の対象外
では、この基本ルールを押さえた上で、置き換え率の対象とならない医薬品を整理していきましょう。
後発品の使用促進の意義は患者負担や医療保険財政の改善であり下記のものは本来の趣旨にそぐわないので、置き換え率の計算対象から除外されます。(★☆は、薬価基準収載品目リスト(以下、薬価収載リスト)上での実際の分類記号)
これらに該当する医薬品は、薬価改定で価格が徐々に下がってきたことに起因するものがほとんどで、先発品と後発品の対の関係であることが多くあります。
代表的なものは下記のとおりです。
☆ラニラピッド錠0.05mg
→★メチルジゴキシン錠0.05mg「タイヨー」
☆イソバイドシロップ70%30mL
→★イソソルビド内用液70%30mL「CEO」
☆アンヒバ坐剤小児用100mg
→★アセトアミノフェン坐剤小児用100mg「JG」
☆メトグルコ錠250mg
→★メトホルミン錠250mgMT「TE」
☆アストミン錠10mg
→★ジメモルファンリン酸塩錠10mg「TCK」
すなわち、これらは置き換え率には計上されないため、特に患者さんにこだわりがない場合は無理に変更調剤する必要はなく、在庫も一方にしぼってもよいかと思います。
このような薬価差のメリットがないために置き換え率から除外されている医薬品は、それほど多くないので、一度厚労省ホームページ上でチェックしてみることをお勧めします。
上記のように変更調剤による薬価差のメリットに主眼を置く一方で、例外的なパターンもあります。
後発品しか上市されていない医薬品の場合、何を調剤しようが価格面でのメリットを生みませんが、
2017年時点のルールでは、後発品しか存在しない医薬品も置き換え率の対象品です。
後発品しか上市されていない医薬品例
剤形と規格が完全に一致しない先発品と後発品のペアというは多くあります。
例)
ただこれらは、変更調剤により先発品から後発品への代替が可能で、薬価差のメリットがあり、全て置き換え率の対象になります。
ところが、次に挙げる先発品と後発品のペアは、変更調剤ができません。
これらは、先発品と後発品で規格が半端に異なっている、又は類似グループ内の剤形でないために、変更調剤で対応できません。
つまり、上記の各先発品は、後発品がない先発品(前述の置き換え率の定義の(1))であると解釈できます。
よって置き換え率の対象外となります。
基礎的医薬品は、一見、先発品と後発品の関係にあるように見えますが、置き換え率の対象外です。
薬価収載リスト上で先発品、後発品に該当しなければ、置き換え率の対象にはならないからです。
(基礎的医薬品の詳細については、バックナンバー「後発医薬品への変更調剤(区分なし・準先発品)」を参照。)
基礎的医薬品例
基礎的医薬品と同じように、局方品も薬価収載リスト上で先発品、後発品に該当しないため、置き換え率の対象外となります。(※局方品は変更調剤もできません。詳しくは、バックナンバー「後発医薬品への変更調剤(区分なし・準先発品)」を参照。)
局方品例
高い置き換え率の達成を見据え、少しでも不要な変更調剤に係る労力や在庫負担を減らすために、今回は、後発品体制加算の対象となる後発品を、対象とならない医薬品を除外するという切り口から整理してみました。
「価格の面から対象外になる医薬品」と、基礎的医薬品や局方品といった「一見先発品と後発品の関係に見えるが、薬価収載リスト上の先発品と後発品ではないために対象外となる医薬品」の2つに大別し対象外となる医薬品を整理しました。
これらの置き換え率対象外の医薬品は、患者さんのこだわりがない限りは変更調剤の必要性が低いことから、先発品と後発品の両方を在庫する必要がなく、いずれか一つの採用だけで良いと考えることができそうです。
本記事が、少しでも現場における効率的な調剤と在庫管理に貢献できれば幸いです。
後発品体制加算の対象外
=置き換え率の対象外
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