ロイコボリンレスキューとは?メトトレキサートの作用機序から考える

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

メトトレキサート(商品名:リウマトレックス)の副作用を防止するために葉酸(商品名:フォリアミン)が併用されるケースがあります。

しかし、メトトレキサートによる重篤な副作用発現時に、通常はフォリアミンでなく活性型葉酸ホリナート(商品名:ロイコボリン)が投与されます。

このことをロイコボリンレスキューロイコボリン救済療法)と呼びます。

「葉酸製剤」フォリアミンと「活性型葉酸製剤」ロイコボリンの違い

葉酸製剤(フォリアミン)は葉酸レダクダーゼやジヒドロ葉酸レダクターゼなどの酵素によって活性型に変換されてDNAの合成に関与します。

一方で、ロイコボリンは細胞の葉酸プールに取り込まれ上記の酵素を介さず活性型葉酸となります。

ロイコボリン・メトトレキサートの作用機序

では、なぜメトトレキサートによって重篤な副作用が生じた場合に、フォリアミンでなく、ロイコボリンが投与されるのでしょうか。

メトトレキサートとロイコボリンの作用部位をみてみましょう。

メトトレキサートは葉酸拮抗薬で、葉酸が活性型になる過程(ジヒドロ葉酸→テトラヒドロ葉酸)を阻害します。
メトトレキサート投与時に葉酸を投与したとしても、葉酸が活性型になるのを邪魔されてしまいます。
そのため、副作用防止目的で葉酸を投与する場合、通常はメトトレキサート最終投与から24〜48時間以内の間隔をあけます。

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図1 メトトレキサート・ロイコボリン作用機序

一方でロイコボリンは活性型になるまでにジヒドロ葉酸レダクターゼによる分解を必要としないため、メトトレキサートとの投与間隔をあけなくても効果を発揮するのです。

このようにメトトレキサートの作用機序を理解しておけば、副作用防止目的には葉酸製剤のフォリアミン、重篤な副作用発現時には活性型葉酸製剤のロイコボリンが使用されるのが納得できるかと思います。

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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