CYP誘導、阻害、基質など添付文書の併用注意・併用禁忌の欄には様々な記載があります。併用注意に関しては実務上はほぼ無視されている現状がありますが、実際にはどの程度代謝に影響を及ぼすのかPISCS(ピスクス)を用いて予測できるようにしましょう
個人的に感じていた、これまでの添付文書の問題点です。
・記載箇所がわかりづらい
・排泄経路について一目でわかりづらい
・相互作用について併用注意は実質的に無視されている
・併用注意がどの程度注意か定量的に記載されていない
今回の改訂内容案の一部を抜粋します。
特に大きなポイントは「原則投与」と「慎重投与」の廃止です。
原則禁忌の代表例としてスタチン製剤とフィブラート製剤の併用があるかと思います。
スタチン製剤とフィブラート製剤を併用した場合、横紋筋融解症の発現率が高くなることから原則禁忌となっていますが、実際には処方されるケースがあります。
また慎重投与については数値化が難しく疑義照会に躊躇される経験もあるのではないでしょうか?
このように、実際には「原則禁忌」や「慎重投与」が機能していない事例が多くあるのが現状です。
添付文書の見直し内容について抜粋します。
(1) 項目の通し番号の設定
○ 「警告」以降の全ての項目に番号を付与、記載すべき内容がない項目は欠番とすることとしました。
○ 「使用上の注意」に該当する項目は項目番号で定義しました。
○ 「効能又は効果に関連する使用上の注意」及び「用法及び用量に関連する使用 上の注意」を項目及び項目番号に含めました。(2) 「原則禁忌」の廃止
○ 「原則禁忌」は廃止し、「禁忌」又はその他の適切な項へ記載することとしました。(3) 「慎重投与」の廃止
○ 「慎重投与」は廃止し、「特定の患者集団への投与」など、その他の適切な項へ記載することとしました。(4) 「特定の患者集団への投与」の新設
○ 「高齢者への投与」、「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」、「小児等への投与」を廃止し、「特定の患者集団への投与」を新設し、「妊婦」「生殖可能な男女」「授乳婦」「小児等」「高齢者」「腎機能障害患者」「肝機能障害患者」等の項目に分けて記載することとしました。(5) 「副作用」に記載する事項
○ 記載されている副作用の臨床的意義をわかりやすくするために、発現頻度の高い副作用や投与の継続に影響を及ぼす主な副作用がある場合は、必要に応じて 「副作用」の前段に概要として記載することとしました。引用元 厚生労働省 医薬・生活衛生局安全対策課
今後想定される添付文書の改正を見据えて、薬物相互作用の定量化に役立つ指標「PISCS(ピスクス)」について解説したいと思います。
PISCS(ピスクス)とは(Pharmacokinetic Interaction Significance Classification System)の略でどの代謝・排泄経路がどの程度影響しているかを相互作用の予測に反映して定量的に評価する手法です。
例えば、ある薬剤Aの代謝にかかわる酵素の50%がCYP3A4だったとして、併用薬剤がCYP3A4を100%阻害したとしたら、薬剤Aの代謝速度が50%に低下するためAUCは200%に上昇することが予測されます。
それを式に表すと
併用時のAUC=本来のAUC/〔1-(代謝酵素の影響割合・阻害割合)〕
となります。
また二つ以上の代謝酵素について影響を受ける場合も同様に
併用時のAUC=本来のAUC/〔1-(代謝酵素Aの影響割合・阻害割合)-(代謝酵素Bの影響割合・阻害割合)・・・〕
という風に予想することができます。
代謝酵素誘導の場合は逆に
併用時のAUC=本来のAUC/〔1+(誘導される酵素の影響割合・誘導により増える酵素の割合)〕
という風に表すことができます。
今まで漠然と併用注意と記載があり、疑義照会するべきかどうか悩む。もしくはしたところで説明のしようがないという事態が多くあったと思います。
このような考え方を用いて定量的に評価をすることができればただ中止、変更することなく用量調節の提案もしやすくなると思います。
しかし、これまでの添付文書の記載方法では代謝にかかる酵素の割合はあまり記載されてなかったので、PISCSを臨床の現場で適用しようと思うと添付文書では不十分で、論文などから代謝酵素の影響する割合や、阻害の程度を探してくる必要がありました。
そこで今回パブリックコメントを募集するということですので私は主な代謝酵素や代謝経路については影響の割合や阻害、誘導についての定量的な情報をある程度載せていただけるようになればと思っています。
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