はじめまして。
新人薬剤師ライターのJと申します。
最初の記事は知っている薬剤師にとってはなんてことのない話ですが、知らない薬剤師にとっては、
えっ!?そうだったの!!
という驚きが得られる内容を書きたいと思います。
2018年5月現在、PPI(プロトンポンプインヒビター)はネキシウムカプセルがメインになってきた薬局が多いと思いますが、ネキシウムカプセルはジェネリックがありませんのでパリエットもまだまだ現役という薬局もあるかと思います。
私が以前働いていた薬局もパリエットが現役の薬局でした。
ある日のこと、薬局の医療事務がパリエット20mgの処方が出ている患者の返戻があったという話をしていました。
その話を耳にして私はすぐに理由が分かりました。
そこでこの記事を見ている方には、まず下記の処方内容が保険上正しいかどうか考えていただけたらと思います。
下記の記載以外の処方せん様式は正しいという前提でお願いします。
Rp1) パリエット20mg 1T
1日1回朝食後 7日分
胸やけがするとのことでPPIを初めて服用する新規患者。
いかがでしょうか?
正解は
保険上正しい
です。
返戻の話をしていたので、間違っていると思った方はいらっしゃいますか?
冗談はさておき、では次の処方です。
Rp1) パリエット20mg 1T
1日1回朝食後 84日分
前回パリエット10mgを服用中の患者、胸やけの症状が良くならないとのことです。
さて、今度はいかがでしょうか?
正解は
保険上正しくない
です。
ではなにがダメなのかというと、日数ですね。
84日分ということは12週です。
パリエット(ラベプラゾール)20mgは通常、胃潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎では8週間まで、十二指腸潰瘍では6週間までの投与制限があるからです。
ここである程度経験のある薬剤師は、
「じゃあ逆流性食道炎の維持療法って書けばいいじゃん。」
っていうと思います。
ところがそれでは不正解です。
まだ検討のついてない方はパリエット10mgとパリエット20mgの添付文書の逆流性食道炎の用法・用量を実際に見ていただければと思います。
逆流性食道炎
<治療>
逆流性食道炎の治療においては、通常、成人にはラベプラゾールナトリウムとして1回10mgを1日1回経口投与するが、病状により1回20mgを1日1回経口投与することができる。なお、通常、8週間までの投与とする。また、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な場合、1回10mg又は1回20mgを1日2回、さらに8週間経口投与することができる。ただし、1回20mg1日2回投与は重度の粘膜傷害を有する場合に限る。
<維持療法>
再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法においては、通常、成人にはラベプラゾールナトリウムとして1回10mgを1日1回経口投与する。また、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法においては、1回10mgを1日2回経口投与することができる。引用元 パリエット錠5 10 20 添付文書
〈用法・用量に関連する使用上の注意>
逆流性食道炎の治療において、病状が著しい場合及び再発性・難治性の場合に1回20mgを1日1回投与することができる(再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な場合は除く)。また、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な患者に対し1回10mg又は1回20mgを1日2回、さらに8週間投与する場合は、内視鏡検査で逆流性食道炎が治癒していないことを確認すること。なお、本剤1回20mgの1日2回投与は、内視鏡検査で重度の粘膜傷害を確認した場合に限る。
引用元 パリエット錠20 添付文書
さて、いかがでしょうか。
ご確認できましたか??
そう、逆流性食道炎の維持療法の適応が10mgにはありますが、20mgにはないんですねえ。
このことを知っていた私は医療事務から話を聞き、やはり8週を超える処方内容であったのを確認し、原因を説明して今回の対応と今後の対策を立てたのでした。
なぜ適応がないことを私が知っていたかというと、
私が最初に働いた薬局は耳鼻咽喉科の門前薬局でパリエットの20mgの在庫がない店舗でした。
ある日他院処方でパリエットの20mgの処方せんを持った患者が来局し、私が思い込みで10mgを誤って調剤してしまうところ、先輩薬剤師が気づいてくれて調剤過誤を防ぐことができました。
その薬局では20mgは逆流性食道炎の維持療法に適応がないため在庫していなかったんです。
このヒアリハット事例は、私の戒めとして今でも心に深く残っています。
パリエット20mgの8週を超える処方があったら、逆流性食道炎の維持療法の適応がないため8週を超えて処方することができない旨の疑義照会をし、パリエット10mgか別のPPIに変える必要があります。
疑義照会の際は処方発行元が査定の対象になる可能性があることも伝えておくとよいでしょう。
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