こんにちは。
メディカルライターの平野菜摘子です。
OS-1(オーエスワン)を代表する経口補水液を、薬局でなんとなく置いている状態になっているケースもあるのではないでしょうか。
うちの薬局にもOS-1を置いてあるけど、勤める前から販売してたし、内容をよく知らない。
OS-1はとりあえず薬局には置いてあって、たまに売れるよね。
そんな薬剤師の皆さんにむけて、乳児〜高齢者へ経口補水液をどう紹介していけばいいのか、自身の子育ても参考にして解説していきたいとおもいます。
患者さんの生活をより良くし、頼れる薬剤師になり、さらには薬局の売上にも繋がる情報になれば嬉しいです。
経口補水液は簡単に言えば、飲む点滴です。
患者さんにもこの言葉で伝えると、インパクトもありますし、イメージがつかみやすいです。
軽度から中等度の脱水状態の時に、点滴では静脈に針で入れますが、経口補水液は、口から水と電解質と糖分を速やかに体に補給できます。
電解質という言葉を聞き慣れない患者さんもいるので、「ナトリウム、カリウムなどの体に必要なミネラル」と伝えても差し支えないでしょう。
例えば、OS−1の製品情報には、病者用食品と書いてあるので、病気のときだけ買うイメージがついている方もいるようですが、そもそも脱水状態に気づいたときには、かなり具合が悪く、場合によっては緊急事態もあり得るので、普段から常備しておくことをお勧めします。
夏場だけでなく、風邪を引いて熱が高い時、下痢・嘔吐時、食欲不振時、スポーツなどで汗をかいた時、猛暑の日に、すぐに飲めるようにしておくことが大切です。
意外と、薬剤師や一般の方にも知られていないのですが、ミルクを飲めるお子さんなら、0歳の赤ちゃんでもOS-1は飲めますし、ゼリータイプも大丈夫です。
OS-1 1日あたり目安量 | |
学童(生後6〜12年)〜成人 | 500〜1000ml /日 |
幼児(生後1〜6年) | 300〜600ml/日 |
乳児(生後1年未満) | 体重1kgあたり30〜50ml/日 |
生後3ヶ月以下の赤ちゃんは、念のため医師に相談してもらったほうがよいでしょう。
子供の風邪、発熱、嘔吐、下痢は突然です。
例えば、夜中に吐いて脱水気味になった時、病院に行きたくても救急に行くしかなく、待ち時間も長くなってしまい、ますます具合は悪化しますので、そんな場合でもすぐに飲ませられるよう、健康なときから、ご家庭に経口補水液を常備することを患者さんに勧めてみてください。
幼い子供は、具合が悪いと、コップや哺乳瓶から経口補水液を飲まないことがあります。
ですが、スプーンで少しずつ口に入れてあげると飲めることもありますし、子供はゼリータイプを好む場合があります。
氷がうまく食べられる2歳前後からでしたら、製氷トレーで水分タイプを凍らせ、1つずつあげるのもおすすめです。
子供は氷が好きなので、食べたがります。
ゼリータイプは凍らすことができません。
子供にOS-1を飲ませるときのコツがこちらに載っていますので参考にしてください。
高齢者は普段から夜中の排尿を気にして、水を飲まなかったり、猛暑でもクーラーをつけずに家の中にいることが多く、脱水症状や、熱中症の危険と隣合わせの方がいらっしゃいます。
高齢者は、世の中の情報が得にくいこともありますので、薬を渡す際に、
「最近、暑いですけど、家でクーラーはつけていますか?水は飲んでいますか?」
などの声かけをきっかけにして、経口補水液について伝えられるといいですね。
高齢者でありがちなのは、経口補水液を薄めて、冷蔵庫に入れてちびちび飲んでいるケースです。
もったいないという精神や、味が濃いと思うからのようです。
薄めると浸透圧が変わってしまい、体内に吸収しにくくなので、そのまま飲むように伝えなければいけません。
「水を飲んでいるから大丈夫。」という人も多いですが、脱水の時に摂ることを忘れがちなのは、水分よりも塩分です。
脱水状態にナトリウム濃度の低い飲料を多く飲むと浸透圧が大きく低下することがあります。そのような場合、私たちの体には脱水状態であっても水分の多くを尿に排泄して血清浸透圧を正常に戻すことを優先する働きがあるので、結果として脱水状態が改善されないことがあります。
引用元 大塚製薬ホームページ
「塩分=血圧に悪い」という患者さんは、ナトリウム、塩分などの言葉を聞くと、急に興味がなくなって、真面目な人ほど、経口補水液を敬遠しがちです。
例えば、大塚製薬のHPによると、OS-1を500ml飲むと、味噌汁1杯分の塩分(1.46g)だそうです。
ラーメンのスープを全部飲み干すような大量の塩分ではないため、脱水や、高熱、病気で食事が取れていない時などは、塩分も体に必要なものなので、飲んだほうがいいと伝えるべきだと思います。
塩分制限を厳密に受けられている方は、医師に相談することをお勧めすると良いでしょう。
経口補水液はスポーツドリンクとどう違うの?
これは販売時によく聞かれる質問です。
スポーツドリンクに比べて、経口補水液は値段が高いことが多いので、疑問に思うのでしょうね。
患者さんには、「医師が開発に携わっており、より体内に吸収されやすく、スポーツドリンクと比べて甘くない」と私は伝えていました。
OS-1の商品紹介ページには、以下の文があります。
経口補水液オーエスワンは、経口補水療法の考え方に基づき、脱水状態において不足している電解質(ナトリウムなどの塩分)を補うために、一般的なスポーツドリンクよりも電解質濃度が高く、また水と電解質の吸収を速めるために、スポーツドリンクと比べて糖濃度は低い組成となっています。
経口補水液の味はよく聞かれる質問です。
「ポカリスエットや、アクエリアスのような味だが、それらスポーツドリンクよりも甘くない」と答えるといいかと思います。
体が経口補水液を欲しているときは甘く感じ、そうでもないときしょっぱく感じるという俗説もありますね。
OS-1を飲んだことがあり、少し塩っぽい味が苦手な人には、味の素の「アクアソリタ」という製品は、好評です。
こちらは、りんご味になっています。
アクアソリタはパウダータイプも市販されているので、旅行先でも持ち歩きやすいので、海外旅行やスポーツ時にどうですか、というアプローチもできます。
アクアソリタは、調剤薬局でも卸経由で卸値で仕入れられます。
参考記事
経口補水液はナトリウムとぶどう糖に注目!
薬局やドラッグストア専売のOS-1を調剤薬局に置くことが、スーパーとの差別化につながりますが、OS-1のパウダータイプは、大塚の通販サイトでしか買えません。
経口補水液はジュースと違って、視覚的に地味なので、ただ陳列しておくだけでは、製品をもともと知っている人にしか売れません。
その点、ポップ(ポスター等の張り紙)は効果的です。
忙しい薬局や、口頭で勧める時間もない薬局は、メーカーからもらったポスターを、患者さんの目線の高さに貼っておくだけでも、意外に待ってる間によく見てくれています。
余裕がある薬局では、ポップは手書きで、適宜、季節ごとなどに変更すると良いでしょう。
私のかかりつけの小児科医によると、脱水時はやはりOS-1などの経口補水液を飲むことが一番、適しているが、味を嫌がり飲まない子がいるとのことでした。
その場合は、母乳、ミルク、麦茶も水分摂取として適しているとのことです。
しかし、嘔吐時には、それらを飲ませても、そのまますぐに全部吐いてしまうのは、普通のことです。
そんな場合は、こまめにスプーンやスポイトなどで、少しずつ頻繁に飲ませることを提案してみてもよいでしょう。
下痢・嘔吐がひどい時にOS-1をあたえる場合、5mlを5分間隔であたえるのが目安とされています。
そうすると胃にたまらず、少しずつ体内に吸収されるようです。
常備しておいてくださいというと、勘違いされやすいのですが、
体に良さそうという理由で、経口補水液やスポーツドリンクを、日常の飲み物として、子供に飲ませている保護者がたまにいます。
これらにはブドウ糖が多く含まれているので、虫歯になりやすく、必要以上の体重増加にも繋がりますので、普段の飲み物は、乳児は母乳かミルク、幼児には水か麦茶を普段は飲ませて、病気などのときだけ、経口補水液を与えるように指導するのがよいでしょう。
病気で、子供に粉薬を飲ませないといけない時、経口補水液のゼリータイプを、スプーンに少量乗せ、粉薬をその上に乗せ、またゼリーを少量乗せてサンドイッチみたいに挟み、そのまま口に運ぶと、うまく飲み込める時があります。
薬と水分が一緒に摂取できるので、一石二鳥です。
ドラッグストア勤めでもないし、薬のことでもないのに、薬剤師がここまでする意味はあるの?という薬剤師も中にはいるかもしれません。
しかし、OS-1のラベルに「医師、薬剤師、看護師、管理栄養士の指導に従ってお飲みください。」と書いてあります。
院内で医師の指導の元、飲ませているクリニックもあります。
医療従事者の薬剤師が勧めるからこそ、製品の信頼度が増し、軽めの症状の時に飲んでいただけることで、脱水などが重症化するのを防げると思います。
こういうちょっとした知識がきっかけで、信頼に繋がり、かかりつけ薬剤師、かかりつけ薬局にしていただけるので、特に新人の皆さんは会話の糸口にしてみてはいかがでしょう?
参考
大塚製薬OS-1製品情報
感染性腸炎等の下痢による脱水症状患者を対象とした OS-1(食品)の水・電解質補給効果の検討
ー市販ミネラルウォーターを対照とした多施設共同並行群間比較試験ー
西 正晴,他:薬理と治療2003;31(10):839-853
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