こんにちは。
メディカルライターのリナです。
口の中が乾いて痛い、ビリビリする、味がよくわからない。
調剤併設ドラッグストアでは、「ドライマウス(口腔乾燥症)」の相談を受けることがあります。
ドライマウスの症状の原因疾患としては
などが挙げられ、それぞれ適切な治療がなされます。
また、糖尿病や腎疾患など内分泌系・循環器系の疾患でもドライマウスの症状が見られることがあります。
しかし最近では、はっきりとした理由はなく、
などと診断されドライマウスを訴える患者さんが来局されますが、正直、治療は難しく苦しんでいる患者さんが多いのではないでしょうか。
最近、患者数が増えるようになった背景には社会的ストレスの増加・服用薬剤の増加・高齢化・咀嚼習慣の変化などが考えられ、ドライマウス外来を設立する病院も増えてきているようです。
ドライマウスの危険性や、上記疾患以外のドライマウスの原因、薬局でも指導できるドライマウスの養生法についてまとめました。
唾液が不足すると、以下のような様々なリスクが生じます。
栄養状態の低下
口の中の乾燥がひどくなると、舌が乾燥し食べることで痛みが生じるとともに、パサパサした水分の少ない食事が食べにくくなります。
入れ歯などをしていれば、唾液量の低下は入れ歯と口腔粘膜が擦れる原因にもなります。
また、口に入った食べ物の味をキャッチする「味蕾(みらい)」という小さな器官は唾液と食べ物が混ざり合った状態で初めて食べ物の味の成分を感じ取っています。
そのため、何を食べても区別がつかず、美味しいという感覚が失われ、食欲も次第に低下していきます。
口腔内の衛生環境の悪化
唾液が不足すると口腔内の雑菌が繁殖しやすくなり、虫歯や歯周病、雑菌の繁殖による口臭などが生じます。
ストレス・鬱
ストレスや鬱はドライマウスの原因にもなるとともに、ドライマウス自体もストレスや鬱の原因になります。
口腔内の痛みのせいで、人と話すことが億劫になれば、外との世界と遮断され、心も病んでしまいます。また、痛みのせいで、食べる楽しみを失ったり、四六時中口の渇きと痛みに耐えることは相当なストレスになります。
先に挙げた大きな疾患や自己免疫疾患以外のドライマウスの原因例として,
が考えられます。
薬の副作用
ドライマウスの原因となる主な薬剤をピックアップします。
薬の副作用が原因であるのであれば、薬剤師としてしっかりチェックしていかなくてはなりません。
《抗うつ剤》
トフラニール(イミプラミン)など三環系
ルジオミール(マプロチリン)など四環系
レクサプロ(エスシタロプラム)などSSRI
サインバルタ(デュロキセチン)などのSNRI
リフレックス(ミルタザピン)などNaSSA
《抗不安薬・睡眠導入剤》
レンドルミン(ブロチゾラム)トリアゾラム(ハルシオンなど)BZP系
マイスリー(ゾルピデム)など非BZP系
《抗精神病薬》
ドグマチール(スルピリド)など
《抗てんかん薬》
テグレトール(カルバマゼピン)など
《抗パーキンソン薬》
アーテン(トリヘキシフェニジル)など
《降圧剤・抗不整脈薬》
アダラート(ニフェジピン)ジルチアゼム(ヘルベッサー)のCa拮抗剤
《抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬》
ポララミン(クロルフェニラミン)など
《消化性潰瘍治療薬》
タケプロン(ランソプラゾール)など
《抗コリン薬・排尿障害治療薬》
トビエース(フェソテロジン)
《気管支拡張剤》
dl-エフェドリンなど
ストレス・自律神経失調症
唾液腺が副交感神経によってコントロールされているため、緊張やストレスによって唾液分泌が低下することによります。
加齢・食生活の変化
加齢により唾液分泌機能そのものが低下します。また柔らかいものばかりを食べていると、噛む筋力が衰え、「噛む」という刺激が脳に伝わりにくくなる為、唾液の減少に繋がります。
ドライマウスと同時に味覚異常を訴える患者さんは、亜鉛不足も疑われます。
亜鉛は味蕾の代謝と働きを助ける役割があり、歳と共にその吸収率は低下していきます。そのため低亜鉛血症の適応が追加になった「ノベルジン(一般名:酢酸亜鉛水和物)」や、「プロマック(一般名:ポラブレジンク)」(適応外)が処方されたり、食事やサプリメントからの積極的な摂取を指導されます。
最近では加齢に関係なく、加工食品に偏った食事ばかりしていると、食品添加物のフィチン酸やポリリン酸などが亜鉛とキレート化合物を作り、体外へ排泄してしまう事もわかってきているようです。
ただし、味覚異常で亜鉛不足が直接的な原因の患者さんは20%程度1)とされています。
直接的な対処法として、処方ではスプレーの人口唾液をよく見かけますが、試してみたことがある方はわかると思いますが・・・独特な味がするので、継続するには難しいように思えます。
薬以外で、自分でできる養生法を挙げてみました。
生活習慣
どの疾患にも共通することですが、
口呼吸の習慣がある人は鼻呼吸にすると、口腔内の乾燥を防ぐことができます。
また、加湿マスクなどのマスクもおすすめです。
水分は、少量ずつでいいのでこまめに摂ります。
一人暮らしの方など、会話の少ない方は唾液が出にくくなるため、歌を歌う、少しでもいいから人と話をする、ということも大切です。
食生活
なるべくしっかり噛めるものを摂ることで、唾液腺が刺激され、唾液は分泌されやすくなります。
早食い習慣のある人はゆっくり噛んで食べるように。塩分の制限などがないのであればスルメなどを間食にしてもいいでしょうし、キシリトールのガムを噛むのも効果的です。
酢の物やレモン・梅干しなど酸っぱいものも唾液の分泌を助けてくれます。
東洋医学では、ストレスなどで体の気の巡りが悪くなると、体液や血液の循環も滞るため、唾液の分泌量が減少していると考えられる場合は気をめぐらせる漢方薬が処方されたり、また慢性病や老化が原因で全身の水分が不足しているような場合は体を潤す漢方が処方されたりします。
一般的には比較的体力があれば「白虎加人参湯」、体力が中程度であれば「麦門冬湯」、体力がない、高齢の方であれば「六味地黄丸」が処方されているようです。
からだを潤してくれる食材としては
などがあります。
マッサージ・舌の体操
唾液の分泌を促すための、唾液腺のマッサージも効果的で、強く押す必要はないのでお風呂に入りながらや、テレビを見ながらなど、リラックスした状態で行えるといいでしょう。
参考URL
その口の乾きと口臭、ドライマウスかも?原因と対策を教えます! |LIONホームページ
ドライマウスは薬物治療だけでは治療が難しい疾患ですが、患者さんの症状を少しでも改善できればと思います。
ドライマウスの症状は思っている以上に苦痛が多く、お話を聞いていると「できることはなんでもしたい!」という方が多いです。
養生法など、服薬指導時のアドバイスとして役に立てていただけると幸いです。
参照文献
1) 愛場 庸雅:味覚障害患者の動向 P137-138
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