こんにちは。
薬剤師ライターのJです。
今回は眼科領域の炭酸脱水素酵素阻害剤の調剤ミスの事例をご紹介したいと思います。
昔は手書きの処方せんが多かったと思いますが、最近では印字された処方せんがメインになっているかと思います。
私の経験上でも手書きの処方せんはあまり見なくなってきました。
しかし、当然ながら手書きの処方せんは存在し、達筆なドクターの文字の解読に苦労している方もいらっしゃると思います。
私が経験した調剤過誤事例も達筆なドクターの文字によるものでした。
ある患者さんの処方せんでコソプト配合点眼液(炭酸脱水酵素阻害薬+β遮断薬)が処方されていました。
前回の薬歴によると前回の処方ではエイゾプト懸濁性点眼液(炭酸脱水酵素阻害薬)が出ていました。
そこで患者さんに薬の変更についてドクターから話があったか確認したところ、特に変わるという話は聞いてないとのことでした。
前々回の薬歴ではチモプトール点眼液0.5%(β遮断薬)とエイゾプト懸濁性点眼液(炭酸脱水酵素阻害薬)が出ていました。
うーん、なんか嫌な予感がするなと思い、まずは前回の処方せんを確認してみると…
エイゾ…いや、コソプトじゃないかな、
これ。
達筆だったのでエイゾプトに見えなくもなかったですが私にはコソプトに見えました。
事情をドクターに確認したところやはり前回の処方はコソプトであり、今回も前回と同じコソプトでした。
幸いにも患者さんの症状は安定していたので大丈夫でしたが、薬を間違えて渡してしまったのは大きな落ち度です。
同じミスを二度と起こさないように再発防止策を全員で共有しました。
ご紹介した調剤過誤事例ですが、たとえエイゾプトと読み違えてしまっても防げる方法は二つありました。
一つは患者との対話で今まで使っていた2剤の薬から別の新しい1剤に代わる話を聞き出すこと。
もう一つは、炭酸脱水酵素阻害剤は通常単剤では用いられないことを理解していることです。
エイゾプト懸濁性点眼液の効能効果に、
「他の緑内障治療薬が効果不十分又は使用できない場合」
と条件がついています。
つまり他の薬が効果不十分の時に追加で処方されるか、他の薬が使用できないときに単剤で処方されるといった形になります。
炭酸脱水酵素阻害剤の眼圧降下作用はPG(プロスタグランジン)製剤やβ遮断薬と比べると弱いため、通常は単剤で用いられないのですね。
このことを知っていれば、この処方は変だなと気づくことができたでしょう。
もっとも別のドクターでエイゾプトの単剤処方が出ており、ドクターに問い合わせたところ
「症状落ち着いているからエイゾプトだけで大丈夫」
と言われたこともあるので、まったく単剤で用いられないわけではないです。
いずれにしても2剤から1剤に薬が減っている場合は間違った薬に変更になっていないか注意が必要です。
今回紹介した調剤過誤の事例はちょうど配合点眼液が発売になった時期の話です。
配合錠や配合点眼液は現在も増え続けているので、今後も新しい配合薬が処方されるようになったときは処方薬が間違っていないか特に注意するようにしましょう。
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