妊娠・授乳中に安全な第二世代抗アレルギー薬

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

「妊娠中に安全な抗アレルギー薬は?」
「抗アレルギー薬服用中に授乳を中止しなくていい?」

Drや患者さんから、このような質問を受けた経験はないでしょうか?

日本の添付文書ではほとんどの抗アレルギー薬が

妊婦へは治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与すること

となっています。

そのため添付文書やインタビューフォームだけでは、どの薬剤が安全なのか判断が難しいですよね。

また授乳時の投与についても、ほとんどの抗アレルギー薬が

やむをえず服用する場合は授乳を中止させること

となっています。

日本では少しでも母乳に移行する場合「授乳を中止すること」となっていますが、実際に母乳に移行する薬剤の量はごくわずかで赤ちゃんへの影響が問題にならないケースがほとんどです

妊娠、授乳中に比較的安全に服用できる抗アレルギー薬について海外の基準を参考にまとめてみました。

 

「妊娠と抗ヒスタミン薬」米国FDA・オーストラリア基準の比較

 

薬品名 成分名 添付文書 FDA  オースト
ラリア
アレグラ フェキソフェナジン 有益性上回る場合 B2
アレジオン エピナスチン  有益性上回る場合  
アレロック オロパタジン  有益性上回る場合  
エバステル エバスチン  有益性上回る場合     
クラリチン ロラタジン  避けることが望ましい B1
ザイザル  レボセチリジン 有益性上回る場合  B2 
ジルテック  セチリジン 有益性上回る場合 B2
タリオン  ベポタスチン  有益性上回る場合    
ニポラジン  メキタジン 避けることが望ましい    

 

代表的な第二世代の抗ヒスタミン薬についてピックアップしました。

日本の基準では

「有益性が危険性を上回る場合のみ投与すること」
「避けることが望ましい」

のどちらかになっています。

そのため、どの抗アレルギー薬がより安全なのか判断が難しいかと思います。

そんな時に参考にするのが米国FDA基準オーストラリア基準です。

米国FDAやオーストラリアの基準を参考にすると、

クラリチン(成分名:ロラタジンジルテック(成分名:セチリジンザイザル(成分名:レボセチリジン)がより安全となっています。

またアレグラ(成分名:フェキソフェナジン)もFDAの基準は「C」ですが妊婦さんに処方される傾向にあります。

米国のFDA基準について詳細はこちらに記載されています。

妊娠・授乳中の薬の安全性・危険度・影響の基準表

オーストラリア基準についてはこちらを参考にしてください。

オーストラリア基準(お薬110番)

 

Medications and Mothers’ Milk 2012基準

授乳中と薬について、薬局でも相談される機会が多いのではないでしょうか。

添付文書上ではほとんどの抗アレルギー薬が

「授乳を避けること」
「授乳を中止すること」

となっています。

しかし実際は母乳に移行する薬の量はごくわずかで、影響がでないことがほとんどです。

そのためDrからも授乳を中止しなくても大丈夫と指導されるケースがあります。

では、どの薬剤が授乳中により安全なのでしょうか。

授乳と薬の関係について参考になる海外の基準がMedications and Mothers’ Milk 2012基準です。

「Medications and Mother’s Milk」はL1~L5まで5段階のランクがあるのですが、数字が少ないほど安全となっています。

代表的な第二世代抗アレルギー薬についてピックアップしました。

薬品名 成分名 添付文書 milk 
アレグラ フェキソフェナジン 中止 L2
アレジオン エピナスチン  中止  
アレロック オロパタジン  中止  
エバステル エバスチン  避ける  
クラリチン ロラタジン  避ける L1
ザイザル  レボセチリジン 避ける L2
ジルテック  セチリジン 避ける L2 
タリオン  ベポタスチン 避ける  
ニポラジン  メキタジン 中止  

 

第二世代抗ヒスタミン薬の中では

クラリチン(成分名:ロラタジン)が最も安全のL1。

アレグラ(成分名:フェキソフェナジンザイザル(成分名:レボセチリジンジルテック(成分名:セチリジン)がL2で比較的安全となっています。

授乳中に服用して問題ないか調べるときには添付文書よりも「Medications and Mother’s Milk」を参考にするとよいでしょう。

今日の治療薬にも記載されています。

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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