ロナセンテープ使い方・用量・注意事項まとめ

この記事を書いた人

杉本進悟(すぎもとしんご)

Chloe Pharmacy 株式会社
高知県出身
研修認定薬剤師
AEAJアロマテラピー検定1級

2019年9月10日に統合失調症治療薬であるロナセン錠のテープ製剤、ロナセンテープ(一般名:ブロナンセリン)が発売となりました。

統合失調症治療薬ではテープタイプは国内初となり期待も高い薬剤です。

しかし注意事項も多くありますので、ロナセンテープについて薬剤師が知っておく必要があることをまとめました。

目次

テープ剤のメリットデメリット

禁忌

効能または効果

用法、用量及び貼付部位

海外での使用状況

光線過敏症に注意

接触性皮膚炎に注意

剥がれてしまった場合

廃棄する際の注意

経口製剤との切り替え方法

経口製剤とテープ製剤のAUC比較

半分に切っての使用は可能?

等価用量

BPSDに対する投与について

 

テープ剤のメリットデメリット

メリット

  • 安定した血中濃度が期待できる
  • 血中濃度ピークをあまり作らないコントロールが可能なためふらつき、眠気を抑えた効果発現が期待できる
  • 過量投与による副作用発現が疑われた際に速やか剥がすことができる
  • 使用したかどうかの確認が容易にできる
  • 介護者が使用しやすいため服用管理が困難な患者に使用しやすい

デメリット

  • 効果発現に時間がかかる(添付文書上、定常状態に達するのは7日目以降と記載があります)
  • かぶれることがある
  • 一包化をしている場合、内服に加えて貼付の手間が発生する
  • 剥がし忘れると過量投与の原因となる

禁忌

禁忌(次の患者には使用しないこと)

(1)昏睡状態の患者〔昏睡状態が悪化するおそれがある。〕

(2)バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者〔中枢神経抑制作用が増強される。〕

(3)アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く)

(4)アゾール系抗真菌剤 (外用剤を除く)(イトラコナゾール、ボリコナゾール、ミコナゾール、フルコナゾール、ホスフルコナゾール)、HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビル、インジナビル、ロピナビル・リトナビル配合剤、ネルフィナビル、サキナビル、ダルナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル)、テラプレビル、コビシスタットを投与中の患者

(5)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

効能または効果

統合失調症

用法、用量、貼付部位

通常、成人にはブロナンセリンとして40mgを1日1回貼付するが、患者の状態に応じて最大80mgを1日1回貼付することもできる
なお、患者の状態により適宜増減するが、1日量は80mgを超えないこと。
本剤は、胸部、腹部、背部のいずれかに貼付し、24時間ごとに貼り替える

海外での使用状況

本製剤は日本が最初の承認国のため、2019年時点で海外での使用はありません。
また、ロナセン錠に関しても日本以外では2019年時点で中国、韓国のみでの販売となっています。

光線過敏症に注意

内服薬にはない副作用として光線過敏症の副作用が報告されています。

このためテープタイプの薬剤は貼付部位が腕・胸・背中のいずれかとなっているものが多いですが本製剤の貼付部位は胸部・腹部・背部となっています。

貼付部位が直射日光に触れないよう指導をしましょう。

接触性皮膚炎に注意

テープタイプの薬剤のためかぶれる恐れがあります。
同一部位への貼付は吸収率の上昇から血中濃度の上昇などを引き起こすこともありますので必ず毎回貼付部位をずらして貼付する、かぶれやすい人には保湿をしてから貼付することをおすすめします。

剥がれてしまった場合

再貼付可能ですが剥がれやすくなってしまうためサージカルテープなどで抑えることが推奨されています。

廃棄する際の注意

使用終了後も薬剤が膏体の中に含まれているため貼付面を内側にして半分に折るなどしての廃棄が推奨されています。

経口製剤との切り替え方法

経口製剤からテープ剤への切り替え

ロナセン錠からロナセンテープへの切り替えは次の投与予定時刻から切り替え可能となっていますのでお風呂上がりに貼付する場合は夕食後の服用分から切り替えるよう指導しましょう。

用量に関しては臨床試験時の用量を参考に選択するよう記載されていますので臨床試験時の用量換算表を示します。

ロナセン錠剤とテープ製剤の用量換算表

ロナセン錠用量

ロナセンテープ用量

8mg/日

40mg/日

12mg/日

60mg/日

16mg/日

80mg/日

テープ剤から経口製剤への切り替え

テープ剤から経口製剤へ切り替える場合は1回4mg1日2回食後から開始し、徐々に増量すること

経口製剤とテープ製剤のAUC比較

各添付文書の情報から定常状態でのAUCで力価の比較をしました。

健康成人に10日間反復投与したときの最終投与時のAUC

ロナセン錠2mg 
0−12時間

ロナセンテープ40mg 
0−24時間

3.22±1.1(ng・h/mL)

21.05±9.4(ng・h/mL)

※ロナセン錠は分2のため12時間までのAUCです。

この比較からロナセンテープ40mgの反復投与時のAUCはロナセン錠2mgの約6.5倍のため
ロナセンテープ40mg/日≒ロナセン錠13mg/日
となることが予測されます。

が、

ブロナンセリンには活性代謝物が存在しており、初回通過効果をうける経口薬剤と異なりテープ剤は初回通過効果を受けないため単純にブロナンセリンの血中濃度では比較できません。

また臨床試験の情報からはむしろ変更後のほうがPANSSスコアは良好だったようですので、添付文書にある臨床試験どおりに換算した上で効果を評価することを推奨します。

半分に切っての使用は可能?

少量から開始したい場合などに20mg製剤を半分に切っての使用は可能かをメーカーに問い合わせたところ「臨床試験を行っていないため答えられない」との返答をいただきました。

しかし本製剤は薬剤を含む膏体をライナーと支持体で挟んだ製剤であり、ニトロダームTTSなどのように放出制御膜を使用したものではないため半分に切っての使用は個人的には可能と考えます。
ただし、あくまでも添付文書上は「はさみ等で切って使用しないこと」と記載されていますので切っての使用は推奨しません。
また保険給付や副作用救済制度の対象外となる可能性がありますのでご注意ください。

等価用量

ロナセンテープ20mg(ブロナンセリン)

リスペリドン1mg

オランザピン2.5mg

クエチアピン66mg

※ブロナンセリンのクロルプロマジン換算と臨床試験時の換算を参考に算出

BPSDに対する投与について

日本神経学会編「認知症疾患診療ガイドライン2017」にBPSDに対するリスペリドン・クエチアピンなどの非定型抗精神病薬の有用性について記載があります。

ただしロナセンテープも含め、BPSDに対する使用は適用外のため十分に説明を行いましょう。

また抗精神病薬を使用して興奮・せん妄に対処することの正当性は常に意識しながら使用する必要はありますし、非薬物療法は薬物療法に優先して行われるべきだと考えます。
しかしご本人の自立が困難な状況にもかかわらず興奮・せん妄などにより介護困難となっているなど、やむを得ず抗精神病薬を使用している状況は多く見られます。

本製剤は即効性がないため緊急時の使用には適しませんが介護者による使用が容易なためBPSDにより介護が困難となっている患者に対する使用されることが予想されます。
その場合は換算表などを参考に少量から開始するなど注意が必要です。

参考
ロナセン錠 添付文書・インタビューフォーム
ロナセンテープ 添付文書・インタビューフォーム
稲垣 中, 稲田俊也: 第18回:2006年度版向精神薬等価換算. 臨床精神薬理 9:1443-1447, 2006.
稲垣 中, 稲田俊也: 第20回:抗精神病薬注射製剤の等価換算. 臨床精神薬理 10:2373-2377, 2007.
稲垣 中, 稲田俊也: 第21回:新規抗精神病薬の等価換算(その5)Blonanserin. 臨床精神薬理11:887-890, 2008.
認知症疾患診療ガイドライン2017

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