こんにちは、メディカルライターのサエです。
前回はCKDの定義、原因、経過、治療について述べましたが、今回からはCKDにおける薬物治療について詳しく述べていきます。
第1回目はCKDの降圧薬による治療についてです。
CKD患者は高血圧症を合併していることが多く、高血圧により腎機能は低下していきます。
CKD患者の降圧目標は140/90mmHgとされていますが、糖尿病または蛋白尿がある場合は130/80mmHgとより厳格になっています1)。
糖尿病合併CKD、蛋白尿がある場合に第一選択薬となるのが、レニン・アンジオテンシン(RAS)阻害薬であるアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)です。
ACEIとARBは尿蛋白を減少させ、腎保護効果があるからです。
糖尿病もなく、蛋白尿もないCKD患者の場合は降圧薬の種類は問わず、患者の病態に合わせて選択します。
「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」では糖尿病非合併で正常蛋白尿の場合の第一選択薬は、RAS阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬を推奨しています(推奨グレードB)。
いずれも第一選択薬により降圧目標が達成できなかったら、併用療法となります。
第一選択薬がRAS阻害薬なら主に長時間作用型Ca拮抗薬、サイアザイド系利尿薬、長時間作用型ループ系利尿薬などが併用で用いられます2)。
CKDで用いられる代表的な降圧剤についてピックアップします。
ACEI
ARB
他のクラスの降圧薬と比較して尿蛋白減少効果が優れています。
RAS阻害薬の腎保護効果は尿蛋白・アルブミン排泄量が多いほど期待できます2)。
ACEIとARBの副作用として高カリウム(K)血症がありますが、腎機能が低下しているCKD患者には特に起こりやすいので、服用初期には採血などを行って注意していく必要があります。
直接レニン阻害薬について アリスキレンフマル酸塩(ラジレス)は直接レニン阻害薬(DRI)でありRAS阻害薬に分類されます。
直接レニン阻害薬(DRI)はARBとの併用で尿蛋白の減少が報告されていますが、CKD合併高血圧におけるエビデンスが不十分なため、使用する場合は高K血症などに注意する必要があります。
また糖尿病合併またはCKDステージG3a(軽度~中等度低下)以降のCKD患者においては、DRIと他のRAS阻害薬(ACEI、ARB)の併用は条件付きの禁忌となっています2)3)。
抗アルドステロン薬について 抗アルドステロン薬を追加すると尿蛋白の減少がしますが、高K血症の危険性が高まるので注意しなければなりません。
ただし、エプレレノン(商品名:セララ)は糖尿病性腎症及びクレアチニンクリアランス50mL/min未満のCKD患者には禁忌です3)。
長時間作用型Ca拮抗薬は動脈硬化が進行して血圧変動の大きい心血管疾患(CVD)ハイリスク症例やⅢ度高血圧(第一選択薬投与前及び第一選択薬投与開始後において収縮期血圧180mmHg以上、あるいは拡張期血圧110mmHg以上)症例に推奨されています2)。
一部のL型Caチャネル阻害作用に加えてN型やT型Caチャネル阻害作用も併せ持つCa拮抗薬(アゼルニジピン、ベニジピンなど)に尿蛋白減少作用が認められています。
サイアザイド系利尿薬
ループ系利尿薬
サイアザイド系利尿薬は浮腫などの体液過剰の場合に推奨されます。
CKDステージG1~G3ではサイアザイド系利尿薬、ステージG4~G5においては長時間作用型ループ系利尿薬が推奨されています2)。
サイアザイド系利尿薬は腎機能が低下し、血清Cr値が2mg/dLを超えると効果が期待できませんが、ループ系利尿薬は腎機能が低下しても効果は期待できますと言われています1)。
なお、CKDステージG4~G5において効果不十分な場合はサイアザイド系利尿薬とループ系利尿薬の併用が認められています。
CKD Stage表
ステージ | GFR (mL/min/1.73m2) | |
G1 | 正常または高値 | ≧90 |
G2 | 正常または軽度低下 | 60~89 |
G3a | 軽度~中等度低下 | 45~59 |
G3b | 中等度~高度低下 | 30~44 |
G4 | 高度低下 | 15~29 |
G5 | 末期腎不全(ESKD) | <15 |
参照 「腎機能別薬剤投与量」
α遮断薬
β遮断薬
中枢性交感神経遮断薬
α遮断薬、β遮断薬、中枢性交感神経遮断薬は、CKDにおけるエビデンスがありませんが、降圧によるCKD進行抑制効果は期待できます2)。
今回はCKDにおける降圧薬の選択についてお伝えしました。
CKD進行予防のためには血圧管理はとても重要ですが、降圧薬は種類がたくさんあり、患者さんの病態によって選択されたり、数種類を併用したりと使用方法は複雑だと思います。
私も調剤薬局で働いていた時は、どうして薬が変わったのか、増えたのかといった質問を多くのCKD、透析患者さんから受けました。
今回の記事が少しでも現場の薬剤師さん達に役立てれば幸いです。
参考文献
1)「患者さんとともに理解するCKDと血液透析」
2)「CKD診療ガイド2012」
3)「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」
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