CKDにおける薬物治療について~高血圧治療~

この記事を書いた人

サエ

薬剤師
東邦大学 薬学部卒

こんにちは、メディカルライターのサエです。

前回はCKDの定義、原因、経過、治療について述べましたが、今回からはCKDにおける薬物治療について詳しく述べていきます。

第1回目はCKDの降圧薬による治療についてです。

CKD患者の降圧目標

CKD患者は高血圧症を合併していることが多く、高血圧により腎機能は低下していきます。

CKD患者の降圧目標は140/90mmHgとされていますが、糖尿病または蛋白尿がある場合は130/80mmHgとより厳格になっています1)

CKDに処方される降圧薬

糖尿病合併CKD、蛋白尿がある場合に第一選択薬となるのが、レニン・アンジオテンシン(RAS)阻害薬であるアンジオテンシン変換酵素阻害薬ACEI)、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬ARB)です。

ACEIとARBは尿蛋白を減少させ、腎保護効果があるからです。

糖尿病もなく、蛋白尿もないCKD患者の場合は降圧薬の種類は問わず、患者の病態に合わせて選択します。

「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」では糖尿病非合併で正常蛋白尿の場合の第一選択薬は、RAS阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬を推奨しています(推奨グレードB)。

いずれも第一選択薬により降圧目標が達成できなかったら、併用療法となります。

第一選択薬がRAS阻害薬なら主に長時間作用型Ca拮抗薬サイアザイド系利尿薬長時間作用型ループ系利尿薬などが併用で用いられます2)

CKDで用いられる代表的な降圧剤一覧

CKDで用いられる代表的な降圧剤についてピックアップします。

RAS阻害薬

ACEI

  • イミダプリル塩酸塩(タナトリル)
  • エナラプリルマレイン塩酸塩(レニベース)
    など

ARB

  • アジルサルタン(アジルバ)
  • イルベサルタン(イルベタン・アバプロ)
  • オルメサルタン メドキソミル(オルメテック)
  • テルミサルタン(ミカルディス)
  • バルサルタン(ディオバン)
  • カンデサルタン シレキセチル(ブロプレス)
  • ロサルタンカリウム(ニューロタン)

他のクラスの降圧薬と比較して尿蛋白減少効果が優れています。

RAS阻害薬の腎保護効果は尿蛋白・アルブミン排泄量が多いほど期待できます2)

ACEIとARBの副作用として高カリウム(K)血症がありますが、腎機能が低下しているCKD患者には特に起こりやすいので、服用初期には採血などを行って注意していく必要があります。

直接レニン阻害薬について アリスキレンフマル酸塩(ラジレス)は直接レニン阻害薬(DRI)でありRAS阻害薬に分類されます。

直接レニン阻害薬(DRI)はARBとの併用で尿蛋白の減少が報告されていますが、CKD合併高血圧におけるエビデンスが不十分なため、使用する場合は高K血症などに注意する必要があります。

また糖尿病合併またはCKDステージG3a(軽度~中等度低下)以降のCKD患者においては、DRIと他のRAS阻害薬(ACEI、ARB)の併用は条件付きの禁忌となっています2)3)

抗アルドステロン薬について 抗アルドステロン薬を追加すると尿蛋白の減少がしますが、高K血症の危険性が高まるので注意しなければなりません。

ただし、エプレレノン(商品名:セララ)は糖尿病性腎症及びクレアチニンクリアランス50mL/min未満のCKD患者には禁忌です3)

Ca拮抗薬

  • ニフェジピンCR(アダラートCR)
  • アムロジピン(ノルバスク、アムロジン)
  • アゼルニジピン(カルブロック)
  • ベニジピン(コニール)
    など

長時間作用型Ca拮抗薬は動脈硬化が進行して血圧変動の大きい心血管疾患(CVD)ハイリスク症例Ⅲ度高血圧(第一選択薬投与前及び第一選択薬投与開始後において収縮期血圧180mmHg以上、あるいは拡張期血圧110mmHg以上)症例に推奨されています2)

一部のL型Caチャネル阻害作用に加えてN型T型Caチャネル阻害作用も併せ持つCa拮抗薬(アゼルニジピン、ベニジピンなど)に尿蛋白減少作用が認められています。

利尿薬

サイアザイド系利尿薬

  • トリクロルメチアジド(フルイトラン)
  • ヒドロクロロチアジド(ヒドロクロロチアジド「トーワ」)
    など

ループ系利尿薬

  • トラセミド(ルプラック)
  • フロセミド(ラシックス)
  • アゾセミド(ダイアート)

サイアザイド系利尿薬は浮腫などの体液過剰の場合に推奨されます。

CKDステージG1~G3ではサイアザイド系利尿薬、ステージG4~G5においては長時間作用型ループ系利尿薬が推奨されています2)

サイアザイド系利尿薬は腎機能が低下し、血清Cr値が2mg/dLを超えると効果が期待できませんが、ループ系利尿薬は腎機能が低下しても効果は期待できますと言われています1)

なお、CKDステージG4~G5において効果不十分な場合はサイアザイド系利尿薬とループ系利尿薬の併用が認められています。

CKD Stage表

ステージ GFR (mL/min/1.73m2)
G1 正常または高値 ≧90
G2 正常または軽度低下 60~89
G3a 軽度~中等度低下 45~59
G3b 中等度~高度低下 30~44
G4 高度低下 15~29
G5 末期腎不全(ESKD) <15

参照 「腎機能別薬剤投与量」

その他の降圧薬 

α遮断薬

  • ドキサゾシンメシル酸塩(カルデナリン)
     など

β遮断薬

  • セリプロロール塩酸塩(セレクトール)
  • アテノロール(テノーミン)
    など

中枢性交感神経遮断薬

  • メチルドパ水和物(アルドメット)
    など

 
α遮断薬、β遮断薬、中枢性交感神経遮断薬は、CKDにおけるエビデンスがありませんが、降圧によるCKD進行抑制効果は期待できます2)

おわりに

今回はCKDにおける降圧薬の選択についてお伝えしました。

CKD進行予防のためには血圧管理はとても重要ですが、降圧薬は種類がたくさんあり、患者さんの病態によって選択されたり、数種類を併用したりと使用方法は複雑だと思います。

私も調剤薬局で働いていた時は、どうして薬が変わったのか、増えたのかといった質問を多くのCKD、透析患者さんから受けました。

今回の記事が少しでも現場の薬剤師さん達に役立てれば幸いです。

参考文献
1)「患者さんとともに理解するCKDと血液透析」
2)「CKD診療ガイド2012」
3)「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」

この記事を書いた人

サエ

薬剤師
東邦大学 薬学部卒

東邦大学大学院薬学研究科で修士課程修了後、都内の病院で薬剤師として勤務。その後、調剤薬局へ転職。東京、千葉、福島にて勤務経験あり。
現在は石川県で育児の傍ら勉強中。英会話が趣味で、TOEIC810点取得。

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