ニンニク食べて元気モリモリ!?だけではない、ニンニク研究の最前線!

この記事を書いた人

工藤 知也(くどうともや)

エビデンスエージェント代表
薬剤師
博士(医学)

こんにちは。
健康食品を担当しているエビデンスエージェントの工藤知也です。

これから暑くなると夏バテが心配です。
すると思いつく食品は「ニンニク」ではないでしょうか!
ニンニクの独特の風味が食欲をそそります。

ニンニクの健康研究は、歴史があり膨大な報告があります。
特にがんと血管の話題が多いようです。
今回は血管との関係に着目して、患者さんとの会話ネタを提供できればと思います。

ニンニクが動脈硬化の面積を減少させる?

昨年の米国栄養学会誌(Journal of Nutrition)に湧永製薬のMoriharaらは、
熟成ニンニク抽出液が動脈硬化面積を減少させると報告しました。

素朴な疑問ですが、動脈硬化なんてどうやって調べるのでしょうか?

ここでは、アポリポ蛋白Eを発現しないマウス(以下、ノックアウトマウス)を使っています。
HDLなどのリポ蛋白の構成成分であるアポリポ蛋白Eは、コレステロールや脂肪酸の運搬を担っており、発現しないと動脈硬化になってしまうのです。

さて筆者らは、熟成ニンニク抽出液をノックアウトマウスに12週間から24週間与えて、 血液, 動脈そして脾臓を解析しました。
もちろんコレステロールや中性脂肪の濃度も測定しています。

結果は、ノックアウトマウス(対照グループ)の動脈硬化面積は健常なマウスの114倍に増加していましたが、熟成ニンニク抽出液を12週摂り続けたグループでは、動脈硬化面積が対照グループと比べて22%減少していたそうです。

また、コレステロールや中性脂肪濃度の増加を24週で約20%抑制しており、
筆者らは熟成ニンニク抽出液が動脈硬化初期で起こる血管への脂肪の蓄積を抑制すると考えています1)

それでは、ヒトでも言えるのでしょうか?

カリフォルニア大学のMatsumotoらは、昨年の米国栄養学会誌にヒトでの熟成ニンニク抽出物による動脈硬化面積の減少効果を報告しています。

方法は、27名のメタボリックシンドローム患者に1日2400mgの熟成ニンニク抽出物を摂取してもらい、CTの低吸収域(閉塞動脈流域に認める)を1年間フォローしています。

すると低吸収域の変化は、対照グループでは0.2%の増加に対して熟成ニンニク抽出物摂取グループでは1.5%の減少と有意差を示していました2)

プラークを安定化させる効果があるか否かは不明ですが、今後の研究に期待です。
また、心血管イベントによる死亡率への影響を将来的には評価してほしいものです。

ニンニクは生活習慣病予防の強い味方?

2013年までに発表された熟成ニンニク抽出物のヒトに対する健康効果データをメタ解析にかけると、血圧やコレステロール値への影響も浮かびあがってきます。

オーストラリアのRiedは、
収縮期で約5mmHg, 拡張期で約2mmHgの降圧や、
総コレステロールが200より高値の方が2カ月以上熟成ニンニク抽出物を摂ることで、
LDLを10%減少させる効果を報告しています3)

リバプール・ジョン・ムーアズ大学のRahmanらは、米国栄養学会誌に熟成ニンニク抽出物がヒト血小板の凝集を阻害すると報告しています。

血小板が凝集する過程では、血小板内のカルシウム上昇が可溶性アデニル酸シクラーゼやグアニル酸シクラーゼの活性阻害に働きます。
これによりcAMPやcGMPが減少して、フィブリンーゲン受容体の活性化を引き起こし、さらなる血小板凝集を誘導します。

血小板を化学的(可溶性グアニル酸シクラーゼの阻害剤など)に処理して、顕微鏡とフィブリンへの接着で凝集を確認しています。
誘導する化合物に依存して凝集の阻害能が異なるようです4)

「血液サラサラ」なんて患者さんには話しますが、 ニンニクが血管の中で血の塊を防ぐために働いてるとは驚きでした。

また、免疫機能を修飾するデータもあり、免疫細胞(リンパ球, NK細胞やマクロファージ)を増加させて、呼吸器感染症の数・期間・重症度を改善するとしています3)

最新のニンニク研究は遺伝子レベル!

ニンニクの健康効果はコレステロール値や血圧だけでなく、
今日では酵素活性や遺伝子の発現制御などの生化学を用いた手法を使います。
特に最新報告では「遺伝子発現の制御」が焦点になります。

ニンニクの本質的な効果効果はここにあるのでしょうね。

遺伝子制御の研究は実験動物を使って行いますが、
本当はヒトで確認したいところです。

これまで制約があり進まなかったヒトでのニンニクによる遺伝子制御の理解ですが、
血液を使うことによって進展しているようです5)

前回のココアでもお話ししましたが、
食品が遺伝子制御に影響しているとは、日頃の食事をおろそかにはできません。

高齢者にもニンニク

薬局には、高齢者がたくさん訪れますね。

その中には最近元気がないなと感じる方もいらっしゃいます。
話を聞いてみると、「食欲が減ってきた」という方も。

高齢者で食欲が減退して体重が減ると、肺炎やCOPDの予後が心配になります。

ニンニクの健康効果を考えてみると、高齢者におススメしたい食材ですね。

まとめ

今回は、ニンニクによる血管, 血圧, 脂質, 血小板そして免疫への影響に注目しました。 ニンニクといっても今回紹介した論文ではすべて熟成ニンニク抽出物を使っていましたね。

ニンニクに限らず熟成とかいてあると何かおいしそうに感じますが、 味覚だけでなく機能も優れているようです。

身近な食材にも意外な健康効果が隠れているかもしれません。
食材に対する「気づき」を与えて、栄養を意識した生活を提案していきたいものです。

引用文献

1) Morihara N, et al. Aged garlic extract suppresses the development of atherosclerosis in apolipoprotein E–knockout mice. J Nutr. 2016; 146(2): 460S-463S. PMID: 26764329

2) Matsumoto S, et al. Aged garlic extract reduces low attenuation plaque in coronary arteries of patients with metabolic syndrome in a prospective randomized double-blind study. J Nutr. 2016; 146(2): 427S-432S. PMID: 26764322

3) Ried K. Garlic lowers blood pressure in hypertensive individuals, regulates serum cholesterol, and stimulates immunity: An updated meta-analysis and review.
J Nutr. 2016; 146(2): 389S-396S. PMID: 26764326

4) Rahman K, et al. Aged garlic extract inhibits human platelet aggregation by altering intracellular signaling and platelet shape change.
J Nutr. 2016; 146(2): 410S-415S. PMID: 26764324

5) Charron CS, et al. Garlic influences gene expression in Vivo and in Vitro.
 J Nutr. 2016; 146(2): 444S-449S. PMID: 26764328



この記事を書いた人

工藤 知也(くどうともや)

エビデンスエージェント代表
薬剤師
博士(医学)

2007年、金沢大学大学院医学系研究科博士課程修了。
2009年、ケンタッキー大学医学部博士研究員。帰国後から薬剤師を始め、2013年、科学的知見に基づいた医薬品情報を患者様向けに発信するエビデンスエージェントを開業。

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