テルミサルタン(ミカルディス)の作用機序・特徴・服薬指導のポイント

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

CYP代謝を受けず胆汁から100%排泄されるARBがテルミサルタン(商品名:ミカルディス)です。

PPARγ活性化作用による脂肪燃焼作用があることからメタボサルタンとも呼ばれます。

テルミサルタンの作用機序、特徴、服薬指導のポイントについてまとめてみました。

作用機序

アンデオテンシンⅡがアンデオテンシン受容体(AT1受容体)に結合することで血管平滑筋が収縮し、血圧が上昇します。

テルミサルタンはじめARBは、アンデオテンシンⅡがAT1受容体に結合するのを阻害することで血圧の上昇を抑える働きがあります。

ARB

アンデオテンシン受容体にはAT1受容体とAT2受容体のサブタイプがあるのですが、テルミサルタンはAT1受容体に対して選択的に阻害するため、血圧の上昇を抑え、また血圧を低下させる作用もあると考えられています。

テルミサルタンにはPPARγ活性化作用あり

ARBの中でもテルミサルタンとイルベサルタンにはPPARγ活性化作用(読み方:ぴーぱーがんまかっせいかさよう)といって動脈効果を予防したり、脂肪燃焼を促進させる作用があるとされています。

肥満やメタボリックシンドロームに適したARBであることからテルミサルタンとイルベサルタンはメタボサルタンとも呼ばれます。

メタボ気味の高血圧患者さんにテルミサルタンが処方された場合はPPARγ活性化作用を期待する目的があると考えられます。

PPARγは脂肪細胞の細胞核の中にあり、活性化されるとアディポネクチンが脂肪組織から分泌されます。

アディポネクチンには

  • 脂肪燃焼を促進させる
  • インスリンの感受性を上げる
  • 血液中のグルコースを肝臓・筋肉に取り込む

などの働きがあります。

Tmax・T1/2(半減期)

ミカルディスのインタビューフォームによると、本態性高血圧患者に食後単回投与した時のTmax、T1/2は下記の通りとなっています。

規格 Tmax(hr) T1/2(hr)
20mg 6.9±6.2 24.0±11.0 
40mg 4.6±1.7 20.3±12.1

日本で上市されているARBの中で半減期が最も長いのがテルミサルタンです。

代謝・排泄

主としてUGT酵素(UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ)によるグルクロン酸抱合によって代謝され、胆汁中から排泄されます。

食事の影響・食後と食前で吸収に違いあり

ミカルディスのインタビューフォームによると食事によってCmaxやAUCに影響がでてきます。

健康成人男子20例に、テルミサルタンカプセル40mgを単回経口投与したとき、空腹時投与に比べ食後投与でtmaxが遅延(空腹時:1.8±0.9時間、食後:5.3±1.4時間)し、Cmaxが57%、 AUCが32%低下した。

引用元 ミカルディスインタビューフォーム

 

飲み忘れた場合の対応

テルミサルタンは食事によって影響を受けるため、普段食後に服用しているか?食前に服用しているか?で飲み忘れ時の対応が異なってきます。

ミカルディスの「薬のしおり」での対応は下記の通りです。

食後に服用している場合に飲み忘れた時

食前に服用している場合は、気がついた時点でできるだけ早く飲んでください。ただし、次に飲む時間が近い場合には、1回分をとばして、次の分からふだんの飲み方に戻してください。

食前に服用している場合に飲み忘れた時

食後に服用している場合は、気がついたときに軽食をとり、その後に飲んでください。絶対に2回分を一度に飲んではいけません

 

服薬指導・薬歴記載の要点

・1日1回投与(タイミングの縛りはなし)
・メタボサルタンとして脂肪燃焼目的で処方されることもあり
・CYPの影響を受けない
・ARBの中では最も半減期が長い
・食事によってCmax・AUCが変化
・BP変動によるふらつきに注意
(車の運転・高いところでの作業に注意)
・飲み忘れ時の対応を指導(上記参照)
・主な副作用は、低血圧(0.6%)めまい・ふらつき(0.5%)、発疹(0.2%)、血中尿酸値上昇(0.2%)、頭痛(0.2%)等(再審査終了時)

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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