アゼルニジピン(カルブロック)作用機序・グレープフルーツの併用・薬歴記載の要点

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

1日1回投与で効果を発揮するジヒドロピリジン系Ca拮抗薬がアゼルニジピン(商品名:カルブロックなど)です。

アゼルニジピンの作用機序、服薬指導の注意点についてまとめてみました。

作用機序・L型・T型Caチャネル遮断

アゼルニジピン(カルブロック)は、血管や心筋を収縮させるCa2+の血管細胞内への流入を抑えることで血管を拡張させます。

具体的な作用部位ですが、血管平滑筋細胞膜に存在するジヒドロピリジン結合部位に結合し、電位依存性L型Caチャネルから Ca2+が流入するのを抑え、血管平滑筋を弛緩、拡張させることにより血圧を低下させると考えられています。

またアゼルニジピン(カルブロック)にはL型Caチャネルだけでなく、T型Caチャネルを遮断する作用もあります。

T型Caチャネル遮断による腎保護作用

腎臓の糸球体の入り口にある輸入細動脈にはL型、T型、N型のCaチャネルが、輸出細動脈にはN型、T型のCaチャネルが存在します。

L型Caチャネルのみを遮断する場合は、糸球体の輸入細動脈のみを拡張させ輸出細動脈は変化させないことから糸球体内圧が上昇してしまいます。

一方でT型Caチャネルを遮断する場合は糸球体の輸入細動脈と輸出細動脈のどちらも拡張させることから糸球体内圧を下げ、腎臓保護作用が期待できるのです。

反射性頻脈が生じにくい

L型Caチャネルを遮断すると強力な降圧作用によって反射性頻脈が起こることがあります。

T型Caチャネルは心臓にも存在し、T型Caチャネルを遮断することで心拍数を減少させる働きがあります。

そのためアゼルニジピン(カルブロック)は頻脈傾向にある方や、他のCa拮抗薬で反射性頻脈が問題となる方に処方されるケースがあります。

Tmax・T1/2(半減期)

カルブロックのインタビューフォームによると健康成人男子に空腹時単回投与した時のTmaxとT1/2は下記の通りとなります。

用量 Tmax(hr) T1/2α(hr) T1/2β(hr)
5mg 2.3±0.4 1.4±0.3 16.3±3.6
10mg 2.7±0.2 1.4±0.1 20.9±6.4

 

飲み忘れた場合の対応

アゼルニジピン(カルブロック)を飲み忘れた場合は、主治医からの指示がない場合は「気づいた時点で1回分服用すること」となっています。

飲み忘れた場合は、気がついた時点で1回分を飲んでください。ただし、次の飲む時間が近い場合は、忘れた分を飲まないで、次の飲む時間に1回分を飲んでください。絶対に2回分を一度に飲んではいけません。

引用元 カルブロック錠 薬のしおり

 

代謝

主としてチトクローム P4503A4(CYP3A4)で代謝。

併用禁忌薬

下記の薬剤がCYP3A4を阻害するため併用禁忌となっています。

・アゾール系抗真菌剤
イトラコナゾール(商品名:イトリゾール)
ミコナゾール(商品名:フロリード)

・HIVプロテアーゼ阻害剤
リトナビル(商品名:ノービア)
サキナビル(商品名:インビラーゼ)
インジナビル(商品名:クリキシバン)

・コビシスタットを含有する製剤
(商品名:スタリビルド配合錠、ゲンボイヤ配合錠)

グレープフルーツとアゼルニジピン(カルブロック)の併用

グレープフルーツのフラノクマリン類がCYP3A4を阻害

グレープフルーツとアゼルニジピン(カルブロック)は併用注意となっており、「アゼルニジピン(カルブロック)服用中は摂取しないこと」となっています。

グレープフルーツの果実に多く含まれるフラノクマリン類が、小腸上皮細胞のCYP3A4を不可逆的に阻害するためCa拮抗薬の血液中への吸収が上昇することが報告されています。

本来ならCa拮抗薬が小腸から血液中に吸収される過程で、消化管の上皮細胞に存在するCYP3A4によって代謝・分解され、代謝・分解されない一部が血液中に吸収されています。

グレープフルーツによって消化管の上皮細胞に存在するCYP3A4が不可逆的に阻害されると、消化管でのCa拮抗薬の代謝が阻害され血液中に吸収される量が上昇してしまうのです。

間隔をあければグレープフルーツジュース摂取して大丈夫?

大日本住友製薬の資料によると、アゼルニジピン(カルブロック)服用中にグレープフルーツを摂取するとAUCが332%、Cmaxが254%上昇するとなっており、Ca拮抗薬の中でもグレープフルーツとの相互作用が強い薬剤です。

そのため、間隔をあけてもアゼルニジピン(カルブロック)服用中のグレープフルーツは避けることとなっています。

レモン・みかん(オレンジ)との併用・飲み合わせ

レモンやみかんにはCYP3A4を阻害する作用はないため、摂取して問題ありません。

ザボンや夏みかん、ボンタンはCYP3A4を阻害する作用があるため避けた方がよいかと思います。

服薬指導・薬歴記載の要点

・T型Caチャネルを遮断するため反射性頻脈が起こりにくい
・1日1回朝食後に投与(MAX16mg)
・併用禁忌薬に注意(抗真菌薬・HIVプロテアーゼ阻害薬)
・グレープフルーツ(グレープフルーツジュース)の摂取は1日中避ける。
・BP変動によるふらつきに注意
(車の運転・高い所の作業)
・飲み忘れ時の対応を指導

 

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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